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60話 古巣ギルド崩壊寸前。最強のネイはギルドを辞める

 日人はにやりと笑う。トッシュ討伐任務を命令すればネイが何かを言ってくるのは、予想通りだった。


「ブラックシティの戦闘支援課課長補佐として、お前が先陣を切れ」


「断る。急なことなので、正式な書類は後回しになるが、私はギルドを辞める」


「くくくっ。なるほど。そう来るか」


 ギルド唯一のA級冒険者にして最高戦力が辞めるというのに、日人は余裕たっぷりだ。なぜなら、自分がすでにA級相当になっているはずだし、他の五大ギルドにもA級冒険者がいるからだ。


 自分の部下のくせに自分より優秀なやつが辞めてくれるのだから、日人的には願ったりかなったりだ。

 これで、ネイがトッシュ一派になって敵対してくれれば、戦闘のどさくさに捕まえてレ*プできる。

 日人はもともとロリコンだったが、ギルドでネイと出会って性癖を捻じ曲げられ今は巨乳好きだ。鬱屈した思いがある。

 日人は過去、社内で何度も何度もネイの豊乳を見て性的に興奮していた。

 異世界エリアに行ってくれれば犯し放題だ。


 報酬の取り分が減るのに日人が他の五大ギルドに声をかけたのは、他でもなく、ネイの裏切りを想定してのことだ。

 彼は、ネイがトッシュの新人時代に面倒を見たことを知っている。だから、裏切りを想定していた。さらに、トッシュの同輩や後輩も裏切るだろうから、そいつらとまとめて戦うために、他ギルドからの援軍を用意したのだ。

 しかもこざかしいことに、「トッシュの知り合いが全員裏切った場合」の3倍の戦力を用意している。


 ネイが視線を集めたため、一瞬だけフロア内が静かになる。


「ミッションの中止はないのだな?」


「ああ。すでに他のギルドでも人員を用意して、出撃準備をしていることだろう。くくくくっ」


「そうか」


 ネイは日人に背を向ける。

 これは離反の意図を表し、かつ、「お前が背後から襲撃しても私には傷一つつけられない」ことを無言で示すことになる。


 フロアの視線を浴びつつ、ネイはゆっくりと自席近くに戻る。


 ネイの離反が確定的になると、フロア内が騒がしくなってきた、ネイはそれを無視し、彼女が面倒を見てきた後輩たちを順に見る。


「私は新しくギルドを立ち上げ、これから、トッシュの護衛任務に就く。給与を支払うあてはないが、ギルドメンバーは募集中だ」


 ネイは自席にあった鞄を持つ。もともと私物は少ないし、普段から災害や襲撃に備えて、荷物はすぐに持ち出せるよう纏めてある。


「ネ、ネイさん、待って」


 レインは身の振り方を迷う必要がないから、私物を鞄に放り投げるようにして次から次へと突っこみ始める。新ギルドに加入するかどうかはいったんおいておいて、トッシュの元に行くことは確定で覆らない。


 事務のネモも自席に戻って私物をまとめ始めていた。


「おいおい、お前ら。俺はどうすんだよ」


 ドルゴがフロア中に響くような大声で両腕を広げ、荷物でごちゃごちゃになった自分の席をアピールする。


「……フィギュア燃やしたらどうですか」


 比較的机が綺麗な後輩ロンが荷物を纏めながら、小声で突っ込みを入れた。


「あ? 無理に決まってんだろう」


 課内で最も声の大きな男が、最も無口な男にすごむ。

 無口でいられる状況ではないので、ロンはドルゴを無視し、ネイに声をかける。


「ネイさん。給料のあてはないって言ってましたけど、本当です? 少しくらいあてはあるんですか?」


「過去に世話になった人を訪ねて、仕事がないか聞いて回れば、多少は、な。だが、期待はするな」


「うっす。まあ、僕の発火能力は異世界なら引く手あまただろうし、再就職には困らないかな」


 片づけをしながらロンは、隣のリオンがむっつり顔で腕を組み椅子に座っていることに気づいた。荷物を片付ける様子がない。


 別に派閥間抗争があるわけではないが、戦闘支援課はだいたい大きくネイグループと田山(たやま)グループの2つに分かれる。


 ネイグループみなされているのは、次の者たちだ。

 ・ネイ:ギルド創設メンバー

 ・トッシュ:ギルド初の新人社員(経験者)。ネイの部下。

 ・ドルゴ:同上。

 ・レイン:ギルド2年目に入った新人(未経験者)。トッシュの1つ後輩。

 ・ロン:同上。

 ・リオン:同上。


 これがネイグループと呼ばれる、先輩後輩関係によってつくられたグループだ。新人研修時のつながりで、自然とグループっぽく纏まった。


 もう一つ、田山(たやま)(すぐる)という男がいて、彼の後輩と、その後輩で田山系のグループがある。


 ブラックシティはまだ3年目のギルドだし、課員数も少ないから、同じミッションに就いた者や、仲良しの者や、座席の位置関係で、なんとなくグループが分かれているのは自然なことだ。


 一類(日本生まれの日本人)の田山は、わりと金星一派だ。同じ純日本人と気があうというより、異世界人に対して偏見を持っている。彼は日本人的な価値観で仕事をしているから、トッシュのような自由気ままなタイプのことは好きじゃない。


 ネイは異世界生まれ異世界育ちなので、金星とはもともとそりが合わない。部下もわりと問題児というか、異世界人が集まっている。ネイ派の純日本人は、日本生まれ日本育ちのレインだけだ。

 これはレインが高校時代に、就業研修(授業の一環としてブラックシティに2カ月だけ来た)の時に女性同士ということでネイが面倒を見て、そのまま就職したからだ。

 つまり戦闘支援課には、異世界人が集まったネイグループと、日本人が集まった田山グループがあるということ。


 つまり現代日本人の感覚からするとネイグループは変わり者が集まっていることになる。

 そんな、「ネイ派」のはずのリオンが、ひとりだけ離反せずに残ろうとしている。

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