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戒厳令
「まず、外患の定義から説明します」
私がとうとうと言いだそうとした瞬間、恐れていたことが起きた。
まずは、法廷のドアが開かれ、廷吏の一人が手紙を受け取る。
その手紙が裁判長のところへと到達すると、あとはそれを開いてみるだけだ。
「…たった今、戒厳令が布告されました。この裁判は、この時点で軍法裁判所へ移管することになります。裁判員の方々はお疲れ様でした。一時、戻っていただきます」
裁判員を先に退席させ、すぐに裁判官も一緒に出ていく。
「始まってしまったのか…」
私は、独り言にも似た言葉を、空中に放っていた。