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最初で最後の1週間



「生徒代表、1年1組ーーーーー」

生徒代表の人が意気込みの言葉を言い終えると体育館は盛大な拍手に包まれた。

入学式が終わり渡り廊下は人で溢れていた。

「おーーぉいしゅーへーえー」

「なんだ、高尾か」

「なんだとはなんだ、それよりお前何組!?」

「俺は四組だったぞ。お前は?」

「流石相棒よく分かってるじゃないかぁ!俺も四組だ!一年間世話になるわ!」

「ちっ」

「あ、おいてめぇ今舌打ちしたな。舌の神様から呪われるぞぉ〜」

「あーはいはいそうですね」

どんな神だよ。

会話が中学レベルから抜けきれてないこのお子様は高尾たかしと言う。

同中で高校も同じだ。そんなに仲が良い訳ではないが一方的な親友感情を突きつけられて早二年...まぁ悪いやつでは、ない。

「いやぁそれにしてもまたしゅーへーと同じ所で三年間過ごすと思うと居ても立っても居られなくてな、昨日は寝れなかったぜっ」

「お前はホモか!きもいわ!」

とりあえず教室に行こう。こいつとこれ以上話していたら疲れるし、初日から変な噂を立てられても困る。

そういえば桜ヶ丘は何組なんだろう?

「いやいや、何であいつが出てくる...今は関係ない関係ない」

「ん?どーしたしゅーへぇ。顔が赤いぞ」

「い、いやぁ何でもない」

「もしかして遂にしゅーへーに俺への愛の種がめ「しね」

高尾と距離を取りつつ俺は四組に入った。

指定された席に着く。すると後ろから

「あれ、しゅうじゃん!奇遇だね。僕も四組なんだ」

「お、なつもか!ってまた同じクラスかよ。もうこの光景何回目だ...」

「中学からだと三回、小学校を入れると今回で八回目だね」

「よくそんな事覚えてるよな....」

「そんな事とはどーゆーことっ!しゅうは同じクラス嫌なの!?」

「いや、そゆことじゃぁ無いけど...そーゆーなつはどぅなんだ?」

「え、ぼ、僕はまぁどっちかと言うと?嬉しいかなぁとか思ってみたり...」

「素直に嬉しいって言えばいいのに」

「ぅう、別に嬉しくなんか無いしっ!」

はぁ、高尾がいるのでさえ疲れるってのになつまでいるとは先が思いやられそう...と感慨していた所に

「あ、しゅうへい君!」

またしても彼女は唐突に現れた。

「さ、桜ヶ丘っ!」

「もー美希でいいって。ふふっ、同じクラスだね」

まじか、まじかまじかまじか!う、嬉しいぞ。

「お、よ、よろしく!」

声が裏返った。

「なっちゃんも、偶然だね!一年間仲良くしよーね」

「ふ、ふんっ別にあんたがいてもいなくても僕の高校生活にはちっとも影響されないよ」

「あーはいはいよろしくね」

「桜ヶ丘にあっさり流された!?」

俺の隣の席はなつでその後ろが桜ヶ丘という席配置だ。高尾は随分と離れたけど。

何となく、面白くなりそうだと思った。



入学式の日は午前授業で学校はすぐにお開きとなった。

「ねーね、しゅうへい君は何か部活とかする?」

桜ヶ丘が俺の席に来た

「んーいや俺は帰宅部するかなー」

「へぇ、意外だね〜。スポーツとか上手そうだけど」

「まぁ昔はやってたんだけど...高校はいいかなって思ってね。桜ヶ丘は何か入るのか?」

「私運動オンチだから入るなら文化部かなー」

たわいない会話を交わしながら俺と桜ヶ丘は靴箱へ向かう。高尾となつは部活動見学やらなんやらをするらしい。

「ねぇ、しゅうへい君てここから家近いの?」

「おう近いぞーダッシュしたら下手したら5分かからないかも」

だからこの学校なんだけどな

「えぇいいな!朝寝坊し放題じゃん」

「ま、まぁ、そうだな」

桜ヶ丘の顔がグイッと俺の顔の前に来た。近い近い!

