□ プロローグ □
□ プロローグ □
「 はあぁぁぁ…つっかれた…!! 」
大きな溜息と共に、ドサッと野原に倒れ込む。
俺は、人ではない。かつて人だった。そう、かつては。
あの子を守るために、俺は1度死んだんだ。
でも、結局俺はあの子を助けられなかった。
今はどこにいるのかわからない。探し続けているうちに、もう7年も過ぎていた。
後悔と罪悪感で押し潰されてしまいそうで、もうあの子に合わせる顔がない。
あの子はもう、死んでしまったのだろうか。
それともまだどこかで、生きているのだろうか。
「 …ごめんな…煠乃…。 」
「 ユノって、だぁれ? 」
ひょこっと出てきたのは、柳原 流雨だった。
「 なになに〜?ユノってだぁれ?だぁれ? 」
「 …なんだ、流雨と遼かよ。 」
「 ユノってだぁれ? 」
「 …ともだち…? 」
「 ぷッ、なんで疑問形??あははは、面白い〜。 」
実は、俺は煠乃が好きだった。俺は好きな子ひとり守れなかった。
煠乃にとって俺は、ともだち…いや、それ以下なのだろう。
もしかしたら、恨んでるかもしれない。そんな子じゃないってわかっているけど、可能性は0じゃない。
「 ん?あれ?…おーい!大丈夫?いきなり黙ってどうしたの? 」
流雨は自分の手を、俺の顔の前でヒラヒラさせる。
「 …あ、あぁ。大丈夫。 」
流雨と遼は、俺と同じ人ではない。
……あ、そういえば、言うのを忘れてた。
俺の名前は 柊 桃季。読み方、間違えられやすいのがたまにキズ。
あぁ、そうそう。人ではないって言うのは、神様だと言うことだ。
俺は、炎の神、炎。神界の中では“ 桃季 ”よりも“ 炎 ”で知られている。これはいわゆる、“ コードネーム ”ってやつだ。
そして、さっきから明るく話しかけてくる柳原 流雨。コイツは水の神、水。
それから、さっきから一言も喋っていない無口な奴は、伊藤 遼。コイツは氷の神、氷。
この2人は、俺と同じで元々は人間だった。
人間から神様になった話は、また今度にしよう。
そして最後に。俺の好きな人、千莉 煠乃。彼女は、元から神様だった。それも特殊な神様で、神界では有名人だ。
父親は“ 死神 ”、母親は“ 勝利の女神 ”。その間に生まれた子供が、煠乃だった。
善と悪、ふたつの正反対の神から生まれた、キセキの子。
つまり、俺はその神様に恋をしていたことになる。
いつ出会って、なぜ恋に落ちたのか。
それは、もう少した経ってから話そう。
「 お前らは、煠乃に会ったこと無かったな。 」
「 え?あ、あぁ、うん。名前だけなら噂で聞いたことあるけど... 」
「 …1度だけ、会ったことがある。 」
遼はポツリとそう言った。
「「 え!?あんの!? 」」
2人の声が、キレイにハモる。
「 あぁ、あるよ。 」
「 え!いついつ?? 」
流雨は興味津々で、遼に詰め寄る。そんな中俺は、驚きすぎて質問すら出来なかった。
「 …普通に、ちょっと見かけただけ。 」
「 いーなぁー!ボクも見たい〜!ずるいよ、遼だけ〜!! 」
「 …結構、可愛かったな。 」
「 なっ!!!!! 」
「 …けど、好みじゃない。 」
「 …お前、からかってるだろ。 」
遼は、「まぁな。」とでも言うように口の先をあげて笑う。
コイツはSだ。ドSだ。それは今始まったことじゃない。どうせ、もう慣れっこだよ!何年の付き合いだと...
「 そぉいえば…。煠乃ちゃんの噂、最近聞かないね〜? 」
「 そういえばそうだな。 」
「 ………。 」
そうか。遼と流雨は知らないのか…。
俺も教えてないから、しょうがないっちゃしょうがない。
「 …煠乃は今、消息不明だからな。 」
「「 え。 」」
「 もしかしたら、もう死んでるのかも知れない。 」
「「 ………。 」」
シリアスな空気が漂う中、遼が最初に口を開く。
「 …いや、たぶん死んでない。 」
いきなりのその根拠の無い言葉に、俺は絶句した。
「 …なんで、そう思うんだ? 」
「 勘だ。 」
あまりにも真面目に言うものだから、可笑しくなった。
「 遼の勘は当たるからね!ボクは遼を信じるよ!! 」
確かに、遼の勘は恐ろしく当たる。運がいいのか悪いのか。その強運を分けて欲しいと思う時だってある。
「 生きていてくれればいいなぁ... 」
「 俺も、そう願っておく。 」
「 ボクも!! 」
そう言われただけで、心強かった。2人の言葉が嬉しくて、心が少し軽くなった。
『 桃季はいい友人ができたね。 』
ずぅっと前に、誰かにそう言われたような気がする。
顔も声もうろ覚えだけれど、とても優しい笑顔でそう言われたような…そんな気がして懐かしい。
「 なぁ。 」
「 なんだ、桃季。 」
「 どうしたの? 」
少し躊躇いながらも、2人に向かって言った。
「 なんか...ありがとな。 」
少し恥ずかしくて、すぐ目は逸らしてしまったけど、伝わったかな。
「 えぇ〜?顔真っ赤にして何言い出すの〜?今更だよね〜? 」
「 あぁ、照れるなら言わなくってもいいんだぞ?そんな、分かりきってること。 」
「 〜〜〜ッ!!ニヤニヤするなよ!!! 」
3人で他愛も無い会話をしているこの時が、とても幸せだった。いつまでも煠乃のことを思って苦しくなる毎日の中で、唯一の幸せ。
たとえ苦しくなっても、明らかに苦しさは薄れつつあった。でも、煠乃に抱いた想いは薄れることなく残っている。
このまま、この小さな幸せを壊さないで、毎日が過ぎるのだと思っていた。
─── 彼女に会うまでは。
第4作目の投稿です!
今回は、前から考えていたお話です(*´ー`*)
神さまと人間の禁断の恋!を書きたかったのですが、ちょっとズレてしまいました(汗)
この物語の中で、書ければいいなぁ〜と思ってます。
感想やコメント!アドバイスなど!
お待ちしております(*Ü*)ノ"
では、また次のお話で。