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76話 トッシュ大勝利。ゴミカス日人の死より悲惨な最後。ざまぁ!

 トッシュは反射的に胸をそらし首を後ろに下げた。


 目の前で銀光が線を引き、直後、鋭い風切り音がした。


 間を置かずに、右、左と「攻撃の起こり」と思われる空気の揺れみたいなのを感じた。

 トッシュは後方に下がり、そこでも嫌な予感がするから、後方宙返りをする。


 眼前と眼下で銀光があやとりのような軌跡を描き、空間を裂いた。トッシュは視界の片隅に映った戦闘用義体の肩を右手で押し、その反動でさらに後方へもう一度宙返り。

 初期位置にとどまっていればトッシュの肉体はサイコロステーキになっていただろう。

 しかし、二度目の宙返り先にも正面と左右から義体が迫る。

 巧みな連携だ。


 トッシュは日人のスキル内容を知らないが、もし知っている者が見れば驚愕しただろう。

 能力者本人の戦闘能力が低いため、日人の『無双』で呼び出した兵士は弱いはずだった。

 しかしそれが、熟練の騎士団のように連携しながら、強烈な機関銃のような連続攻撃を繰り出し続ける。


 10メートル離れたところで、攻撃の手がやんだ。


 トッシュは冷静に分析した。

 たしかに日人は強い。おそらく戦闘用義体に『他人の戦闘データ』みたいなものをインストールしている。人工知能かもしれない。本人は命令だけをだし10体の義体は半自動で動いている。もしかしたら、どこかで『人形遣い』能力者が操っている可能性もある――。と一瞬で推測する。


 トッシュの推測は大体正解だ。日人は大雑把な命令だけ出して、あとは戦闘AIが行動している。


 さらにトッシュは、今の間合い10メートルは、日人が「孤立するのを避け、身の回りに戦力を置けて安心できる」距離だろうと推測した。


 戦闘プログラムは「攻撃を続けようとしている」が、素人の日人ばびびって、戦闘プログラムの行動を止めている……そう感じた。


 それは「戦闘経験のない日人」の心の弱さだ。攻め続ける場所で攻撃の手を緩めた。身の安全を確保した。躊躇した。


 この推測もあっている。


「へえ。ふかすだけのことはあるか。うん。生活支援課のスキル相談業務みたいなことを言わせてもらうなら、スキルだけならA級認定目指せるかも。機械だよりだから、B級かもしれんが。これからは真面目に、戦闘支援課の課長として前線に出たらどうだ?」


「けひひひっ。なんだ。急におだてて、ごまをすって命乞いをするつもりか? 土下座して靴をなめるなら、俺の部下にしてやってもいいぞ」


「あー。すまん。お前に『降伏して、心を入れ替えて真面目に働け』って言いたかったんだけど、俺、そういうの下手らしい」


「くくくっ。なるほど。今までそうやってはったりで生きてきたのか。いいことを教えてやろう。俺の脳は、日本スキル管理協会のデータベースとつながっている(違法行為)。あらゆるスキルの情報が閲覧できる。シミュレーションをしたところ、11体の俺はやはり規格外だった。A級を超えている! お前に勝ち目はない! 利用すべきは、よき友人だ。粕野グループの協力のおかげで、俺は人工衛星ともリンクした(違法行為)。俺達11人の能力を組み合わせれば、くくくくっ。米軍の基地もハッキングしたぞ(違法行為)! ミサイル発射だ(国家への反逆行為)! お前に逃げ場はない。AIは俺の勝利を98%と予測したぞ! 残り2%にかけてみるか? 今の俺なら、核ミサイルさえ撃てるぞ(平和を祈る全人類への冒涜行為)!」


 目を血走らせた日人は鼻から大量の血を噴きだした。

 義体へ適応できずに脳がいかれて、人としての微かなモラルすら消えつつあるようだ。


「決めた! 核ミサイルで異世界人を全部殺して、日本人の女は全部俺が犯してやる! けひひひひひひひひっ!」


「あ、いや、つくづく口下手ですまん」


 パキンッ。


 小さな音が鳴り、戦闘義体の一体がバラバラになり、大量の部品が地面に転がった。まるで、プラモデルの組み立ての特殊撮影映像を逆戻ししたかのような光景であった。


 パキンッ。


 さらに音は連続し、次々と義体が崩れていく。


「あ。金属はゴミになるか。荒野に放置されると迷惑だな」


 金属部品は一瞬で土の塊に変わった。


 荒れ地に11個の土の小さなふくらみが出来て、そのうちの一つに、日人の頭部が落ちていた。


 自称A級を超越した能力者の、あっけない敗北だった。


「……は? なんだ。何が起きた。急に視線が低く――」


「おまえの言うとおり、俺はクソガキだよ。言っただろ。基本的にスキルはガキの方が強いんだよ。日本に慣れ過ぎて、うっかり弱くしすぎてた」


 日人は頭部しかないが首の断面は出血していない。肌があり、よくみると指のような足が10本生えている。

 まるで最初からそういう形状の不気味な生物だったかのようだ。


「お前は不老不死にして再生能力を与えた。この世界が終わるまでその状態で生きろ。最初はたいしたことない悪党だったかもしれないけど、お前、本当に核ミサイルを撃っただろ。それは俺が『なかったこと』にしたけど、お前のしたことは許せない」


「な、なにを言っているんだ」


 頭部しかない日人は喋れたし呼吸もできた。思考もできる。やはり、そういう頭部だけの生き物として存在できた。


「触れるなんて制約はない。俺は『俺の思ったことを実現する』スキルだ。漫画の見過ぎでうっかり弱点つくっちまった。まあ、人生がつまらなくなるから、自主的に制約をつけるんだけどさ」


「なんの冗談だ! なんの冗談を言ってる!」


 トッシュは会話するのが面倒になったので、もう日人のことは意識から追いだした。

 スキル『現実改変』で日人に関する記憶を消した。

 スキル『現実改変』を『ステータス編集』に変更した。


「さて。困った。今からドルゴ達をどうやって追いだそう。あいつら、絶対泊まっていくぞ。レインといっぱいエッチしたいんだが……」


 トッシュは迎撃作戦よりも真剣に、どうやってドルゴたちを帰らせるか考えた。


 声を殺しても、絶対にネイやドルゴみたいな五感がすぐれた者には、エッチしてることがバレる。

 事後だったらバレてもいいが、同じ館の中にいる状態でヤるのは、ちょっと恥ずかしい。


 いや、まて、恥ずかしいか?


 それも、日本的な価値観だよな?


 ……気にせず、ヤるか?


 そうだよ。気にせずヤればいいんだ。


 聞きたくないやつは帰ればいいんだ。もう戦いは終わったんだし、勝手に泊まっていくやつが悪い。


 トッシュは館に帰り、仲間たちがいることを気にせず、ヤった。ヤリまくった。

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