「そ、そう言う桜ヶ丘はどうなんだ?」

「私は家は結構遠いかなー電車で通うつもり〜」

「あれ?でも今朝は俺と同じ道から来てなかった?」

「あーうん、今は絶賛入院生活中でね。近くの病院から通ってるの」

「え....ご、ごめん何も知らずに」

「あははっ何で謝るのー?私なら大丈夫だし今週末には退院するから心配無用です!」

「ほんとに大丈夫?てか何で...いやごめん。もうすぐ退院できるなら良かったな!」

何故彼女が入院しているのか気になったがこれ以上言及するのはやめとこう。

二人で並んで今朝の桜並木道を歩く

「って待ったーー!!!」

どーした俺、確かに運動も勉強もそこそこできて顔も中の上はあるはずの俺様だが今までの人生でこんなリア充イベントが開催されたことはないぞ!しかも桜ヶ丘は結構美人な方だと思うし、中学校まではなつぐらいしか一緒に帰ったことがないのに。

「しゅうへい君どうかした?」

「い、いや別に何も」

おーおーそれでいて何でこいつはこうもあっさりしてるんだ、何だ?男慣れしてるってか?

「あのさ、突然聞くけどさ、桜ヶ丘って今まで誰かと付き合ったりしたこととか...ある?」

う、うぉおお何聞いてんだ俺は馬鹿か!まだ会って一日も経ってないんだぞ!それは幾ら何でも生意気なんじゃな「無いけど、何で?」

ほら見ろキレキレじゃないかぁ...え?

「え?」

「私基本的に男子とかと喋ったりしないからなーそれで彼氏が出来ないのかなぁって最近思ってるんだよね。あ、でも別に彼氏欲しいとかは思ってないよ」

優しく微笑みながら桜ヶ丘は語った。

「え、なら何で...俺とはその、こうやって帰ったりしてもいいのか?」

「うーん何かしゅうへい君と会うのは今日が初めての筈なのに今朝会って話してたら私、しゅうへい君を以前から知ってるような気がしてね。あ、ごめんこれは私の妄想に過ぎないと思うから気にしないでっ!」「お、おう」

真っ白な彼女のほっぺが朱に染まる。

桜並木道を抜けた俺たちは途中の曲がり角で別れた。



「たらいまぁ」

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「いやいや、中学校になってまでその出迎えは流石に草生えるぞかえで」

「!?お、お兄さんこそもう高校生なんだからこんな事でニヤニヤしないでくださいっ」

「え?俺ニヤニヤしてる?」

「はい。それはもう盛大にニヤニヤしてます」

いかんいかん。桜ヶ丘と帰ったことがこんなに嬉しいなんて。青春してるなあ俺!

帰るとかえでが作ったカレーを冷めないうちに食べた。

「今日は四月の1日目だからカレーを作りましたよ!」

「あぁそーいや今日は1日かー」

我が家は月の始めの日はカレーを作って食べるという謎のルールがある。ちなみにかえでがこのルールを作った。

「かえで、ちゃんと手ぇ洗ったかー?」

「はいっ!一緒に食べましょうお兄さん」

「ん、では手を合わせて

「「いただきます」!」

父と母は海外出張で帰ってくることは殆どないのでいつもかえでと二人で生活している。

「中学生最初の日はどうだったか?」

「中学校とはとても、楽しそうです!かえでうきうきしてまーす」

「そ、そうか」

そんなに楽しみになれる場所だったかな中学校って。

「同じクラスの人とも早速友達になれました!」

かえでがカレーを食べながら満面の笑みを浮かべた。昨日練習した自己紹介は上手くいったようだ。

「良かったな」

「はい!」

いやぁそれにしてもかえでが作るカレーは格別だ。全国のチェーン店に勝らずとも劣ってないと思う。

「では、手を合わせて

「「ごちそうさま」でした〜」

二人で一緒に食べ終わる。かえでは明日も朝早いので寝ますと言って部屋に戻って行った。

「おいおいまだ八時だぞ。まだまだ小学生だな」

ま、つい先日までそうだったから無理もないかと思う。

「まぁ今日はあっという間だったなぁ。疲れたし俺も寝るとするか」

今日は特に何かあったわけではないが強いて言うなら...

