解説キャラは何人いても助かる①
眩んだ視界が回復するとともに、寄せ打つ波音が俺の耳に届いてきた。
瞑っていた目を開けると、足元には光を失った魔法陣。魔法陣は、砂浜に棒で書かれたような筆跡で記されていた。その割には異様にくっきりしている。これも何かの魔法だろうか。
顔を上げる。目を瞬かせるディアナとアイリスの姿がある。
そして、彼女らの向こうに、鬱蒼と茂るジャングルが見えた。
空を見上げると、燦燦と照りつける、輪を持つ太陽。
背後を振り返ると、轟々とした勢いが目に見える大嵐。
荒天島に、着いたらしい。
今俺たちは島の砂浜にいるようだ。
ひとまず、爆発もせず特異点へと到着できたことに胸を撫で下ろす。
「あーもう眩し……あっ、ここが荒天島ね!」
「どうやら無事到着できたようですね」
周囲をキョロキョロと見まわすアイリスと、俺と同様、到着したことに安堵するディアナ。やはり、それなりに警戒はしていたらしい。
さて、と。
ここの魔晶はどこにあるのかな。
さっそく目を細めて視界を凝らしてみる。元来魔素を集めやすい場所とはいえ、既に相当な魔素を溜め込んでいるはずの魔晶のようなものがあれば、その『濃さ』の違いが俺には見えるはずだ。
んー、どうやら、ジャングルの奥が怪しいな。
空気中に霧のように充満する魔素。その濃度が、生い茂る木々のより奥の方に向かって濃くなっているように見える。
「いかがですか? マスター」
「うん。多分、森の奥だな」
魔素の濃度を観察し終えたところで、ディアナが声をかけてくる。さすが相棒。これくらいのことならばっちりタイミング把握してるな。
ジャングルの奥を指差して進路を示していると、アイリスが少し離れたところで怪訝そうに俺を見ているのが目に入った。
「どうした、変な顔して」
「うっさいわよ! ……アンタ、チキュウ人のくせに魔素感知できんの? 特異点内の濃度まで判別できるほど高レベルなのは珍しいわね」
「いや、できないけど」
「は? じゃあ今の何よ」
「ああ俺、魔素見えるから」
「は???」
俺の一言に、目つきを鋭くする金髪の少女。
え、こわ。そんな睨まれても困る。
なるべく目を合わせないようにして俺が魔素が見えることを説明する。
口頭の説明だけでは何故か納得せず、アイリスが手や指に魔素を集中させたりして、その多寡を指摘するように命令された。
大人しく応じ、すべての問題に回答すると、砂浜にがっくりと膝と手をついて項垂れるアイリス。
後半の、ディアナも巻き込んだ引っかけ問題にも回答されたのが悔しかったのだろうか。




