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透明CI  作者: 彩ぺん
15/20

教室の片隅 Q  ? A ?

佐藤香奈


佐藤賢輔


佐藤優子


佐藤亮平


佐藤和佳子





 黒板に貼られた座席表に並ぶ佐藤の群れ。そのうち2名は良く知った名前だった。





 1人は張り出される科目ごとの成績上位者に常に名前を連ね、総合順位は3位以内。サッカー部で割と顔も良いという女子に人気の佐藤亮平。浅黒く日焼けした肌に彫りが深めで長めの髪から軽い、と言う印象を受ける。親は医者でクリニックを経営しているらしい。好きなものは和食や和菓子。時折茶道部へ顔を出してちょっかいをかけているという。





 愛美が一時期好きだった時、きゃあきゃあとはしゃいで、そんな情報を仕入れてきていた。


そしてもう一人、全科目1位に君臨し総合成績は常に満点。それ以外見たことがない。





佐藤賢輔。





 皆、本人の事を知らなくても名前だけは知っている。私もその一人で名前を見ても顔を思い浮かべることは出来なかった。噂で勉強マシーンだとか無感情と耳にしたことがある。





「また同じクラスで良かったね。」


「うん。雪菜も同じで良かった。」


「早く席替えしないかな。周り男子ばっかりなんだよ。」





 不在の佐藤賢輔の席に雪菜が座り、サカナと縦並びで喜びを分かちあう。教室に人が増え、予鈴まで5分というところで雪菜の前に男子が立った。





「そこ。座るから。」





 聞き覚えのある声に、姿に私は固まった。不機嫌そうなぶっきらぼうな響きとドサリと机の上に置かれた鞄の音で、雪菜は慌てて席を立ってごめんなさいと告げて離れた。


驚いていなければ、雪菜に向かって何か言えたかもしれないけれど、私の視線は彼に釘付けだった。





 この人が佐藤賢輔だったんだ。





「席借りててごめんね。私、佐藤優子。よろしくね。」





 思わず立ち上がってぎこちなく笑っていた。廊下で何度かすれ違った事があるけれど、背が伸びていて顔つきも少し大人っぽく感じた。





「別に。構わない。でも……。」





チャイムが校内に鳴り響いた。でも、もう時間だから、そういうことだろうか。涼しげな切れ長の二重瞼が印象的な目を伏せて、彼は着席した。





 白いうなじにかかる細い黒い髪。あの日よりも短く切り揃えている。


 


 どうしてだかくすぐったくて、直視できずに視線を落としていた。









 新学期なのだから、初めの挨拶くらい頑張ろうかと思っていたが出鼻をくじかれた。





 名前順の席は四方を女子に囲まれていた。斜め側に声を掛けるような気概はなく、おまけに男子は教室の後ろの方で部員同士で固まっている。





 予鈴5分前ならば大体席についているかと思いきや、そんなことはなかった。





 女子とは極力関わりたくない。





 なのに、自分の席にはその対象相手が座っている。胸くらいまである髪を2つに分けた大人しそうな女子。





「そこ座るから。」





 申し訳ないがもう時間なのでどいて欲しい。そう言い終わる前に、バツが悪そうな顔をして居なくなった。鞄を置く音が予想より大きかったのも原因だろう。





「席借りててごめんね。私、佐藤優子。よろしくね。」





 立ち上がってにっこりと微笑まれた。予想外の事態に一瞬固まる。


黒髪が際立たせる抜けるような白い肌と桃色の頬や唇が印象的な角のない雰囲気に息を飲む。





 学校で自分に笑顔を向けられることが全くないから珍しかった。





 聞き覚えのある声だったが、記憶にない。張り出された席順表の名前も初めてみるものだった。





 ということは少なくとも、嫌な事を発した人物ではないのだろう。





「別に。構わない。でも…。」





 もう時間だから。


予鈴が教室に響いた。言いかけた言葉を飲み込み俺は黙って着席した。


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