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歓迎

 書き直した版です!


 前回の奴よりはほんの少しはましだと思います。


 ……ましだといいなあ。


 という事で最初のバージョンをみてくださった方すいませんでした!


 そして謎の小話に気づいてくれた方ありがとうございました!


 という事で改訂版の駄文です。

 武藤さんの後に付いて行くとコロッセオを十階建てにしたような建物のに向かっているようだ。おそらくあれが闘技場だろう。


 そしてようやくそこで重要な事に気付く。


 闘技場に入るのにお金持ってないぞ僕。


 ここまでつれてきてもらってお金なくて入れないって…………。 


 これ以上迷惑はかけないほうがいいだろう。ここでさっさと言ってしまおう。


 そう思い半歩先を歩いている武藤さんを呼び止める。


「すいません。……言いにくいんですが、僕お金ないんですが……」


「金? なんでだ? 何に使うんだ?」


 武藤さんは振り向いてこっちを見た後、何言ってんだこいつ? という顔でこっちを見る。


 闘技場なんて名前なんだ。金がかからないほうがおかしいだろう。


「僕は闘技場に入るのにお金が無いんですが……」


「ん? ああ、そうだった。説明してなかったな。闘技場は初めて行くときは無料で、その付添い人も無料なんだ。能力はこの世界での職業を決めるのにも必要だからな」


 そういって武藤さんはまた歩き出す。


 しかし闘技場は初めて行くときはタダなのか。


「それは良かった。びた一文持ってないのにかねかかると思いましたよ…………って。ええ!? この世界って職業あるんですか?」


 普通に流すところだった。


 職業って事は働かなきゃいけないんだろう?


 神から与えられたボーナスステージ……で?

 

「そうだぞ? お前を案内しているのだって一応仕事の一環だぞ?」


「そういえば出会ったときにも言ってたきがします……。あの時は大人が子供に優しくするとかそういう意味合いだと思ってました」


「ああ、そういうんじゃなくて純粋な仕事。WARKだ。オレの仕事はこの町の騎士で、主な仕事は町の警護だからな。パトロールついでに案内してるだけだぜ?」


「WARKじゃなくてWORKだと思うんですが……?」


「ん? そうだったか。まあとりあえず仕事をしなきゃいけないんだよ。少なくとまともな生活がしたかったらな」


 まあ、例え仕事のついででも案内してくれて嬉しい事には変わりないし、僕に気を使わせないための言葉だろう。


 そう思っておこう。一応と付いていたという事は武藤さん自身の厚意も入っているだろうし。


 まあ、いくら死後の世界でボーナスステージだとは言えよくよく考えてみたら周りに八百屋だってあるんだし、別におかしい事でもないか。


「能力によって仕事が変わるんですよね? でしたら自分が嫌な仕事な場合もあるんですか?」


「そういう場合も無いわけじゃないが少ないな。大抵の奴は自分に合った異能を持ってる。まあ、生前の人生を表すものが異能だからな。だから自然と能力に合った仕事は、そいつのやりたい仕事なんだ。まあ、やりたくない仕事なら別の仕事をしてもいいしな。ほら、あそこに見える金物屋だって自分の能力とは違う職業についてるな」


 武藤さんがさした先には筋骨隆々の大男がさまざまな刃物を売っている。


 人の入りはなかなかいいようだ。金物屋の主人もいかつい顔で笑っている。


 周りを見渡す限りいやいや仕事をしている人は居ないようだ。


 つまり自分のやりたい仕事ができているのだろう。


 僕にとってもそれはかなりの朗報だ。


 能力しだいではもしかしたら何の知識も無いのに学者になれって事にもなりうる可能性があったのだ。学者という職業があるかは分からないが。


 自分の能力や職業について考えながら歩いていると、ふと疑問がわいてくる。


 さっき武藤さんは町の警護が仕事だといっていた。


「この世界って警護が必要なほど荒れてるんですか? この世界に来るときに閻魔様に生前の行いが良かった人がここに来るって言われたんですけど、そんな人達が治安を悪くしたりするんですか?」


 武藤さんは立ち止まって少し考え込みながら言う。


「ああ、それだがな、前提条件が間違ってる。…………説明が少し長くなるが、この世界に呼ばれるのはな人生で善行と悪行のバランスが取れてなかったり、何かを人生で大成させた奴だったり失敗した奴だったりがこの世界に来るんだ。生前の行いが良いからくるってわけじゃない」


