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開廷
公判当日、私たちは裏口から入った。
誰からも見られなたくなかったというのと、職員はそうするという規則だったからだ。
「相手は、どんな戦術で来るでしょうか」
部下の一人が、私に聞いてくる。
「この裁判の有効性への疑義でしょうね。事件そのものを無かったことにするという戦術だってあり得るわ。でも、私たちがすることはただ一つ。彼を有罪とすること。それが目的よ」
法廷に入って、私たちは、いくつかのファイルを机の上に置く。
その様子は、弁護士たちも見ていた。
「来たわよ」
弁護士たちが並ぶ机の後ろにあるドアから、被告人が入ってきた。
彼は腰輪に手錠という姿だが、スーツを着込んできている。
それらがとかれると、すぐに弁護士席へと座る。
一瞬、被告人と目があったような気がしたが、すぐに視線をそらされる。
「…どうしました」
部下が聞いてくる。
「いや、何もないよ」
私は部下に答えると、すぐに廷吏が起立するように言った。
いよいよ、裁判が始まるのだ。