「桜ヶ丘と出会った、とでも日記に書いとくかな」

桜ヶ丘美希、彼女は間違いなく俺の高校生活において重要な人物になると思う。

「あいつとなら青春出来るかもな、うへへ」

おっといかんいかんつい妄想を働かせてしまった。向こうが俺のことを何とも思ってなかったら論外な話なのに。

「早とちりは良くないな、早く寝よう」

その夜俺はベットで一人で足をドタバタさせたり寝返りをしまくったりして結局頭の中は桜ヶ丘のことしか無かったのだった...


次の日から三日間は同じような生活が続いた。

朝は桜ヶ丘とばったり会うことは無かったがクラスが同じなので教室でなつと桜ヶ丘と駄弁ったり、高尾をいじってからかったり、授業はまだ始まらないので午前中で終わり桜ヶ丘と帰ったりもした。本当に高校生活は早く過ぎていく。


ーーーーー世界改変日一日前ーーーーーー

「ジリリリリリリリリ」

目覚まし時計の音が部屋に鳴り響く。

まだ目が冴えないうちにリビングに行く。

今日は金曜日だ。明日明後日は学校に縛られずに済むという前向きな考えが金曜日は働きやすい。ゆえに俺はまだかえでが起きないうちにいつもより少し早く家を出た。

もう見慣れた盛大な桜の木が立ち並ぶ桜並木道を通り抜け学校に向かう。

教室のドアを開ける。また何気ない一日が始まる。

「お、しゅうへい早いなおはよ」

「はよー。高尾も早いな、朝練か?」

「そーぉなんだよおもぉ朝早いよぉ〜部活きついよぉ....」

「お前何部に入ったんだ?」

「そりゃもちろんサッカー部だよ」

「あー....そだな。頑張れよ」

「お前も入ればいいのになぁあんなにメキメキに活躍してたじゃねぇか!」

「いや遠慮しとくよ、ほら授業始まるぞ」

「お、おぅ」

チクリと胸が痛んだ。俺が部活をしない理由はただめんどくさいとかだるいとかそんな甘い言葉で丸く収まるものではない。もう部活はやらないと決めたんだ、あの日から。

思い出したくも無かったことを思い出してしまっていると

「おはようっしゅうへいくん!」

桜ヶ丘の声が後ろからした。

「お、おはよ」

半身だけ後ろに向けて答える

ほんとに彼女の元気溢れる満面の笑みは癒しだ。過去の傷も和らげてくれる。

「桜ヶ丘は今日も元気だなあ」

その朝からみなぎる力はどこから来てるのか不思議に思う。

「そぅ?えへへ〜だって今日は待ちに待った退院の日だからね!」

「あぁーなるほど」

そういえば今日は桜ヶ丘の退院の日だ。彼女の入院生活がどれほど重い物だったのか何となくわかった気がする。

「お前らぁ朝のホームルーム始めるぞぉ〜席に付け〜」

担任が来た。

「何だ、霞のやつはまた遅刻かぁ??ったく誰かあいつにこっぴどく叱っといてくれ。俺はもう疲れた。早く職員室に戻って寝たい...ふぁあ〜あ」

うちのクラスの担任は何ともだらし無い奴なのだ。まぁ俺たちにとっては吉か凶か....

しかしなつのやつも早速遅刻常習犯となっていた。

「なっちゃんいつも遅いなー」

「まぁあいつはしょうがないよ。中学の時も遅刻しかしてなかったからなー」

「へえー、何かしゅうへいくんってなっちゃんの事なら何でも知ってそうだねっ」

「ば、ちげぇよ!ただ家が近くて小学校からの腐れ縁みたいなやつだよ。それだけだから」

あいつの理解者なんてなりたくねぇよ!

「ふぅん」

桜ヶ丘が怪しい笑みを作る

「な、何だよ?」

「別にぃ」

う、何か寒気がする。

「ねぇ、しゅうへいくん今日一緒に帰らない?」

「!お、おぅいいぞ」

おいおいいつも流れで帰ってたけど今日の桜ヶ丘は何か積極的じゃないか?きてるか?きてるんじゃないのか!?

