初出勤
「よし今日はお前を鍛えてやる」
紹介された宿舎から騎士予備隊の詰所に向かって、一番始めに聞いた聞いた言葉がそれだ。
その言葉をいった本人である正平さんは何でもない事の用に言っている。
しかし、ある疑問が出てくる。
「仕事は……無いんですか?」
そう。
来たばかりつまり一切の仕事をしていないのだ。
机の上も書類など一つもなく、書類棚の中もすかすかだ。
確かに発足されてそれほど時間がたっていないにしろ少し可笑しいと思う。
「仕事か? ああ、言って無かったっけ」
「何をですか?」
「うちの仕事のこと」
確かにほとんど聞いていない。
しかし、リエルさんと暮榊さんが居ないのを見ると二人は仕事しているのだと思う。
それなのに自分は仕事しなくていいのかと少し不安になる。
「うちはな、二人で町をまわって仕事が終わりって位軽い所なんだ。それも日に二回合計六時間くらいな」
「つまり、僕が来る前に二人は仕事にいったんですね?」
「いや、あいつらは始業間際に来る。リエルを起こすのにいつもそんくらいかかってなぁ。朝日も頑張るよな」
確かに僕と正平さんは始業三十分前にここに座っていたが……、それでも遅くはないだろうか?
「うちの仕事なんてないも同然だし、敵兵が攻めてきたときの少数部隊としての役割が強いから訓練に時間裂いても誰からも文句場でないんだよ」
そう言うものなのか。
あまり納得は出来ないが理解はできた。
「では訓練よろしくお願いします!」
「おう」
これからもっと強くなれる。それだけで少し嬉しい。
「まあ、ヤル気満々なのはいいんだが、二人が来てからな」
正平さんにたしなめられて我を取り戻すと同時に少しだけ恥ずかしくなった。
「まあ、とりあえず聞きたいことはあるか?」
正平さんが、会話を途切れさせない為に質問をしてくれる。
ぱっと質問は無いかと聞かれるとなかなか出てこないけれど、割とすんなり質問をすることが出来た。
「僕の能力についてなんですけれど、どれくらい聞いていますか?」
「大体は聞いてるぜ? 感情やら痛みやらリミッターやらを劣化させる能力だろ? なかなか近接向きの能力だな」
「近接向きですか……。それだと僕の場合はあまり戦えない気がするんですが?」
普段使う三倍もの力を使って殴れば自分の腕なんて簡単に折れてしまう。
怪我覚悟で一人を倒したい時には使えるかもれないがそれでようやく倒せるか倒せないかというレベルだ。
それを使う前提で戦うとすぐに死んでしまいそうだ。
「まあ、確かにリミッター解除は最終手段だろうな。だからその他の部分でお前は前衛向きなんだ」
「他の部分でですか?」
「ああ、お前の異能劣化は相当使える。この世界には武藤さんみたいな直接人間に効果をなす能力が多々ある中で、それを無効化出来るんだ。相当なアドバンテージだろう」
俺は身体能力の低いこの体で戦うのなら、感情を劣化させることによる弓などを考えていた。
弓道はもちろん技術も関係あるだろうが、心も大きく係わってくるため向いているかと思ったのだ。
しかし、正平さんは異能劣化の方を主眼に置いたようだ。
「今日から筋トレをいやんなるほどやってもらうから、覚悟しておけよ?」
「分かりました」
そう答えた所でどたばたという音と共にリエルさんと朝日さんがやってきた。
さあ、特訓の時間だ。




