オープニング
「ルールは五百人ずつで編成されたチームで戦い、一人になるまで撃ち合うだけだ!
弾が当たった者は自己申告で退場する事!弾は学校全体にばらまいてあるから
それを拾って補充してくれ!以上!それでは校内サバゲーバトル、始め!!」
三年学年主任の沼川先生の合図で向かい合った千人の生徒たちが一斉に駆け出した。
開始まもなくエアーガンの発砲音が聞こえ、BB弾が空中を勢いよく飛び交う。
「雄也!秋穂!こっちだ!!」
大勢の連中が広いグラウンドで撃ち合う中、
僕はクラスメイトである二人を校舎の中へと誘導すると、
悪友の雄也が不満そうに口を切った。
「なんだよ和明。せっかくの月一のイベントだってのに楽しまねーのかよ?」
「雄也、それは違う。僕は長く楽しむ為に校舎へと逃げ込んだんだ。
あんなだだっ広いグラウンドで撃ち合ってちゃすぐに弾をあてられてゲームオーバーだろ?
先生は校舎を使うなとは一言も言ってないし。秋穂はわかるよね?」
「あ、うん。確かに外より室内の方が安全よね。つまり前半は
極力室内に隠れて敵の人数が減ったところを狙うって事でしょ?和明」
「さっすが秋穂。雄也はせっかちすぎるんだよ……」
「うっせ馬鹿!!久しぶりのイベントだからついついはしゃいで
判断力が鈍っただけだ!!」
短髪を逆立てて怒る雄也を秋穂さんがまぁまぁとなだめ、僕は微笑んだ。
イベントーーーー
僕の通う園多芽高校では、毎月イベントという祭りが開かれる。
その内容は、クラス対抗パイ投げ対決やら水風船合戦やら、
今回のサバゲーバトルなど、普通ではありえないちょっと変わったものだ。
園多芽高校はまだ新高で、新入生徒の呼び込みに力をいれた結果
イベントが行われるようになったらしい。
イベント効果はかなり高く毎年新入生が殺到、今じゃ県内じゃ有数のマンモス校だ。
「それにしても面白い学校よね。ここは」
ひとまず自分達の教室である2ーBに行き一息ついてると、楽しそうに秋穂は笑った。
秋穂はロングのストレートヘアーが良く似合う可愛らしい顔立ちをしていて
良くモテる。単純に顔が良いってのもあるが、親しみやすい性格なのも理由の一つだろう。
なお、黒板にエアーガンを撃ち跳ね返った弾を素手でキャッチするという
何気に凄いことをしてる雄也は、全くモテない。主にガサツすぎるのが原因かな。
「確かに良い学校だよね。今や注目度が半端ない人気校だし」
今じゃ競争率も高いし、人気が出過ぎる前に入学できて本当によかったと思う。
さてと、そろそろ動きますか。楽しまないと損だし。
「なぁおい二人共」
「どうしたの?雄也。そろそろ移動しないと」
「弾……無くなっちゃったんだけど」
「はぁ!?何やってんのさ!黒板に撃ってた弾は全部キャッチしてたはずだろ!?」
「いやお前、一回撃った弾をまた使うと故障の原因になるだろ。使えねーよ」
「ガサツな癖に何ここぞとばかりに几帳面さ発揮してんだよ!使えよ!」
「ちょっと和明声大きい!敵に気づかれるじゃない!!」
「そうだぞ和明。声大きいぞ」
「雄也のせいじゃないか!!」
と、そんなやり取りをしている内に教室のドアが勢い良く開き、十人程の敵生徒が
エアガンを構え押しかける中、リーダーらしき生徒がニヤリと言い放った。
「お前達は完全に包囲した。諦めて降参しろ」