1【序ノ口、縁の結び目をちぎり捨て】
始まってしまいました!
このページでゆっくりしていってください~♪
注意、史実事実とは関係ないです!
関西弁は現在も奥が深いですが、江戸時代初期となると、さっぱり調べられてません。
ご容赦ください!
それでも、誤字脱字ありましたら宜しくお願いします。
京は東山、枯山水の見事な庭と山桜の嵐山を借景にした、名のある寺院ご自慢の大きなお座敷に、数名の若い男女と僧侶が集まって歌会が始まっている。
僧侶はお世話係として立ったり座ったりしているが、男性は狩衣、女性は唐衣を着、文机を脇息代わりに優雅に座っている。元禄の世にありながら、平安の光景が広がっておりました。
「上座にいらっしゃるのは、尾関成親様。公家でありながら侍のような堂々たる佇まいじゃ」
「ほんに、男らしゅうて立派じゃのう」
「蹴鞠なども負けたことはないということだえ」
「せやけど、成親殿のそばにいはるのは、許嫁の瑠璃姫じゃないえ」
「ああ、あれは先日、白拍子から石倉家に養女に取り上げてもらった娘じゃ」
「顔を白く塗りすぎて、若いかどうかわからんのぅ」
「まあ、羽森の瑠璃姫様はあちらよ。あんなに離れたところに」
「ほんに、お美しい。竹取物語に出てくる月の姫のようだえ」
窓際には、仲良さそうに二人の姫が硯や墨を見せ合って話しておりました。一人は姉の珊瑚姫。もう一人は二つ下の瑠璃姫。羽森家の自慢の姫たちです。
カルタの読み札を広げたかのような鮮やかなお座敷では、短冊に和歌を書き、それを僧侶が集める。
「次は尾関成親殿の歌でございます」
小坊主が高い声で読み上げる。
それを聞いている者たちの表情が曇っていく。
「まあ、これは、なんという」
「寺だというのに」
「新しい恋に出会ったから別れてくれと」
「せやからあの元白拍子を連れているんや」
「なんとふしだらな。あれは遊女上がりだと聞いているがな」
隣の部屋から流れてくる琴の音も聞こえぬほどにざわつく。
「おかわいそう。瑠璃姫様」
「でも、ご覧になって。瑠璃姫様を」
「檜扇でお顔を隠されていらっしゃるけど」
「なんか嬉しそうやわ。お姉はんの珊瑚姫も笑てはるわ」
「そりゃ、以前から尾関 成親殿の良くない噂を聞いていたからな」
「相手から分かれてもらうなら有難いことよ」
「いや、しかしあの成親殿の顔、すこしは悔しがると思ってたみたいだな」
「これは、楽しおすな」
「しっ、瑠璃姫の返歌よ」
また別の小坊主が高い声で読み上げる。
「ぷっほほほ」
「干した大根に別れを言われて嬉しいて」
今度は一様にくすくすと笑い声が聞こえていく。
「そら、許嫁とは言え、一回りも離れとったしな」
「婚約したころは、火事もあったし、瑠璃姫様の家も苦労してはったやろうけど、今は持ちなおしてる言うてるしの」
「よかったどすなあ。せやけど少しきつない?」
「あれみて?成親殿の顔」
「反撃にあってやられてしまいましたな」
「え?結局は瑠璃姫に未練あるとか?」
「ははは、何してんねや」
歌会では他の男女とあまり話さなかった姉妹も終わったあとはくすくすと話しをしていた。
「珊瑚姉さま、今日は付き合うてくれておおきに」
「何言うてんの、可愛い妹のためや。もう大坂に帰るんか?」
歌会場の寺に借りてる控えの部屋には、姉妹と女中が一人。外には家人が二人、駕籠の近くで待っている。十二単ほどではないが唐衣も、着るのは大変だし、脱ぐと荷物になる。でも牛車を使える時代ではないので、小袖に着替えないと移動もできない。
珊瑚と瑠璃の姉妹の京屋敷は四条の方にあるのだ。
「うちはこのまま、伏見まで歩いて行って、そこから船で道頓堀迄行くさかい。姉さま帰り気ぃ付けて」
「成親殿のことは父上様に言っとくから安心し。あんたは兄上様より稼いで家に入れてくれとるから、父上様も悪いようには思わんやろ」
「おおきに。助かるわ」
「ほんま、忙しい子やな」
「ふふふ」
着るのは大変だった装束をするりと脱いだ二人。瑠璃の方は長髢(つけ毛)も足もとでとぐろをまいていた。
姉の珊瑚はもちろん小袖に着替えて、女中が沢山の単衣を畳んで行李に入れるのを手伝っている。妹は何とも身軽な膝より短い股引に草鞋、ほっかむりという男のような出で立ちだ。
膝上から素足が丸出しで、先ほどまで姫と言われていた雰囲気はない。
「あんたまた、そんな恰好で。ほんまに気ぃ付けや」
「大丈夫!うちはそこらの男より強いんやから」
「そらまあそうやろけど」
「ほな!」
可愛らしい挨拶を最後に、欄干のある窓から飛び出してしまった。
「もう、ほんまに、白拍子より身軽やねんから」
「珊瑚姫様」
「うちらもぼちぼち帰りましょ」
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