能力大別
二カ月ぶりに更新!
ただしまだ合宿中ですけどね!
「それじゃあ、能力についてレクチャーしてやるよ。一度しか言わないなんてことはないから分んなかったら聞いてくれ」
「はい! よろしくお願いします!」
能力が使えるとなるとなると嬉しくなってきて、つい元気よく返事してしてしまう。
武藤さんは闘技場の中央付近まで行って座りこむ。なので僕もそれにならって闘技場の地面に座る。
「いい返事だ。ところで俺たちには一人に一つずつ個別に能力が与えられている。ここまでは知っているだろう?」
首を縦に振って返事をする。ここまでは閻魔様に聞いているので知っていた。
ここでは生きてきた生涯を表す力が与えられる。つまり僕みたいな敗者にふさわしいだけの能力なのだろうけど、それが誰かの役に立つ能力なら嬉しいなと思う。
「でも、生涯を表す力の中にも二つ種類があるんだ。これは多分聞いてないと思う。こっちでも明確に分類分けされたのはここ百年ぐらいだし、閻魔大王もそこまで細かいことは言わないと思うしな」
「確かに言われませんでした。えっと、生涯を表すのに二種類もあるんですか?」
「そうだ。生涯を表した場合ってなると何を思い浮かべる?」
「生涯を表すとなると、やっぱり過去にあった出来事とかですかね?」
「そうだ。それが一つ目なんだ。だが、それだと不都合が起きるんだ。特にこの国ではな」
「不都合ですか?」
能力を手に入れるのに不都合というのはどういうことなのだろう?
新しい力を手に入れられるのなら別にいいんじゃないかとは思うんだけど。
「んじゃあ、例えば事故で左腕をこの国に来た奴がいるとする。そいつの場合どういう能力になると思う?」
左腕を失うのを表す能力か。確かにこの国は不運で来る人が多いい国だから層いうのもありえるのか。というよりもそちらのが多いいのだろう。
「……腕を失った人の能力ですと。相手の腕を無くしたりですかね?」
「そういうのもいるぞ。この場合表しているのは腕を失ったっていう怒りと腕を持っている奴に対しての嫉妬を表した能力だ。だがこういう奴は案外少ない」
「それじゃあそれ以外の人の能力はどうなるんですか?」
「この場合もう一つ可能性が出てくるんだ。例えばさっきの例えで言うとどんな感情で手に入れた能力だった?」
「確か怒りと嫉妬でしたよね? それが関係あるんですか?」
「ああ、基本的に俺たちの能力は不幸を受けたときの強い感情がシンボルになってるから感情はめちゃくちゃ大事だ」
感情によって決まるというならもっと能力に幅ができそうだ。僕が思い至った事を察したのか武藤さんはにんまりと笑う。
「お前も多分気づいただろうけど、この場合だと腕を失った悲しみが強いと超強力な回復能力になる。それこそ腕すら再生できるほどのな」
「なるほど。つまり、不運になった条件は同じでも能力が違うことがあるって事ですか。……でもそうなると二つじゃ分けきれないんじゃないですか?」
「まあ、そうなんだが一応大別は出来る。お前が最初に行った例のほうは『体現系』で、回復の能力のほうは『補完系』って呼ばれてる」
『体現系』と『補完系』か字面的に『体現系』はそのまま人生を体現していて、『補完系』は欠けたものを補完するような能力ってことかな。
「そんで、俺とかみたいな純粋に戦闘特化の能力は大抵『体現系』だ。そんで体現系の中であまりにも効果がひどい奴だと制限がかかるって訳だ。『補完系』は危険なのはそこまで多くないからな」
武藤さんはここまで質問あるか? と聞きながら立ち上がる。
「これから俺が能力を受けるから遠慮なくぶっ放してくれ」
「えっ? どうやって発動するんですか?」
「ああ、少し念じればすぐにでも出る。やってみてくれ」
僕は武藤さんの言葉の通りに念じてみる。
――能力よ発動しろ!
念じた瞬間から変化は静かに、劇的に、そして決定的に起きる。
すーっと感情が落ち着いていき、自分が機械のように無機質になる感覚。
「……これが、僕の能力か」
「は?」
武藤さんは口を大きく開けて驚いている。
それも仕方がない。なぜなら僕の体に一切変化が無いからだ。
僕の能力は一切の風邪すら起こすこともなく、運動能力を上げるでもなく、行ったことは。
――――感情の劣化だった。




