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一体見かけたら三十体はいると思え①

「こん、のぉッ!」


掛け声とともに振るわれたアイリスの右手から、緑色の円刃がいくつも乱れ飛ぶ。

天高く振り上げられた、ヒュージトレントの無数の蔓を中空で切り裂いた。


――そして、円刃の迎撃を免れた蔓の群れが、俺たちの頭上から降り注ぐ。


「うおおわ!?」


ドタバタと慌ただしく回避する。寸前まで俺のいた場所を、何本もの蔓が強烈に殴打した。


このあとトレントは、魔晶に溜め込んだ魔素(マナ)を使い、切られた蔓を急速に成長。もとい再生させて、同じように上空から振り下ろす、というパターンを繰り返し行っている。


アイリスのおかげで大部分の蔓を切り払っていることと、単純なワンパターン戦法であることで、ディアナを抱えた俺でもなんとか躱しきることが出来ている。


とはいえ、一発一発は十分に致命的な威力だ。

立て続けに打ち付けられた地面は陥没し始めているし、蔓が振り下ろされるたびに足元が揺れ、微弱な地震にも思える振動でバランスを崩されそうになる。


早いところ魔晶を回収したいところだが……

俺はトレントの方を警戒しつつ、背中でぐったりとしている相棒の様子を窺った。


さっきよりも大分顔色は良くなったが、こうして振り回してしまうことで、本来期待した時間よりも回復が遅れていることは間違いない。下手をするとより悪化させてしまう恐れだってある。出来ることなら安静にさせたい。


と、なれば。


「アイリス! なんかデカいの一発頼む!」


今や迎撃を任せっきりになってしまっている金髪の少女へ、必殺技を追加オーダーした。

もう何度目かわからない蔓の強襲を回避しつつ、アイリスが叫び返してくる。


「ムリ!!!」


返事早! っていうかムリってなんだよムリって!


「お前宮廷魔術師なんだろ!? なんかこう、一気にあいつを吹っ飛ばす攻撃魔法とか使えねーのかよ!」


「無いこともないけど、魔晶個体じゃ相手が悪すぎ! 絶対抵抗受けるわ!」


クソ、そういうことか! トレイユでディアナに聞いたことを思い出す。


魔晶をその身に取り込んだ魔物……通称、魔晶個体は、特異点という土地に集められる魔素を一手に吸収するため、無尽蔵に近い魔力を発揮する。要は、魔法撃ち放題、防ぎ放題ってことだ。


今のところトレントは回復にしか魔素を使っていないようだが、こっちが強力なダメージを与える魔法を使えば、何らかの対抗策を打ってくるに違いない。アイリスはそれを警戒しているのだ。

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