表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/49

22話 和気あいあいと朝食をとる

 トッシュとシル、元上司のネイ、後輩のレイン、ロウ、同期のドルゴ、計6人はパーティーホールの隅にあるテーブルを囲んでいた。

 残りの9名は前日の内に帰っている。


「美味い! 昨日のピザがなんでこんなにパリパリなんだ……! 口の中に入れた瞬間、なんか、こう、ピザの味が口の中に広がる! 俺のスキルで味変する必要がない!」


「加水と火加減だ」


「それだけで焼きたてに戻るの? マジで、ネイさん、うちに永久就職してくださいよ」


 トッシュとネイが台所でのノリを続けると、それを聞いたレインが「んがっ」と口を大きく開いた。


「ど、どど、どういうことですか?! 永久就職ぅ?!」


「トッシュは料理を作る人間がほしいらしい」


「わ、わたし、おにぎり握れますよ!」


「すげえ。たったひとことで料理スキル皆無なのが分かる」


 トッシュが女性陣と会話していると、正面のドルゴがピザの1カットを僅かふたくちでペロリと平らげてから口を開く。


「おいおい、トッシュ。分かってやれよ」


「分かるって何を?」


 ドルゴは両手を上に向けて、大げさな『呆れてます』アピール。彼はレインがトッシュに惚れていることを察しているし、今までも何度か陰ながら彼女を支援していた。トッシュが朴念仁すぎて、すべて徒労だったが……。


「はあ。リオンが昨日のうちに帰ってくれて良かった」


「なんでリオンが出てくるんだよ」


「お前が幸せになるのが気に喰わねえから言わねえ」


「あ? ぶちのめすぞ」


 朝食を取りながら、思い思いにわいわいと過ごした。


 話題に取り残されがちなシルに、レインが気を遣って話しかけているのを見て、トッシュはかつての後輩を改めて見直した。


(ああ、こいつ、人に気を遣えるんだなあ)


「な、なな、なんですか、先輩。私に熱視線を送ってません?!」


「人がちょっと見直しかけてたのに、そのどもる癖、なんなの?!」


「だ、だってえ、先輩が見つめてくるから……」


 レインが可愛らしく肘を畳んで「きゃっ」と腰を捻った。


 その様子を見て頭にはてなマークを浮かべるトッシュ。

 その様子を見てドルゴがでっかい溜め息。


「はぁ、ほんと、リオンが居なくて良かった。トッシュ、お前、そのうち刺されるぞ」


「なんでだよ。そうだ。ドルゴ、ロン、レイン。せっかくだから、この洋館を掃除していってくれよ」


「はあ、なんで俺達が?!」


 ドルゴの大声の陰で、それまで黙々と朝食をとっていた無口なロンが、「……給料でるんですか?」と、ぼそっと呟く。


「やります!」


「レイン、いいこだなあ、お前。ゴリラと根暗野郎は見習ってほしいぜ」


「えー、えへへ」


 トッシュの発言に、ロンの眉がピクッと跳ねる。彼は寡黙なだけで、けして、内気でも弱気でもない。


「……ドルゴさん。リオン、呼びます?」


「そうだな。糞トッシュがかつての上司権限を乱用して、レインに洋館を掃除させていると伝えろ。飛んでくるぞ」


「……っす」


「おいそこのゴリラと根暗、小声で何か悪巧みしてないか?!」


「俺達は正義だから、悪巧みなんて出来ないさ。なあ、ロン?」


「……っす」


「怪しいな。まあ、いっか。よし、シル。大掃除だ」


「うん!」


 席を立ったトッシュとシルの背中に、ネイが待ったをかける。


「掃除は私達に任せなさい」


「え。さすがにネイさんに掃除してもらうなんて、悪いですよ」


「身の回りの品で、不足しているものがあるだろ? シルと買い出しに行ってくるといい。シルの物を揃えるなら、君たちが行くしかない。遠慮するな」


「先輩がそう言ってくれるなら」


「レインもついていきなさい。女性が必要だ」


「はい!」


 こうして、ネイの勧めにより、トッシュ、シル、レインの三人は日本エリアへと買い出しに行くこととなった。


 最もはりきっているのは、猪突猛進娘のレインだ。

 家庭力のあるところをトッシュに見せつけて、異性としての評価を上げたいと思っている。

 果たしてどうなることやら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