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68話 トッシュの愉快な仲間たち:いつメン

 空は雨雲で覆われつつあり、いつ降りだすか分からない雰囲気だったが、トッシュとネイは走らずに歩く。

 ふたりとも身体能力は高いので、走れば一瞬で館にたどり着けるが、なんとなく歩いた。

 ふたりきりでしゃべる機会は今まで意外と少なかったし、これからも少ないかもしれない。


 それにトッシュは、ちょっと悪いことを考えていた。


(雨に濡れたら、ネイにシャワーを勧めよう。当然、水をお湯にするため俺も一緒に浴室に入る必要がある。ぐ、ぐへへ……。生乳を拝めるぞ……。形や揺れの挙動をしっかりと目に焼き付けて、レインのおっぱいを同じ大きさにしていっぱい楽しもう……。ぐへへ……!)


 トッシュは悪い意味で覚醒していた。


 戦闘用義体により、決戦のボスに成りつつある日人も「覚醒」したと言えるが、トッシュは悪い覚醒だった。もう。エロ方面でダメ人間になりつつある。


 そんなトッシュのエロ気配を察したのか、ネイが低めの声で言う。


「空を気にしているようだが、大丈夫だ。日本エリアと違ってこの辺りの荒れ地は乾燥しているから、降らないよ。降ったとしてもすぐにやむ」


 ネイの声が若干冷たかったから、トッシュは下心が見透かされたかと思ってヒヤッとした。


「そ、そうか? いや、でも、地上の地形は関係なくない? 日本エリアとファンタジーエリアで天気が変わるって迷信だって」


 トッシュは軽い調子で言ってごまかそうとした。

 だが、冷静な声で返される。


「いや、天気は地形の影響を受けるから変わるよ」


 たぶん、ここから始まるのはエロいことを考えたトッシュへの罰というか、教育だった。


「荒れ地は植物がないから水蒸気が少ない。さらに、地表の温度が高いから上昇気流が発生しにくく雲が作られにくい。もともと降水量が少ないから地中の水分が少なく蒸発散も起きにくい」


「は、はは、そうっすね」


 異世界人のネイがどこから得た知識なのか分からないが、小難しいことを話した。


 だから、帰路のトッシュは若干、知恵熱を発していた。

 雨が降りにくいなら、家庭菜園がちょっと心配だなと結論付けて、脳を圧迫しそうな難しい理論はさっそく追い出した。


 トッシュ達が家につくと、さっそくパーティーホールで作戦会議が始まる。


 テーブルの上にポテトチップスがいくつも開けられ、大きなペットボトルが置かれ、全員に紙コップが配られた。

 お誕生日会か、カラオケでもしそうなノリだ。


 集まったメンツは、こんな感じ。


 ◇ トッシュ・アレイ。17歳の男。スキルは『ステータス編集』。他人のステータスも編集できるため、実質的に「触れたら勝ち」の近接戦闘特化マン。日本式評価によりC級冒険者扱いされているが、自他ともに認めるA級(相当)能力者。トッシュの過去を知るネイは「歴史上でも数人しかいないとされるS級認定してもよいのでは」と高く評価している。



 ◇ 弓美(ゆみ)麗音(レイン)。17歳。戦闘支援課には珍しい、日本生まれ日本育ちの日本人。誕生日の都合で、そのうちトッシュの年上になる。元トッシュの後輩で、今は嫁。肩まである髪の毛先は、イルカの尻尾みたいにぴょこんと左右に跳ねている。出社帰りなので、スーツを着ている。A級、もしかしたらS級にも達するかもしれない無限の可能性を秘めたスキルを使うが、評価手段がないためE級冒険者にとどまっている。


 なお、トッシュはレインのスーツ姿にムラムラしており、同時に「この魅力的なお尻のラインを見やがってクソ野郎どもが」とドルゴ以下せっかく集まってくれた男たちにすら軽く怒りを抱いている。

 そして、この「レインの尻エロいな」という感性は、先輩や仲間達から教わったフェチや萌えではなく、トッシュ自身が自ら『至った』癖だ。


 作戦会議中のトッシュは「レインはもうブラックシティを辞めたからスーツは要らないよな? この戦いが終わったら、スーツのまま、うへへっ」と考えていた。

 この戦い、いよいよ駄目かもしれない。



 ◇ 藤堂ネイ・ヴィー。元トッシュの上司。腰まで届く黒髪や豊満な胸よりも、腰に巻いた一〇本の妖刀の方が悪目立ちする美女。年齢不詳。30前後。ギルド外の能力者たちの間でも、近接戦闘最強と噂されている。

 かつて「触れたら勝ち確定」のトッシュと戦い、触れられることなく、刀をのど元に突き付けて勝利している。ネイ曰く「あの時は運よく勝てた。今なら、あいつは私の胸に見とれて隙だらけになるから、私が確実に勝つよ」で、トッシュもそこは認めている。

 実際、昔ならトッシュが勝てたかもしれないけど、今は戦闘中に「偶然を装って服を切って乳ポロリさせよう」とか「どさくさ紛れにおっぱい触ろう」とか邪念をよぎり、その一瞬の隙で敗北するだろう。



 ◇ 江藤(えとう)ドルゴ。元トッシュの同期。20歳。クマのような大男。B級能力者。ドラゴンに変身できる。飛べるし固いしパワーはあるが、火をふくような特殊能力はない。壁役になれるゴリゴリのパワーファイターなので、隊にいると安心できるタイプ。

 お互い照れくさくて認めないが、トッシュとは何度もミッションを共にして、同じイノシシの肉を食い、連れションした親友。



 ◇ (ロン)・イェーガー。元トッシュの後輩。レインの同期。言葉数の少ない無口な常識人。炎を操るC級能力者。彼も日本式評価だから低いが、B級冒険者相当の戦闘力はある。

 近接ファイターのトッシュやドルゴに指導されて「俺達を倒せるくらい、炎を使いこなせ」という方針で訓練を積んでいるため、遠距離戦闘はかなり得意。「遠慮するな。本気で来い」と言われているため、訓練外の日常でも、よく先輩達に軽口を吐く。

 仲のいい後輩だ。本人は照れくさくて認めないが、トッシュやドルゴのことを尊敬している。


 これが「ネイ派」や「ネイグループ」と呼ばれる、トッシュの先輩・後輩・同期で、よくつるむ「いつものメンツ」だ。

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