今日も午前中で終わりだ。授業は来週から本格的に始まるそうだ。

今日はクラスの一年間の目標などをみんなで話し合って決めた。途中

「ちーーーっす」とか昭和臭い台詞をかましながらなつが入ってきた。

「お前おせぇよ」

「しょうがないよ。今日は僕の気持ちが朝は向かなかったんだ」

「それただのサボりだからな!?」

ったく、こいつ中心で世界が回ってるみたいな台詞だな。

その後はあっという間に時間が経っていった。


放課後

俺は桜ヶ丘と一緒に道路を歩いていた。


「あのさ...今日しゅうへいくんは暇だったりする?」

「んまぁ暇かなぁ、何で?」

おっと、落ち着け俺。デートはまだ早いぞ。俺たちはそんな関係ではないぞ今は恐らく!それに桜ヶ丘も退院してないしな

「実は今日お母さんが病院に来るって。それで私がちゃんと学校生活送れてるか心配してて友達が出来たって言ったらさ、うちのお母さん心配症でどこの誰ってしつこく聞いて来るんだよね。だから直接合わせたほうが早いかなーって、そこでなっちゃんに頼んだんだけどなっちゃん部活忙しそうで後はしゅうへいくんしかいないのっ!お願い!今日だけお母さんにあってほしい!」

なるほど、いやしかしあいつの、なつの代わりってのが微妙に気に食わないぞ桜ヶ丘。

「なるほどねぇ、了解。会えばいいんだな?」

「ほんと!?いいの?」

「いやいやそれくらい大した事ないよ。それに俺たち友達だろ?友達が困ってたら助けるのは当たり前だ」

「しゅ、しゅうへいくん...かっこいい...かも」

わずかに頰を紅に染める桜ヶ丘。

「そりゃどーも、どーせ今日も俺は暇だしな」

てな訳で午後は病院に行って桜ヶ丘のお母さんに会うことになった。


病院に着く。

「もうお母さんが私の病室で待っててくれてると思うから行こっか」 「おう」

んーつい最近知り合った女子の母親に会うのも何か不思議な感じがするなぁ。いつも通りで居れば大丈夫だよね?

エレベーターで6階まで上がる。

6階となると1階のような活劇は見られずしーんと冷たさを感じた。

そして病室に着く

「お母さん連れてきたよー!」

桜ヶ丘が勢いよくドアを開ける。慌てて俺も入る。

「まぁ、飯田君ですか?」

「は、はぃ!どうも桜ヶ丘さんと春から一緒の高校に通わせてもらっている飯田しゅうへいです!」

声が裏返った。あれこんな感じでいいのか?敬語で、しかも通わせてもらっているっておかしくないか大丈夫か?

「あらまぁ、通わせてもらっているなんてとんでもないですぅ。うちの美希ちゃんがいつも世話になってます」

ほらみろ慌てるな俺大丈夫だ。

「もぉお母さんその呼び方はやめてって言ってるでしょ」

「あら美希ちゃんったら頰を赤らめて可愛い」

「だから!」

桜ヶ丘が怒っているところなんて珍しい。滅多に見られないぞ目に焼き付けとこう。

「この子ったら人付き合いが苦手でね。ほんと、頼れる人が出来て母さん安心だよ」

?意外だな。結構明るくてどっちかと言うとクラスの人気者のようなやつだと思ってた。

「いえいえ、そんなことありませんよ!学校では結構明るくていつも元気にしてますよ」

「そーだよお母さん。だからもう心配しないても大丈夫だから」

「あらそぉお?それなら良かった。なら母さんもう帰るね。」

「え?もう?」

「ん?ははぁんさぁては美希ちゃんったら久々の母との再会をまだ終わらせたくないのね?」

「!?そんなことわぁ......ある..かも.....」

うぉ、桜ヶ丘が涙目になってる!何これ可愛い!

「あ、じゃ僕はこれで失礼しますので後はお二人さんでごゆっくりどうぞ」

「ん、今日はわざわざありがとね」

「おぅ。あんまお母さんを心配させんなよ、"美希ちゃん"」

「あ、もうっ!しゅうへい君まで...」

「んじゃまた月曜日学校でなー」

そう言って俺はドアを閉めようとして

「待ってしゅうへい君!」

「ん?どした?」

「あの、そのぉ....はい!これ!」

桜ヶ丘が一抹の紙切れを差し出して来た

そこには何やらメールアドレスみたいなのが書いてあって....

「こ、これって...もしかして桜ヶ丘の?」

「う、うん。今まで人に自分の連絡先教えた事なんて無かったけど、しゅうへい君とは話すと楽しいし家に帰ってもメールか何かでいつもみたいに話したいなぁーって思って。迷惑じゃないならメアド交換とか......その、しない?」

うぅうおおおおおお俺氏キタコレェ!!

