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解説キャラは何人いても助かる⑤

腹部に俺の両脚蹴りを受けたトレントは、姿を現した木々の向こうに仰向けに倒れ込んだ。


蹴り応えは思いのほか重かった。俺自身の体重が軽いせいかもしれない。あの調子ではダメージはほとんど無いだろう。すぐに起き上がってくるに違いない奴をその場で身構える。


しかしその俺の様子を見たアイリスが叫んだ。


「アタシが止めとくわ! アンタはディアナを!」


「! わかった、頼む!」


叫び返し、再び全力ダッシュで相棒の元へと向かう。


「ディアナ、大丈夫か!」


「マス、ター……申し訳、ありません」


「ありがとう、おかげで助かった」


弱々しく答える銀白の少女は、俺の礼には薄く微笑むだけで返した。

どうやら肺の近くの背中を打ったらしい。出血こそしていないが、呼吸や喋る際に打ち付けた部分が痛むのだろう。少しの間安静にしていれば、痛みは引くと思うが……


俺がディアナを抱き起こしていると、トレントも緩慢な動きでその身を起こした。

キョロキョロと周囲を見回すような素振りをしている。視界の横から蹴飛ばしたから、俺の姿を捉えていなかったのだろうか。


トレントは、俺たちより比較的近くにいた、アイリスに狙いを定めた様子だ。のそりと下半身の幹――両脚を動かし、金髪の少女に向き直る。


対峙したアイリスは、冷や汗を一筋流したかと思うと、キッとトレントを睨んだ。

敵に向けて右手を伸ばし、フィンガースナップ――俗に言う指パッチンを鳴らす。


アイリスの中指が小気味いい音を立てると共に、狙いを付けるように人差し指がトレントに向かって伸びた。水色の光点が両者の間にぽつぽつと明滅する。


直後、トレントの四肢が巨大な氷塊に覆われた。


トレントは一瞬で手足を封じられたことに焦ったのか、先ほどよりも早い速度で、唯一氷の縛りを逃れていた左手部の蔦を大きく振りかぶった。

ディアナを打ち据えて以後伸ばしたままだったために、手足に当たる部位の周囲を覆う形だった、アイリスの拘束の範囲外だったのだ。


頭上高く振り上げられた長大な蔦が、本体の重々しい動きよりも遥かに素早く振り下ろされる。


「それは、邪魔ねっ!」


が、当然それはアイリスも把握している。

今度は左手を、鞘から剣を振り抜くような動作で動かし、先ほど同様に指を鳴らした。出立前、アイリスの工房で見た時と同じ緑の光が、迫りくる蔦へと向かい発射される。


放たれた光は、球体から平たい円盤のような形へと徐々に変わり、振り下ろされてきた蔦を中空で刈り取った。

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