解説キャラは何人いても助かる⑥
「これで、トドメ!」
再びアイリスが右の指を鳴らすと、トレントの周りを取り囲むように、いくつもの水色の光点が激しく明滅を始めた。
トレントの胴体上で光点が弾けては消えるたびに、炸裂した箇所が氷に覆われていく。
光点一つの氷が覆う面積も厚みも、初めは微々たるものだったが、無数と呼んで差し支えない圧倒的な物量が、瞬く間に氷の密度を高めていった。
そんな中でも尚緩慢な動きのままであった人型の植物に、氷獄から逃れる術は無かった。
ほどなくして、トレントはその全身が完全に氷の内側へと閉ざされた。
ふうっ、と浅く息を吐いたのち、アイリスが俺とディアナの方に駆け寄ってくる。
「そっちは無事!?」
「ディアナが、背中を強く打ったみたいだ。アイリス、回復とか、治癒の魔法使えるか?」
ベロニカ王は、アイリスのことを『多彩魔術師』と呼んでいた。
先のトレントとの攻防から見ても、彼女は複数ジャンルの魔法を得意とする魔術師であるのだろうと俺は踏んだ。
であれば、お決まりのヒール系の魔法も使えるのではないか。そんな期待を込めた俺の問いに、しかしアイリスの表情は晴れない。
「ゴメン。アタシ、そういう魔法は専門外なの。でも、その代わりに……」
アイリスは短く謝罪したのち、身を固めて痛みに耐えるディアナの肩にそっと手を置いた。
金髪の少女の両手から、じわり、と魔素が溢れ出す。溢れた魔素はそのまま、触れているディアナの身体へと流れ始めた。
「これで、少し休めば良くなるはずよ」
「……何をしたんだ?」
「アタシの魔素を、人体の自然回復力を高めるように加工して、ディアナに分けたの。そのまま休むより、ずっと早く、良く回復できるはずよ」
ダメージが大きいと見られる肩口から魔素を流し込んだためか、既にディアナの顔から若干苦痛が薄らいだように見える。この様子なら、十分、いや五分もすれば、痛みを気にせず動けるようになるはずだ。
トレントへの攻撃よりも遥かに高い濃度の魔素をディアナに与えたアイリスは、一安心したと言わんばかりに胸を撫で下ろす。
しかし。俺はトレントの氷漬けを、その向こうにある森の奥を睨んだ。
これは俺の憶測だが、今戦闘したトレントは偵察兵だったのではないかと思う。もしそうだとすれば、敵は俺たちの居場所を把握している。いつ追手が来てもおかしくない。
この場所に留まり続けるのは危険だ。




