33話 巨乳エッチ下着ゾンビメイドの再生を試みる
トッシュのスキルは触れた物のステータスを編集することが可能だ。
人の腕力を編集したいときは腕に触れるのが手っ取り早い。脚に触れていても腕力や視力を編集できるが、ステータスウインドウをいっぱいスクロールして目的のステータスを探さないといけないため、面倒だ。
基本的に状態異常のステータスは、頭か胸に触れると、探しやすい。
「試してみるか」
トッシュは立ち上がり、ゾンビメイドの頭に触れた。
「おぎゃああああああああっ!」
レインが叫び両手でトッシュの肩を突き飛ばす。
「うわっ」
「きゃっ」
突然の大声にとばっちりをうける形でシルが悲鳴を上げて涙ぐんだ。
「な、なな、何やってるんですか、先輩!」
「ゾンビのステータス異常を治そうとしただけだが?」
「初対面の女の子の髪に気安く触ったら駄目です!」
初対面の女の子:腐敗しており髪は半分くらい抜け落ちているゾンビ。
「お前、俺のスキルの詳細、知ってるだろ。状態異常は頭に触れると治しやすいんだよ」
「それはそうかもしれないですけど!」
「頭が駄目なら、胸を触ることになるが……」
「駄目に決まっているじゃないですか! 触るなら手……は駄目、脚も駄目……。お腹も駄目……。……肩くらいにしておいてください」
「肩こりのステータスを治せとでも言うのか……」
しかたないからトッシュはゾンビの肩に触れる。
「お。このゾンビ、胸は大きいけど、肩こりはしてないな」
「先輩、セクハラ。マイナス1ポイント」
なお、レインは小柄でスマートなので肩こりとは無縁だ。
「ステータス異常は何処かな……っと」
トッシュはステータスウインドウをスクロールしていく。
「あった……。予想的中。このゾンビ、マジでステータス異常ゾンビだ……。治しても大丈夫なのかな、これ」
「どうなるんでしょう」
「ねえ、何を悩んでいるの? 治してあげて」
シルがきょとんと首を傾げる。
が、そう簡単な問題ではない。
「このゾンビメイドが雑魚モンスターなら、ステータス異常を治したらそのまま死んじゃう可能性がある」
とトッシュが説明すると、彼よりファンタジーRPGに詳しいレインが説明を引き継ぐ。
「ゲームだとゾンビに聖水をかけたら一撃で倒せるみたいなことがあるので、先輩のスキルでステータス異常を解除したら相手が死ぬ可能性があるんです」
「そういうこと。それに、流した血が戻るか分からないから、人間にしたら大怪我をしている可能性もある。ステータス異常を治すことは出来るけど、正直、何が起こるか分からない」
「本人に聞けないの?」
「本人に?」
「口のステータスをアップしたら会話できると思う」
「面白い発想だな。さすが、若い……。でも、口のステータスを上げても無理だと思う。早口になるとか食べるのが早くなるとかそういうステータスしかないだろうし。かしこさを上げた方がまだ可能性はあるか?」
試しにトッシュはゾンビのかしこさのステータスを表示してみた。
2。
低い数値であることは間違いないが、いったいどれだけ上げればいいのか分からない。
トッシュ自身はかしこさ20だ。
他人のかしこさは究極の個人情報だから見たことがない。
もし見てしまったら、トッシュの価値観が揺らぐかもしれないから、なかなか怖くて他人のかしこさは見れない。例えば、シルの賢さが21あったら、トッシュはへこむ。
「とりあえず、かしこさを20にして、声の大きさを元にもどすか」
やってみた。
「うー」
「駄目だ。うーしか言えないっぽい」
「うー! うー!」
「あれ。でも先輩、なんか、動きが遅くなりましたよ。私達を襲うのをやめて、立ち止まってませんか? それに、うーうーの言い方がちょっと違う気がします」
「まじで? こっちの言葉を理解してる? ステータス異常のゾンビを解除してもいい? はいなら右、いいえなら左を見て」
「うー」
ゾンビは正面を見たままだ。
「あれ? 通じない?」
「先輩、もしかして、ゾンビさんから見て右か左か、先輩から見てかが分からないのでは?」
トッシュは『お前、俺より賢さ高いよな……』と心の中で思った。
「うーぃ」
「ほら、これは、イエスのうーですよ。若干、フランス語のOuiっぽく聞こえます。イエスという意味ですよ!」
「そうか? じゃあ、ゾンビを解除していいなら、右手、駄目なら左手を挙げて」
「うー」
ゾンビはぎこちなく両手を挙げて、降ろして、上げた。
「んんん? やっぱ、こっちの言葉を理解できてない?」
「はいでもいいえでもないということでは? ゾンビさんにも判断できないのでは?」
「うー」
ゾンビが「はい」の右手を挙げた。
「ゾンビさんのかしこさをもっと上げたら?」
と、すぐに気付いて提案するシルの方が、もしかしたらトッシュよりもかしこさが上かも?
「うーん。このゾンビのかしこさの上限値353だけど、そんなに上げたら何が起こるか怖いんだけど、どれくらいにしよう……。とりあえず、100にしてみるか」
やってみた。
「うーう、う、うう、うーうー、うーう、うー」
「駄目だ。やっぱ喋れないか。賢さじゃなくて喉に問題があるのか?」
「先輩、これ、筆記具を寄越せっていうジェスチャーでは?」
「うー!」
メイドゾンビは、もう、こっちの方が頭いいからこっちと意思の疎通を図ろうとばかりに、体をレインに向けた。
「うーう、う、うう」
「やっぱり、何か書くものがほしいんですよ」
「筆記具なんてあったかな……」
「シルのスケッチブックと色鉛筆があるよ!」
昼間の買い物内容をすぐに思い出すから、やっぱり、シルの方がトッシュよりかしこさが上かもしれない。
何はともあれ3人はメイドゾンビと会話をするために、玄関横の来客待合室へ向かった。
果たして巨乳でエッチな下着を穿いているメイドゾンビは人間に戻ることが出来るのだろうか。
当然、巨乳でエッチな下着を穿いているメイドが人間に戻ってしまえば、レインにとっては望まぬ展開になるのだが……。
レインはまだ、未来で何が起こりうるか、考えてもいない。




