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75話 大勝利! その前に最後の敵が現れる

 一方的な展開になった。

 トッシュとドルゴが護衛するダンガムは強すぎた。


 敵の接近をトッシュ達が阻止すれば、もう、ダンガムは暴れ放題、暴れ砲台だ。


 シルは無邪気に撃ちまくった。コクピットの中だからシルの様子は不明だが、きっと「ピカピカ光って、すごい! 楽しい!」と喜んでいるだろう。


 たまに敵の反撃がダンガムめがけて飛んでくるが、トッシュとドルゴが肉体を盾にして防いだ。二人の負傷は聖女が治す。


 円城寺の「五感を狂わせるスキル」は、機械のダンガムには通じない。

 ピーグの巨大化は格好の標的になる。

 ドリーが飛行すれば、ダンガムの頭部バルカン(近接自動防御火器)が勝手に火を噴く。

 キルレミーのモンスターは容赦なくダンガムが踏みつぶす。多分、野菜の葉っぱにつく悪い虫を倒すくらいのノリだ。


 もう、めちゃくちゃだった。


 ダンガムはA級能力者に匹敵するような圧倒的高火力を、連発しまくった。

 操縦者のシルが「残弾」や「エネルギー残量」という概念を知らず、おそらく動画で軽く見た程度の知識で、ダンガムを操ってる。ビームは無限だ。

 しかも、爆発する。

 目標がロボットじゃないんだから、ビームが当たっても爆発するはずはないのだが、アニメ知識による攻撃だからビームの着弾地点は爆発しまくった。


 魔法少女アニメの影響もあるらしく、やられた敵は髪の毛がアフロになって「おぼえてろよ~」と捨てセリフを残しながら、どこか遠くへ飛んで行く。


 しかも、それだけではない。


 いつの間にか上空をジャンボジェットみたいなでっかい飛行機が旋回していて、それが地上目がけて、砲撃した。

 明らかにダンガムと連携がとれており、トッシュ達に被害が及ばない位置を撃ちまくる。


 粕野グループの金で雇われた傭兵部隊の戦闘車両がやってきていたが、戦場に到着する前に、上空からの砲撃で壊滅した。


「……あの空の、レインのスキル? なんで?」


「ああ。夕食用の魚をしめたら、スキル条件を満たせていたらしい」


「マジかよ。うちの女、強すぎん?」


 実際、強すぎた。


 同時刻ギルド『ブラックシティ』のオフィスは壊滅していた。建物自体が原形をとどめておらず、鉄骨むき出しのがれきの山と化していた。


 オフィスには金星と、「臆病な金星が自分の護衛として残しておいた」田山一派やリオンがいたのだが、ネイが乗り込んで壊滅させた。


 リオンを除く全員、胴から首が離れた。死んだわけではない。その状態で、一滴の血も流すことなく、生きている。「肉体を断たずに、空間を断つ」妖刀の能力だ。回復魔法では治せないので、犠牲者は死ぬまで首が離れたままだ。


 こうして敵は全滅した。

 トッシュ一派、もしくはネイの新生ギルドとされる集団の大勝利だ。


 日本エリアに近いから、ドルゴのスマホにネイから連絡が来て、トッシュもネイの勝利を知った。


「ドルゴ。シルと聖女の……」


「座間です。覚えてくださいよぉ……」


「あ、うん。座間さんを連れて先に帰ってくれ。頼んだぞ」


「どうした? お前は残るのか?」


「なんつうか、ゾーンに入ったから気づいたって言うか、違うな。愛の奇跡でレインの言葉が聞こえた」


「お前にそういう遠回しな言い方は似合わねえよ。はっきり言え」


「日人がダンガムのビームとガンシップの砲撃を生き延びた。それを上空から見ているレインが気づいたことを、俺が超感覚で気づいた」


「ミュータイプかよ。ダンガムみたいなことになってんな。分かったよ。あいつを仕留める役は任せた。よく漫画である『これは、誰々の分だ!』って言いながらやるやつ、やってくれよ。俺の分も殴っておいてくれ」


「分かった。これはレインの分! バキイッ! これはシルの分! バキイッ! そしてこれはドルゴの分! ぺちん……って感じだな」


「ははは!」


 ドルゴがトッシュの尻を叩き、バチンッと快音が響いた。


「じゃ、あとでな」


「おう。さっさと行け」


 ドルゴは聖女とともにトッシュから少し離れると、大声で「帰るぞ」とダンガムに向かって叫んだ。

 ダンガムは飛んで去っていった。


 トッシュは、ふわっと浮いて飛んでいくダンガムを見て、呆れる。


「あー。アニメで宇宙戦闘シーンだけ見たんだろうなあ。地上じゃ飛べないの、知らんのか。ああいう、無邪気な子供の思いこみスキルってめちゃくちゃ強いよなあ。俺も日本で生活しているうちに、すっかり忘れてた」


 トッシュは少し離れた位置のがれきに向かって、独り言のように言う。


「まあ、なんつうか? シンプルにって言って、日本のおっさんより異世界のガキの方がスキルは強いんだよ」


「クソガキがああっ!」


 がれきの下から、日人がはい出てきた。

 服は焼け落ちていたが、生身ではないので股間で不愉快なものが揺れることはない。

 金属質な戦闘用義体が、月明りを反射して銀色に輝く。


「どこで恨まれたのか知らんけど、決着つけてやるよ」


「けひひひっ! 仲間を帰らせたのは失敗だったなあ。お前は俺のスキルの恐ろしさを知らない!」


「それ、『馬糞の美味さを知らない』って言ってるくらい、当たり前のことだろ。おまえのスキルなんて恐ろしくねえんだからよ」


「黙れ!」


 ガシャンッ! × 10


 突如、空から何かが降ってきた。

 冷蔵庫くらいの金属が、日人の前に壁のように並び、トッシュの視界を遮る。


「くっくっくっ。俺がなんで屈辱を耐えながら、がれきの下で待っていたと思う」


「興味ない。つうか、早くヤろうぜ(戦おうぜ)。こっちは、早くヤりたくてしょうがねえんだ(戦闘を終わらせて帰ってレインとエロいことをしたい)」


「けひひひひっ! 馬鹿め。1対1なら勝てると思ったか? 残念だったな!」


 バシュッ! × 10


 冷蔵庫のような物体の前面が開き、中からドライアイスのように白い煙がもうもうと出てくる。

 煙はすぐに薄くなり、中から、人型の物体が現れる。

 それは、日人とそっくりな戦闘用義体だった。

 頭部はない。


「くっくっくっ。俺のスキルに合わせて作った特別製だ! 『無双』ッ!」


 日人がスキルを発動し、戦闘用義体に日人そっくりの頭部が出現した。まるで11人に分身したかのようだ。


「どうだ! A級冒険者に匹敵する戦闘能力が11人! オマエが好きな異世界基準とやらで、俺の等級を評価してみろよ! けひひひひひっ!」


「知らんけど、大したことねえんじゃねえの?」


 トッシュは戦闘用義体からは何も感じない。

 あくまでも日人の数少ない肉体から発する『気』のようなものを感じる。それは実際、大したことないように思えた。


「けひひひ。吠えずらかかせてやる! 異世界最高の人形遣いが作ったボディと、地球の科学技術で作った戦闘AIを搭載した俺たちの力、思い知れ!」


 ひゅんっ!


 消えた、と錯覚するほどの加速度で日人達が動き始める。

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