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66話 トッシュは離反者一行と合流し、メイドを自慢する

 買った物を荷車に載せて館に帰ろうかというところで、スマホに連絡があった。ネイ達にホムセンに寄ってもらい合流した。


 ネイ、ドルゴ、レインの他にも来てくれた人がいて、トッシュはちょっと嬉しかった。後輩のロンはもちろん、腐れ縁の堂本とか、オタク先輩の斎とか、サブカル先輩のシュウヤとかもいる。


 それに、女性が半分くらいいる。トッシュは内心で(俺、女子から嫌われてなかった! よっしゃ!)と思った。ちょっと顔がニヤついた。


 同居するんだからラッキースケベが起こるかもしれないと期待している。少なくとも『戦闘が始まる前に、ステータス編集で、みんなの防御力を上げておく! まずは女の子からだ! ――よし。女の子は終わったな。次は男たちだが、すまん。スキルパワーが限界だ……!』と言って、女子の体に触ることは可能だ。

 しかも嬉しいことに、一部を除き、社内でも胸やお尻が大きい子が来てくれた。

 そんなことを考えているトッシュは本当にもう駄目かもしれない。


「あー。みんな。ありがとう! みんなは初めてだよな。紹介するよ。俺のメイドのルクティ」


 みんな新居パーティーに来てくれたからシルとは面識があるが、ルクティは初対面だった。


 ルクティはメイド服(ドンキホ*テで買ったコスプレ衣装)を着ているだけのただの同居人であり、別にトッシュに仕えているわけではない。だが、トッシュはみんなをからかいたくて、敢えて「俺のメイド」と紹介した。男性陣が血の涙を長してうらやましがると期待してのことだ。


 かしこさ150ルクティは主の意図を正しく察して、スカートをつまんで丁寧にお辞儀をして「トッシュ様にお仕えするメイドのルクティです」と自己紹介した。


 それから、頬をうっすらと朱に染めて恥ずかしそうに「毎晩、ご主人様に、ご奉仕しています……」と小さな声で付け加えた。

 まるで、エッチなご奉仕をしているかのようなニュアンスだ。


 しかし、思ったほどの反応は得られなかった。全体的に、から笑いが起きただけだ。みんなルクティを無視したわけではないが、ソワソワしている。


 トッシュとルクティは(あれ。すべったかな?)と視線を交わした。


 いつもと変わらぬ様子で平然としているのは、ネイ。

 ドルゴはやや緊張している。

 その他の面々は、居心地悪そうに若干震えている。


 レインは、ルクティの発言に突っ込みを入れなかった。普段のレインなら「おぎゃああああっ!」と叫んでいただろうし、新婚ピンクモードの今なら「エッチなご奉仕をしているのは私です!」などと言って自爆していたかもしれない。

 しかし、レインもビクビクしている。


 シルは、ちょっと人見知りするのか、トッシュの後ろに隠れて、ケツ穴に潜り込もうとするかの如く額を押し付けて密着してくる。


 ブラックシティ離反者たちの様子がおかしいのは、反トッシュ連合のメンツが、少し離れた位置から、監視してきているからだ。駐車場の離れた位置に停めた車から、あからさまに「見ているぞ」感を出している。


 普段からお前らそんな車に乗っているのかよと突っ込みたくなるような、黒くてちょっとごつい乗用車だ。


 その中の一台から、ただものではない不気味な気配が漂ってくる。すでにA級能力者が来ているのだろう。殺気でちょっかいをかけてきている。


 その殺気を感じ取れる者達が、落ち着きをなくしているのだ。

 戦闘とは無縁の事務のネモや、姫子達すらおびえるのだから、相当強い気が漏れ出ている。


 戦闘とは無縁の人生を送ってきたが、異世界生活で割と精神が図太いシルとルクティは平気なようだ。もしかしたら、トッシュと一緒に生活しているせいで、さらに肝が据わったかもしれない。


 トッシュは震えるレインを抱きしめてあげたがったが、さすがに人目がある。不安を紛らわしてあげるという建前でいちゃつきたいが、さすがに難しい。


 仕方ないから、距離はたもったまま声だけかける。


「レイン。大丈夫。怯える必要ないって。これで怯えてたら、ネイさんが本気を出したら、失禁するよ。マジで」


 トッシュはレインの心をほぐそうとしたのだが、それをケツ穴の後ろで聞いていたシルが誤解する。


 シルがトッシュの横から出て、ネイに一歩近づき、ぼそっと言う。


「ネイは本気で戦うとおしっこ漏らしちゃうの? 戦う前にジュースを飲まないといいと思う」


「ふふっ。シル。違うよ。トッシュが言いたかったのは、私に殺意を向けられたものが失禁するという意味だよ」


「じゃあ、寝る前に、シルに殺気を向けて! いっぱいおしっこしたら、おねしょしない!」


 周囲に笑いが起こり、みんなの緊張がほぐれた。


 トッシュはシルの頭をなでてあげた。意図しないことだろうが、場の空気を良くしてくれたのだから、感謝、感謝。


「まあ、そんな警戒する必要ないでしょ。A級の誰が来ているのか知らないけど、俺とネイさんがいれば、この距離ならそう簡単に手だしできないだろうし」


「ふむ。私とトッシュがここに残って、残りはドルゴの纏めでトッシュの館に向かってもらおう」


 ということで、荷車をドルゴに任せた。もう、哀れなほど荷物まみれだった。築城時の馬車馬のごとき労働だ。


 トッシュはネイと一緒に、しばらく待機だ。


 自販機で飲み物を買い、ベンチに並んで座り、駐車場を見渡す。


「あ。今入ってきたのもギルド関係者かな? 強い一般人なのか、弱い冒険者なのか微妙に紛らわしい気配だなあ。あいつら、もしかして、このホムセンを待ち合わせ場所にしてない? 買い物しないのに駐車場を使うのは迷惑客だし、店員に言おうかな」


「つまらない嫌がらせはやめておけ。それよりも、五大ギルドすべてのA級冒険者が来ることを想定して、作戦を立てようか」


「あ、はい。じゃ、公式サイトでもチェックしますか」


 トッシュは、レインとのツーショットが待ち受け画像にしてあるスマホを取りだした。

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