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56話 ネイの新ギルド立ち上げ計画

 急なことだしお金もないから結婚式はあげられない。だが、トッシュと違ってレインには両親がいるから挨拶は要る。

 やること盛りだくさんだし、役所への届け出は後日ということにした。


 しかし、ネイが立会人となり、異世界のルール的にはトッシュとレインは結婚した。


 神社から境界エリアへ帰る車内で、シルが助手席から外の景色を楽しみ、レインは後部座席でトッシュに寄り添っていた。


 脳内はドピンクだ。

 勢いとノリとはずみで今夜セッ――すると宣言してしまったが、もしそうなら、避妊具的なものがいるのではないか。トッシュはそういう知識がないだろうし、自分が主導しなければ。

 まずは私がトッシュのアレを口でピーして、それから、ピーをピーするよう誘導して、私のピーを優しくピー、ピー。


「ぐへ、ぐへへ……」


「な、なあ、レイン。ステータス異常はないんだよな。なあ?」


「えへへ……。そんなところチューチュー吸っちゃって、先輩の方が赤ちゃんみたいでちゅよ~」


「お、おう……」


 レインの妄想は続く。

 トッシュは子供を欲しがるかもしれない。なら避妊は不要だ。しかし無職で子供を育てられるだろうか。自分はいつまで仕事を続けられるだろうか。現在住んでいるアパートは出て、トッシュの館で一緒に暮らすべきだろうし手続きはどうしようなどと、いろいろと考えている。


 だから、車は一瞬で境界エリアに到着した。


 とりあえず食料はいるだろうということで、行きつけのスーパー(ホームセンターと併設しているところ)に行き、食材を買った。

 その際もレインは、一緒に暮らすんだからおそろいのマグカップを買った方がいいのかな、歯ブラシとか下着とかは家から持ってくればいいかな、ううん、ダメ今夜のために買っておかないと、先輩はメイド服が好きそうだしそういうのを買った方がいいのかな、などと妄想している。


(スーパーの下着売り場に、先輩が興奮するようなエッチなの、売ってるかな……。売ってないよね。しまったあ……。ダメ。下着に頼ったらダメ。テ、テクで先輩を魅了するんだ……!)


 妄想続行により、あっという間にスーパーの外周部に位置する生鮮食料コーナーは見終わってしまった。今夜どこまでも行為をするのかは分からないが、少なくとも舌がとろけるまでキスはするから、真ん中の方で歯ブラシを買わなきゃなどとレインは思った。


 なお、買い物自体はネイが面倒を見てくれているので、彼女の方がよほどお嫁さんポイントが高い。


「お菓子!」


 日本の近くで生活する二週間でお菓子の味を覚えたシルが、トッシュの手を引いておねだりをし始める。


「分かった。分かった。1個だけだからな」


 トッシュがシルにひかれてスーパー中央へ向かう。

 レインもそのあとを追おうとするが、ネイがそっと近づいてくる。


「レイン。浮かれている場合ではないよ」


「は、はい」


「せっかく食材を売っているところに来たんだ。今日は君が夕食を作るんだ」


「……!」


「一人暮らしをしているんだから、自炊はしているんだろ?」


「は、はい。切って焼くくらいの簡単な料理しかできませんけど、一応、自炊しています」


「炊飯器がないから米は炊けない。どうする。ホームセンターのキャンプ用品エリアなら飯ごうを売っているぞ」


「た、確かに!」


「車内でシルちゃんから聞き出したが、まだカレーライスを食べたことがないそうだ」


 ネイが押すカートのかごには、にんじん、じゃがいも、玉ねぎ……明らかにカレーを作るための材料が入っている。


「ネイさんのおっしゃりたいこと、分かりました! 私、ルーを探してきます!」


「ああ」


 それからホームセンターにも行った。


 その時、ネイだけ別行動をし、ある売り場で、ある商品を探した。商品タグに書かれたサイズをスマホで撮影したり、カタログをもらったり、店員に尋ねたりした。


 ネイは、もうギルド『ブラックシティ』はダメっぽいし、いざとなったらトッシュの館の一階にあるパーティーホールを借りて、そこで新しい冒険者ギルドを立ち上げるのはどうだろうかと考えている。


 まだ本格決定していない「一応考えておくか」程度の案だが、ネイは下準備を進めていく。仕事に必要なものはホームセンターで手に入りそうだ。

 異世界エリアは宅配サービスが使えないから、机のような大きいものは人力で輸送する必要があるため、近場で買えるかどうかが重要になってくる。


 オフィス用デスクは売っていなかったが、カタログ番号を伝えればお取り寄せ可能らしい。ネイは、意外となんとかなりそうな予感を抱いた。


 境界エリアでネイは、トッシュ達と別れて帰宅した。夜、事務のネモと通話し、「トッシュの館で新ギルド計画」を話しあった。


 問題は、電力だった。

 しかし――。


「ん-。でもネイさん。もともと、ブラックシティって異世界で立ち上げたんですよね? 電気はない状態でしょうし、なんとかなるんじゃないんですか?」


 というネモの言葉が、ネイを後押しする。


「確かに。私も電気やスマホが当たり前になっていた……。そうだな。ギルドは最初は何もなかった。それが当たり前だった。たった3人が集まって始まったんだ……。モンスターに襲われている人をたまたま見かけて救った。その時に助けた相手から『後日お礼にうかがいたいから、ギルドの名前を教えてください』と言われた。それが切っ掛けで、その場でギルドができたんだ……」


「そうですよ。日本だと会社を作るために手続きが要りますけど、異世界なら人がいればギルドは作れます」


「ああ。計画を練り直そう」


「ええ。じゃんじゃん話していきましょ!」


 こんな感じで、トッシュの知らないところで「トッシュの館で新ギルド計画」が急速に進んでいく。

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