始まり
秋風学園一年A組、放課後ーーーーー
「はぁ!!? あんたまた『ラブりんく!』詰んだわけ!?もうヤだからね!!」
自他共に認める『ゲームマイスター』…春野ひよりは怒っていた。
その正面に正座して申し訳なさそうにしている…かつ、彼女の怒りの矛先なのが…平田直哉だ。
「だ、だってさぁーーー」「だってもなにもないわよ! あたし、あんたに攻略してかつイベント網羅できるルート、プリントしたげたよね? あっっりえない!!」「…う、ご、ごめん…」
周りの生徒は『またいつもの痴話喧嘩か…』といった様子で苦笑している。どうやらこれは日常茶飯事のようだ。
そしていまだにワーワー言っている二人に、教室の外からあるひとつの声がかかった。
「あの…春野ひよりさんに、お話があってきたのです、がーーー」
お取り込み中のようですね、といって帰ろうとする声の主に二人は顔を見合わせ一時休戦を伝え合い、全然取り込んでないことを伝えるために彼女のほうへ向かった。
* * * * *
その女子生徒は、とあるゲームの製作者だと言う。
そのゲームの名は、『Black Castle Online』。
聞くと、この秋風学園のAVRMMORPGだそうだ。
曰く、シナリオやクオリティーは申し分ないのだが、ボス付近のモンスターのLV設定を間違えたらしく、その強さがチート並みになってしまった。
彼女はじめ、製作者皆もプレイしたらしいのだが、その付近になるとモンスターが倒せなくて頓挫したと言う。
モンスターの攻略法を知っているのにもかかわらず、だ。
しかしそれに気付かず学園ネットワークへアップしてしまった。
なのでもうLV設定は変えられない。
このゲームを消してしまうか、このまま残すか…。
彼女らには、そんな究極の二択しか残されていなかった。
しかしアップしたゲームを消してしまえばそれは全て初期化され、消えてしまう。先輩たちと青春しながら作った、ゲームが全て。
残せば『チートだ』といった苦情が来る。実際、何件かそのような苦情が来ていた。
そんな極限状態の時このゲームマイスターの噂を聞きつけた。
そして思ったのだと言う。『是非その人にゲームをクリアして欲しい』と。
話を全て聞いた当のゲームマイスターは、顔をしかめていた。
どうやら所詮生徒の作ったAMMORPG、と思ってスルーしていたらしい。
説明し終えると、女子生徒は「どうでしょうか? 是非プレイしていただけませんか?」と今一度聞いた。
「うん…、これはやんなきゃだね、あたしのゲーマー魂にかけて!」
二つ返事でOKし、すっくと立ち上がる。
「じゃぁ、早速やろうか! ついでにホレ、直哉! あんたも!!」「ふぇ! ぼ、僕????」「レクチャー、してあげるから!」
と言う感じで半分以上強制的に、彼を巻き込んだという。