表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/673

一体見かけたら三十体はいると思え⑧

「お見事です、マスター!」


「やるじゃない! んじゃさっさと帰りましょこんなとこ!」


今なお周囲を覆っている紫色の霧の向こうから、ディアナとアイリスの称賛の声が聞こえてくる。


濃密な霧のために見えてはいないだろうが、俺は声の聞こえた方向に向かって大きく頷いた。

魔晶を引っこ抜かれたからだろうか、少しづつ身体を傾け始めているヒュージトレントの虚から飛び出す。そのままの勢いで、ディアナとアイリスの魔素(マナ)を目印に霧の中を走り出した。


「どけどけどけぇー!」


ボスキャラを制したにもかかわらず、律義に包囲網を崩さない小トレントたちに向かい、俺は走りながら右手の白い短剣を振り回した。

力の方向も考えずに滅多やたらに振り回しているため、大したダメージは無いだろうが、前をどかすだけなら充分だ。


そうしていると、眼前の靄がほんの少し薄くなり、トレントたちの包囲内で立ち回り続けていた二人の少女の姿が見えてくる。


「待たせたな、ディアナ! アイリス!」


「マスター! ご無事で何よりです……!」


限定魔装状態リミットデバイスモードを展開していたディアナが、さらに幼くなった身体で駆け寄ってきた。


「まさか、ここまで上手くいくなんて思わなかったけど、アンタの魔眼も大したもんね。ま! アタシの拵えた霊剣のおかげでもあるけどね! 褒めてもいいわよ!」


「よし、帰ろうぜディアナ」「はい、マスター」


「ちょっとぉ!」


ふふん、と尊大に胸を反らせるアイリスを置いて、ディアナと二人でその場を後にしようとする。が、慌ててアイリスが後に続いた。

悪い悪い。からかっただけだって。ちゃんとアイリスのおかげでもあるって思ってるから、怒るなよ。


……事実、俺の思いついた作戦は、アイリスがいなければ成し得なかった。


俺の右手に光る白い短剣。

俺とディアナがトレイユで回収し、昨日アイリスが『武器を作る』と言って抜き取った魔晶が生まれ変わったのが、この短剣なのだ。


アイリス曰く、リーファライト? とかいう特殊な生育法でしか成長しない希少な草を織り込むことで、刃の周りに薄皮一枚ほどの魔抗結界を展開しているとか何とか。まあ要するに、魔素を切れるのだ。この剣は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