 それだと閻魔大王様に言われた事と矛盾する。


 しかし武藤さんは嘘を言っているような顔には見えないし、そこまで手の込んだ嘘をつく必要が無い。


「でも僕がこの世界に来たときには回りには悪い奴はいないって言われたんですが……」


「ああ、それはこの国に呼ばれる人間は、って意味だな。この国は基本的に生前不幸でも生きて来た奴の呼ばれる場所なんだ。だからだと思うぞ」


 国というくくりはこの世界にもあるのか。しかもこの国は不幸だった奴が来る場所なのか。


 だから閻魔大王様は悪い奴はいないって言ったのか。


「えーっと。じゃあ、この国……って言ってましたけど他の国では違うんですか?」


「ああ、まるで違う。この国は東に位置していてな、東の国、とか呼ばれる奴の特性を取って不運の国とか呼ばれてる。逆に西の国の特性は生前運が良くていい事をしようが悪いことしようが楽しく生きてきたような奴等が集まってる。うちの国とは真逆だな」



 えっと。この国は何をしようが不運な生き方をしていた人達が来るところで、西側の運の国は何をしようが幸運な生き方をしていた人がくるって事か。


 不公平すぎるだろ! もう少し公平にできなかったのかよ閻魔大王様!



 一瞬叫びたくなったがこらえて武藤さんの話の続きを待つ。


「この二つは運が絡んだ人生って奴だな。そして北と南は何をしてきたか、が関わってくる。北の国は成功者の国でな、人生で何かを成し遂げた奴等の来る国だ。だから成功者の国って呼ばれてる。んで、南の国は努力を重ねたにも関わらず失敗してしまった人達が来る。これが各国の概要って奴かな」


運の良さによって分けられた東と西の国、生涯において成功したかどうかによって分けられる北と南の国。


 ちょうど正反対の位置に正反対の人生を歩んできた人が来るようにできているようだ。


「なら、東の国と西の国って仲悪いんじゃないですか?」


「ああ、そうだぞ。今は不可侵条約結んでるが、ちょっと前まで戦争してたくらいだ。それと北の国とも仲が良いってほどじゃあないな。うちの国は運悪く何かを成し遂げられなかった奴も少なくない。まあ、代わりに南の国とは仲良いけどな」


 ああ、つまり幸運とは程遠い人生を送ってきた負け組み(ひがしのくに)の心情を幸運な人生を送ってきた勝ち組(にしのくに)の人たちは理解なんて欠片も出来ないだろう。


 そして失敗して最底辺の人生を歩んできた負け組み(みなみのくに)と成功して幸せな人生を歩んできた勝ち組み(きたのくに)じゃ人生に対する価値観がまるで違う。


 そして今は負け組みは負け組みで、勝ち組は勝ち組で手を結んでる状態という事か。


「それで、偶に北とか西の国がうちの国に来たりした場合の警護が必要なんだよ。それ以外にも火事なんて起きたときには救助にも向かうし、飢饉なんて起きかけたときには食べ物をあるところから無いところに運んだりとかもしてるし、月に一人二人のペースでこの世界にやってくる奴の案内だって俺たちの仕事だし、夫婦喧嘩が行き過ぎた時にも俺たちが借り出される」


 武藤さんは長々と愚痴るように言う。


 騎士の仕事はとても大変らしい。しかし人のためになるすばらしい職業だと思う。


 こんな僕でも役に立てるのなら、騎士になってみたいとすら思う


「あ、そういや俺は長い間この世界に居るが、この国に落とされた後すぐに普通に会話できる奴なんて珍しいんだぜ? だからさり気に驚いてんだ」


「え? ――ああ、この国は不幸な人が来る国でしたね。だから会話できるほどの人が少ないんですか」


「そういうことだ」


 武藤さんはにやりと笑って歩き出す。


 しかし何かを思い出したようでポンと手を叩いて僕のほうを向く。


「もう一つ俺の仕事で言っておかなきゃいけないことがあったんだ」


 武藤さんは唐突に立ち止まって、コホンと咳払いした後、何回も繰り返したようなよどみない動作で一礼した後に、また先ほどの礼と同じようによどみない動作で言う。




「輪廻から外れた者の世界『外れた世界(ドロップワールド)』へようこそ。

 この世界では生前の成功も、失敗も、幸運も、不幸も全て自らの糧として 全力で楽しんで生きてください。

 新しい同士として私達はあなたを迎え入れましょう」




 にやりと笑いながら言われた自分を受け入れるという言葉は、僕にはとてもまぶしく感じた。

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