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透明CI  作者: 彩ぺん
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エピローグそしてプロローグ R:満点

掲示板に並んだ数字を1つ1つ目で追っていく。ぽつぽつと抜ける通し番号に緊張が高まる。


できる限りの事はした。毎日歩くのと勉強の繰り返し。何処かへ出掛けるのも憚られ、ひたすら受験に打ち込んだ。





「あった・・・。」





手に握っていた受験票に記載された番号を見つけて、小さく呟いた。ほぼ同時に隣からも同じ台詞が聞こえた。


寒空にほうっと白い息が舞う。丸くなった目に、僅かに紅潮した白い横顔。


私は今にも泣き出しそうで、堪えようとグッと眉間に力を入れた。





「佐藤、見ろよあった!あった!」





腕を引っ張られて、目の前に満面の笑みがあって、一気に決壊した。


ぼろぼろ、ぼろぼろと泣くので彼が困っているけれど止まらない。





「賢輔くん・・・。ありがとう。」





酷い顔をしているだろうと両手で顔を覆ったが、彼の姿が見たくて少し手を下げた。


涙目で微笑む彼に、私はもう一度ありがとうと告げた。





あの夜、凍てつくような寒空の下、彼の言葉が温かかった。





「俺、そっち行くから。」





ぶっきらぼうな声色に、竦む足が溶けた。家族に背を向けた父、壊れかけた母、苦しみ悶えて爆発した兄。捗らない受験勉強に己の情けない頭脳。


手摺を越えて戻っても辛い日々が続くだろう。





それでも。





もう一度彼に会いたかった。彼のように強くありたい、優しくありたい。不器用でも向き合う勇気を見習いたいと何度も思ったのだから。


あっと思った時には視界が反転していた。靡く黒髪が月に向かって伸びる。まるでスローモーションのように視界が動く。途切れた視界に滲んだのは、真夏の大輪を僅かに微笑して見つめるあの横顔だった。





体の向きが違っていたら、落下地点がズレていたら、コンクリートに叩きつけられて即死だっただろうと言われた。


あの時、私は半ば無意識に足場を蹴った。


それを婦警さんに話した時、垣根に届けば奇跡が起きて助かると、生きたいと本能が体を動かしたのかもねと言われた。


生きたいよりも、会いたいだったと思いますと話をしたら婦警さんは優しい瞳をして頷いてくれた。






落ち着いてきて涙が止まると、賢輔君が私の左手を掴んで歩き出した。


初めて触れられた肌がかあっと熱くなって恥ずかしくて仕方なかったけれど、私はその掌をきつく握り返した。


人垣を抜けてゆっくりと歩き出す。





あの日、この世から消えてしまうところだった回答を私達はこれから確かめ合う。


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