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28話 女だけ治療してあげる。カス男は血まみれ放置ざまぁ

 正面から車内を覗いてみる。フロントガラスが割れてなくなっているから、中は見やすい。

 運転席の男と助手席の女は血まみれだが生きていた。


 トッシュは声を冷たく低くし、圧をかける。


「日本人だよね? ここなら俺たちを殺しても犯罪にならないから襲ってきた? だったら返り討ちにあうのは自業自得だからな。ここ、電波届かないから救急車は呼べないよ。二人だけってことは殺人ツアーじゃないよね? 異世界ガイド会社が助けに来てくれる? それとも日本人っぽい服装だけど異世界人? だったら、俺の流儀でお前達に報復するけど、どうする?」


「う、ううっ……。た、たすけて……」


「て、てめえ、よくもやりやがったな。俺を誰だと思ってる。パパに言いつけてやる……!」


「お。意外と元気だな。で、俺はお前たちに何人(なにじん)か聞いているんだ。答えろ。日本人なら見逃す。スマホが使えるところまで自力で行って救急車を呼べ。自首するか医者に通報されて警察につかまって法律で裁かれろ。異世界人だったらオークにお前達を売る。男は喰われるだろうが、女は上手く性奴隷になれれば食われずに済む。どっち?」


「た、たすけて……」


「へ、へへ。晒してやる。てめえ、日本じゃ生きていけねえぜ」


 男が震える手でスマホを構える。


「いや、お前、馬鹿か。異世界人にネットで晒すって脅しが通じるわけないだろ」


 トッシュは男のスマホを奪い、目の前で握りつぶした。


「なっ、何しやがる!」


「少しは頭を使えよ。俺から見たら、お前たちは価値観がまるで違う異世界人だぞ。お前が謎の道具を取り出したんだから、俺あ奪って破壊した。さらにお前たちがどんなスキルを使ってくるか分からないから、確実に殺しておきたい。それが、俺の考え。俺はお前たちを殺す寸前だ。それを踏まえて答えろ。お前達は何人(なにじん)だ」


「助けて! 許して! いやあああっ!」


 女の方な泣きながら叫んだ。

 男の方は顔を真っ赤にする。


「うるせえ! 早く救急車呼んで来いよ! ぶっ殺すぞ! 異世界人の土人が偉そうにしてんじゃねえよ!」


「うーん。会話不能。しょうがない」


 トッシュは二人の頭部に触れてステータスを確認する。二人とも日本人の大学生だった。『ステータス異常:麻薬中毒、酩酊、出血……などなど』だった。割と同情の余地はない。


 急にどうでもよくなった。

 彼らのために敢えて異世界人の恐怖を教えて、馬鹿なことを繰り返さないように脅してあげてたのに、どうでもよくなった。

 相手する価値がない。


「あー。日本人か。じゃあ、いいや。見逃してやるよ。こっちのルールだと俺がお前たちを殺しても合法なんだけど、『助けて』って命乞いをする女は殺せない」


「ふ、ふざけんな……!」


 男は麻薬で状況把握能力が低下しているのか、まだイキッていた。


 女の方は泣きながら「助けてください。許してください」を繰り返している。


 トッシュはもう男を無視し、まだ更生の余地がありそうな女に優しく声をかける。


「もう悪さするなよ。ネットで『異世界人は殺しても合法です』とか『あなたが殺されても蘇生魔法で生き返ります』とか見たんだろうけど、真に受けたらダメだから。普通に違法だから。こっちにだって法はある。あと、実際の蘇生は死体の状態次第だけど1億以上かかるし、頭を食われて消化されたら蘇生不可能だからな」


「助けてください。許してください。ごめんなさい……」


「あー、はい。あと……」


 チラッ。


 女はショートパンツとTシャツというラフな格好をしている。二の腕とか太ももとか丸見えだ。なんなら、ショートパンツは異世界人が着ている服みたいにボロボロで破れていて、白いパンツがちょろっと見えている。もちろん、彼女が貧乏なわけではなく、そういうファッションだ。


 いままで、トッシュは人を殺すのをためらわない「アウトローな異世界人」を演じていたが、急にしどろもどろになる。


「え、えっと、俺のスキルで簡単な治療はできるけど、ど、どうします? HPの回復はできないけど、骨折や出血を止められるから、痛みが消えるし、現状より重傷化しなくなる感じなんだけど。えっと、その、患部に直接触れる必要があるんだけど……」


「な、治してください。ごめんなさい。許してください。助けて。治して」


「わかった。えっと、痛いのはどこ?」


「首と、胸と、脚です……許してください。助けて。助けて」


 交通事故だから、まあそうなるわなって感じのところを負傷しているようだ。


「む、胸……。ごくり……」


 ネイと比べるほどではないが、一般的にはかなり大きい胸だ。手に収まらないかもしれない。


「心臓に問題があったら大変だから、ね。そ、それじゃ、失礼して」


 トッシュは助手席のドアを引っぺがし、女子大生の胸を触る。

 シャツの上からではなく、手を突っ込んで、ブラジャーの端から指を突っ込むような触り方だ。


 いや、別に他の部分に触れて、ステータス画面をいっぱいスクロールすれば、いずれ胸や心臓のステータスも表示できるのだが、事態は急を要するかもしれないから、直接胸を触る方が早いのだ。