「うぅおっしゃーー!」

「んん!?しゅうへい君どしたの??大丈夫?」

「あ、ぁあごめん。」

嬉しすぎて声に出てしまった。

「ほ、ほんとに良いのか?その、初めてが俺なんかで....」

「うん!」

ズッキューーーーン!!

「ストライク....じゃなくて、ありがとう!俺帰って早速メールするから!」

女性陣はかえでのしかなかった俺の連絡先欄にいきなり天使級なものが追加された。

じゃ、とドアで別れて今度こそ病室を後にする。

無人の6階の廊下を歩く。

「いやぁそれにしてもほんとに良かったのか!?嬉しすぎて目ん玉外れるぜ」

とりあえずメールで距離を縮めるぞ、と俺は志を高くした。


しばらく廊下を進んだ。後少しでエレベーター、というところでドアが半分開いてる病室があった。

普通ならスルーするところを俺は何かに引きつけられたかのようにただ何となく、中を覗いていた。

窓も半分開けられていて春の風の匂いが入ってくる。日はまだ沈みそうにない。

ーーーーそこに少女はいたーーーー

年はかえでと同じくらいか、それ以上で風になびく髪は長くて艶めいていてよく手入れされていた。少女はベットから体を半分起こし髪をなびかせながら外を見つめていた。

「何か用ですか?」

少女が窓の外を見ながら問いかけて来た。

「あ、いやごめん。君の長い艶やかな黒髪が綺麗になびいていてつい見とれてたよ」

「口説いてるんですか?」

「あ、い、いゃごめんごめんそんなつもりは全くないよ」

「何か改められると逆にムカつきますね」

「失礼しちゃったね。部屋を除くなんてことしてごめんな」

「いえいえ、頑張って下さいね」

「うん?何をだ?」

「何もないです早く出て行って下さい。セクハラで訴えますよ?」

「お、おぅすまん。じゃあな」

不思議な少女との出会いイベントが帰りがけにあるとは思わなかった。


「お兄さん何かいいことありました?ここ最近顔のニヤケ症状が酷いですよ」

「いやぁそれがさ、俺の携帯にもついにモテ期が来たんだよ」

「どういう意味ですか?」

「携帯が俺の彼女になった」

「!?嫌ですよお兄さんはかえでのものですよ!」

「いや、かえでのものになった覚えはないんだが...まぁ今日は機嫌が良いからお兄ちゃんはプリンを買ってきたんだ」

「な、ななななっプリン...プリン!かえで食べたいです!かえでの分もありますか?」

「ああ、ちゃんと2人分あるぞ」

「やった!お兄さん大好きです」

「お、おう」

かえではプリンが大好物だ。特に近所のスーパーで売られている北海道なんちゃらクリームプリンってのがたまんらしい。

「ん〜〜〜〜このしっとり感、たまりませんよ〜〜」

「じゃ、俺はちょっと早いけど寝させてもらうよ」

「はいです〜」

どうやら今はプリン以外に興味を持たない感じだ。

俺は早足で階段を駆け上がる。しかし、何か妙にそわそわしてしまう。

「桜ヶ丘からメールがまだこない!?」

いやぁやっぱり交換した日とかさ?よろしくお願いします的な?そんなのが向こうから一通ぐらいきてもいいよね!全く来ないんだけど俺さみしいよ!?

「や、やはり俺からメールを送るしかないかな...って何て送ればいいんだ?」

1人部屋で考える。

「ま、ここは無難によろしくって感じでいいよね?」

無題の部分によろしくと打つ。

そして送信。

「お、送っちまった....」

すると1分も経たないうちに

「ピリリリリリリッッメールが届いたよ」

俺の好きなアニメのヒロインのボイスが携帯から流れる。

「おぉお!返信来たぞ!凄い!」

ひどく感動してしまった。

「しかもヒナコちゃんの着信ボイスめっちゃ久しぶりに聞いたなぁ」

最後に返信メールが母から来たのはいつだっただろうか。

メールを見る。

『しゅうへいくん!メールありがとう♪♪

こちらこそよろしくね✌︎('ω'✌︎ )』

「な、何だこの可愛い文章は!これが今時のJKなのかっ!」

初めての経験を経て俺はつい舞い上がってしまう。まぁ、許してくれ。

「ん〜〜けどたった一通送って終わりは寂しいぞ。何か話題を作らないとな、中学校の時の話とか盛り上がりそうだな。うん、それで行ってみよう」

『なぁ明日もし暇だったらどっか遊びに行かないか?』

よし、送信っと。

…....じゃ、ねえええぇえぇええええ!?おいおいおいおい!何やってんだ俺は!?馬鹿じゃないのか?いや馬鹿だ!欲求を出しすぎた!

