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17【夜の捕り物二人目】

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17【夜の捕り物二人目】


 「お兄さんおおきにな」

お座敷遊び用の茶屋に戻って店番の男衆に声をかける

「お瑠璃ちゃん」

「えびす屋さんたちはまだお座敷におるんか?」

 履物が減ってるけど。

「連れてた遊女の店に行ったみたいや」

「えびす屋さんに戻ったわけじゃないんかな」

「たぶん」

「小まめ姐さん帰りまひょ」

 納戸の扉をするりと開けながら静かに声をかける。

「う、うん」

「二人とも送るで。はい三味線」

「大丈夫や。三味線おおきに」

「ほな、この提灯持っていき」

 手元のたばこ用の火鉢からろうそくに火をつけて提灯に入れてくれる。

「助かるわ」


 夜遅くになると長屋へ行く道への門が閉ざされている。その管理をしていくれている木戸番に何とかお願いして長屋に寄り、三味線を置き、自分の着物を着換えて、小まめを送りに一緒に通りに出て、彼女が席を置いている置屋まで送る。


「玉むし姐さんとあのお侍さんはどうなったん?」

「玉むし姐さんは、お医者に行かはったわ。お侍さんは・・・お奉行所に・・・」

「そう、お医者に行かはったんやな。よかった」

「そうやな」



 小まめを送り届けて、一人で通りを歩いていると、七兵衛がやってきた。

「瑠璃ちゃんお疲れさん」

「七兵衛はんこそ。

 それで、玉むし姐さんはどうなりました?」

「背中の刀傷と、肩の傷の手当をしてもらって、今は奉行所の牢に」

「そう」

「阿芙蓉が切れたら暴れるやもしれんから、医者には置いとけへんって。

 それから、百沙衛門様から伝言で、明日、えびす屋に中を検めるために入るから、よしの屋を閉めといてと」

「分かった。言うとくわ」

 伝えるべき用件が終わっても七兵衛は隣を歩く。

 瑠璃がいくら強くても、女の一人歩きはやめた方がいいのである。


 よしの屋が見えてきたが、その前に人影がある。人影の前がすこし明るい。

「ちょ、あれ火付け・・・っ」

「あれは福山下(ふくやました)はんやな。七兵衛はんあそこの天水桶を」

「わ、わかった」

 シュッ トスッ

「うっ」

 七兵衛が動くと同時に、瑠璃も右腕を振ると人影が膝をつく。


「あんた、なにしてはんねや!」

 七兵衛が叫びながらえびす屋の閉ざされた扉に桶の水をぶっ掛ける。

 続いて瑠璃も取ってきた桶の水をぶっ掛ける。

「ふう、間に合ったわ」


「お、お前は」

「さて、福山下はん」

「な、なぜ拙者の名前を」

「さっき、うちの唄ぁ聞いてくれはったやん」

「え?あ、お前はさっきの芸舞妓の・・・」

「大小曽川はんに続いて貴方迄、地に落ちたお侍さんは増えてますのか?」


「こ、この」

 福山下が刀を抜く。しかし足に刃物が刺さったままで踏ん張り切れていないのが分かっている。

 普通、女じゃなくても町人なら、怪我をした相手だと分かっていても侍に刀を向けられたら、すくんで動けなくなるものだ。

「芸舞妓が、武士にたてつくとどうなるか分かってるか」

「どうなるかって、福山下はんは、道場の稽古でもそんなに強うありまへんやん」

「なにを、このーおりゃーっ」


「よいしょ」

 どさーっ


 刀を振りかぶってきた福山下の懐に飛び込んで、襟と袴の帯を掴むと投げ飛ばす。

「今日はこんなんばっかりや」

「ははは、瑠璃ちゃんやっぱり強いわ」

 と、言いながら七兵衛が縄を瑠璃に渡す。

「え?るりって?」

 つぶやく福山下を無視して、七兵衛に、にっこり笑う。

「七兵衛はん、おおきに」

 七兵衛は自分が動けば邪魔になるのが分かっていたので、じっとしていた。

「く、くそ離せっ」

「離すわけないやん、あんた、火付けしたんやで。

 そんで・・・」

 福山下を縄にかけながら、その岡っ引きに問いかける。

「番屋には誰がいるん?」

「同心がひとり・・・ああ、来てくれたわ」

「え?また百様?とあの袴の人は与力?」

「あれ、ほんまや藤岡東次郎様や(百様の弟の)」


「百様、奉行所行った後、お屋敷に帰ったん違うの」

「帰れるわけないだろう」

「それはお疲れさんです。東次郎様も来てはったんですか」

「瑠璃ちゃんお疲れ。大変やったな」

「危ないとこやってん」


「ああ、火付けを防いでくれたのか」

「それにしても、福山下はん、大小曽川はんと一緒にえびす屋はんに雇われる話しをさっきお座敷でしてたんやけど、自分らで火ぃ付けるとか。

 なんやろ、この中(えびす屋)やばい物いっぱいあるん違うか」

「そうかもしれん。大小曽川の調べはまだだ。明日の検めの方を先にと思って」

「なあ、百様、えびす屋の旦那はこっちに帰ってきてないんや。火ぃ付けるつもりやったから、女郎屋さんに行ってるんかもしれん。居てたらいいんやけど」

「分かってる」

「そっちは今身柄を押さえに行ってるから、安心して瑠璃ちゃん」

 東次郎の馴れ馴れしさは、瑠璃を自分と対等に扱ってるからだが、岡っ引きの前ではやめてほしい。後日、注意やなと思う心とは違う言葉を出す。

「さすがやな」


 瑠璃が縛った縄を掴んだまま東次郎と七兵衛が福山下をしょっ引いていく。

「今日は疲れただろう。風呂入りに来るか?」

「ありがたいけど・・・明日の事、よしの屋はんに言わなあかんし」

「そうか、じゃあ今日はもう早く休んで」

「おおきに。百様も」

「ああじゃあ」


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