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解説キャラは何人いても助かる③

森に足を踏み入れてから、一時間ほどが経過した。


一切人の手が入っていないと見えるジャングルは、植物が縦横無尽に生い茂っていた。時折果物のような実を付けているものも視界に入ってくる。どれも大きく実っていた。


ディアナによれば、荒天島はほぼ真円の形をしており、大人が六時間ほどかければ外周を一周できるくらいの大きさだそうだ。平坦な地形で起伏も少ないらしいし、直線距離なら魔晶があると思われる島の中心部までそう遠くない。到着にはもう一時間くらいかな。


およその到着予定時刻を計算していると、俺が魔眼を持っていることについてようやく飲み込んだアイリスが、背後でぽそりと呟いた。


「……おかしいわ」


「え……今度は何だよ」


先を急いでいた歩みを止め、金髪の少女へと振り向きながら眉根を寄せる。背後を警戒しながら続いていたディアナも追いついた。


もしかして、まだ俺の目について文句があるのだろうか。

やっぱりアンタにその目はふさわしくない! とか言われても困るんだけどなあ。


「もうそのことはいいの! そうじゃなくて、森に踏み込んでからもう随分経つっていうのに、一向に原生生物が姿を見せないことが気になるのよ」


「原生生物、ですか?」


「そう。姿が見えないどころか、鳴き声一つ聞こえてこないなんて、明らかに異常よ」


……確かにそうだ。ディアナには魔獣などの奇襲を警戒してもらうべく、後方を任せていた。俺も自分なりに気を張りながら先へ進んできたつもりだ。


しかし、この森に入ってからというもの、野生の生き物とは一度も遭遇していない。そしてアイリスの言う通り、俺たちの足音以外、森の中は無音だった。


「さっきはアンタの魔眼どうこうのせいで気が回ってなかったけど……本来なら、海岸の砂浜にも甲殻類の魔物がうじゃうじゃいたはずなのよ。でも、一匹も見当たらなかったわ。殻さえも無かった」


海辺には甲殻類の魔物が、森の内部には四肢動物や昆虫系の魔物がひしめき合って生息しているはずなのに、とアイリスは続ける。


俺は手近にあった木を見つめてみた。特異点に生えているだけあって、魔素を纏ってはいるものの、それ以外は普通の木に見える……しかしそこに、獣の爪痕や、虫が棲みついているような様子は無い。


そうだ、道中あった植物にも、手つかずの果実がこんもりと成っていた。


おかしいのだ。動物が生息している島なら、真っ先に食べられてしまうはずの果実がそのままなんて。食べられるほどに熟してしまえば、すぐにでも食い尽くされてしまうに違いないのに。

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