 エロいことしたいという下心は8割くらいしかない。


 もみもみ。


 揉む必要はないが揉んだ。ボーガンを撃ってきた相手だし、生乳を揉むくらい許されるはずだ。


 もみもみ。


 許した。トッシュは完全に女子大生を許した。むしろ、『ちょっと調子に乗ってしまったか』と反省している。逆にこっちが許しを請わなければいけない気がしてきた。


 もみもみ。


 しっかり揉みつつ、ちゃんと肋骨を治した。


「え、えっと、心臓自体は事故のショックでびっくりして鼓動が早くなっているだけで、大丈夫。肋骨は折れていたけど直した。だから、死ぬことはない」


「す、すごい。楽になりました。あ、ありがとうございます。……! 痛ッ…」


「あー。他の部分が治ってないから無理しないで」


 こちらこそありがとうございます。でへへ。

 トッシュはしっかり、エロい。


 シャツから手を出して首に触れる。


「首は。あー。折れてますね。治します。顔にガラスの破片が刺さってるけど、これも、傷跡が残らない感じで治して……と」


 首の骨折やむち打ちを治しつつ、ついでにステータス異常の麻薬中毒も治した。


「最後に太もも」


 ごくり……。

 おっぱいほどではないが、エロい。


 ぺたっ。なでなで。さわさわ。


「あー。折れてる。骨を繋げました。どうです?」


「はい。すごく楽になりました。ありがとうございます。それに、なんだか頭もすっきりして……。私、なんて馬鹿なことをしたんだろう……」


「余計なお世話かもしれないけど、麻薬なんてやらない方がいいですよ」


「はい。今回の件で懲りました……。もう彼とも付きあいません」


「ん。それがいい。無理やり麻薬を吸わされたとかなら、ちゃんと警察に相談して」


「はい」


 トッシュが退くと女性は車を降りて、少し歩いて脚の調子を確かめる。


 その間、エッチな役得にあずかれて上機嫌になったトッシュは、にやにやした顔を隠し、男の方に声をかける。


「お前も治してやろうか?」


「だ、黙れ。誰がお前なんかに……! パパに言ってぶっ殺してやる!」


「あー、はいはい。パパに頼んで武装ヘリ10機くらいもってこい。それでも足りんと思うけど、俺を焦らすくらいはできるぞ。俺を殺したかったら、ゴ*ラやガ*ダムを連れてこい。俺がガチった時の強さの比較対象はお前らの世界のフィクションだからな」


 フカしじゃないことを示すため、トッシュはオフロード車を軽々と持ち上げて、揺さぶった。


 車をおろすと、男は青ざめていた。


「これに懲りたらこのあたりで悪さはしないことだ」


 トッシュは女子大生の方を見る。


「自力で帰れそう? 日本エリアの方角分かる?」


「は、はい」


「ん。じゃあ、俺はもう行くけど、どうにもならんくなったら発煙筒を焚いて。その車に積んであるでしょ? そん時はまあビジネスとしてお金を貰うけど、1万円くらいで日本エリアに連れていくよ」


「分かりました。あの。先ほどは本当にごめんなさい」


「あー。ね。まあ、更生してください。麻薬成分は完全に抜けているから病院に行っても大丈夫ですよ」


「何から何まで本当にありがとうございます」


 トッシュは手を振り、ちょいエロ女子大生に背を向けた。

 こちらこそ、おっぱい揉ませてくれてありがとう!


 知り合いの女性の前では性に無関心なフリをしているトッシュだが、実際はエロいのだ。


 おっぱい柔らかかったなあとニヤニヤしながらシルのもとに戻り「なんでニヤニヤしているの?」と聞かれた。


「なんでもないよ」


 家に向かって歩きだす。


 トッシュはシルの胸をちらっと見てみた。ぜんぜん、揉む場所がない。


「ねえ、何してたの?」


「ん-。若者、といっても俺より年上っぽいけど、まあ、異世界について教えてあげた。まあ、とにかく知らない人がいて、何か変だと思ったらシルはクマスーツね。で、大声で俺を呼んで。シルが大人になるまでは、お互い、声が届かないところに行かないよう気を付けよう」


「うん! ずっと一緒にいてあげる!」


 暫く歩き、家に着いた。


 てっきりみんな先に昼食をとっているかと思ったら、トッシュ達の到着を待ってくれていた。

 ちょっぴり嬉しかったから、トッシュの「いただきます」は普段より大きくパーティーホールに響いた。

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