「で、でででデートにいきなり誘っちまったよ!こういうのは段階踏んでやるもんだろ俺!しっかりしろよ!」

やばい、これはシャレにならない。まだラブコメや少女漫画の主人公みたく、華麗に清楚でイケメンキャラなら分からなくもないが平凡でどこにでもいそうな、まして顔面偏差値もそこまで高くないやつがメールのたった2通でデートを誘ったとなるとこれはもう「ピリリリリリリッッメールが届いたよ」革命が起きたとしか言いようがない。いやしかしこれ断られたりしたらやばいぞシャレにならんぞ。てか普通断られるくね?まだ出会って1週間しかたっ『うんっ!

いいよ♪♪』てないんだから仕方なえええええええ「えええええええっ!?」

「どうしたんですかお兄さん!?」

かえでが物凄い速さで階段を駆け上がりドアを思いっきり開けて来た。

いかんいかんつい声を...いや待てこの展開は誰も予想していなかったんじゃないのか?

「すまんかえで、最近の若者言葉で、平仮名のえを繰り返し唱える呪文が流行っているんだ」

「平仮名の、え、ですか。どのような効果があるんですか?」

「絵が上手くなる」

許してくれかえで。お兄ちゃんが明日デートに行くなんて言ったらブラコンなかえでは黙っていないだろう。挙句に母さんにまで連絡を通して『お母さん大変!お兄さんに彼女ができたの!』なんて言いつけて我が家で俺をいじり倒す事になりかねない。大体家族で俺にだけ敬語を使うのはやめてくれと、今まで散々頼み込んだのだが何故か俺にだけは頑なに敬語を使いたがる。「かえでなりの愛情表現です」なんて言ってたかな...まぁそんな事は今はどうでもいい。

「本当ですか!明日早速試してみますね」

「ああ、それがこの呪文は高校生にしか効かないらしいぞ」

「ええっ!....うぅ仕方ありません。諦めて今日はもう寝ます。おやすみなさい」

「おぅ、おやすみかえで」

かえでが背中を残念そうに丸くしてドアを出る。マジで、すまん。

「と、それは置いといてどういう事だあ桜ヶ丘!一体あいつは何を考えてやがる。も、もしかして単純に俺とデートをしたかったんじゃ....は!もしかしてのもしかすると俺の事がす、ススス....好きだったり!」

舞い上がった俺の妄想は青天井に広がって行く。

とりあえず集合場所は決めておこうと思った。

『じゃ、じゃあ明日10時に駅前で!』

「あぁ何か色々あって疲れた。携帯ってこんなに人を熱くするものだったかなぁー...」

脳裏に桜ヶ丘の笑顔が浮かんでは消える。

「今日はもう寝よう」

電気を消してベットに入るが一向に寝れない

「やっぱり男と付き合った事はないって言ってたけどデートとか慣れてそうだなぁ」

その後桜ヶ丘の事を考えて眠れなかった。睡魔が襲って来たのは1時間後くらいだった。


その頃、桜ヶ丘の家にて


『なぁ明日もし暇だったらどっか遊びに行かないか?』

「はぅ!?何でこんなメール来てるの!?さっき私よろしくって送ったばっかだよね...」

アイスを食べながらベットで漫画をよんでた桜ヶ丘は飛び上がった。

「で、でも何でだろう。とっても嬉しい...こんな気持ち初めて...」

私をデートに誘ってくれる男の子なんて今まで1人もいなかった。寧ろ避けられていたから。でもしゅうへい君に出会って私は変わった。彼が私を変えてくれた気がする。そんな彼から誘いが来た事はとても嬉しい事で『うんっ!いいよ♪♪』と返信した。

「た、大変だよ!まさかデートする事になるなんて思ってなかった」

その後1時間は服選びに時間がかかって寝れなかった。

































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