非情
こんにちは。
2話目です。
初心者なので文章の不届きや拙さはお許しください。
目的地に着いたバスが、緩やかに停まる。皆が一斉に降りて、自然に囲まれた大きな建物を見上げる。話に聞いていたとおり、大きくて広い建物だ。ここは博物館で、1日目にAクラスが見る場所だ。よく見ると建物と木々の隙間から奥にたくさんの小さな建物が見える。
ここの博物館のスタッフによると、ここはもともと古代遺跡があり、その直ぐ側に博物館を建て、遺跡の重要なポイントポイントに小さな建物を建てて、古代の生活の跡をパネルや音声の解説付きで学べるようにしたらしい。なるほど、と女は思った。何十ものポイントがあるから、二人組に分けて回るのだ。
大体の解説が終わって、それぞれの二人組で、指定された順番でポイントを回る。女と由梨が1つ目に行くポイントは、「6」の建物だ。ちなみに、小さい建物は20ほどある。
「6」は、竪穴式住居の跡だった。まず大きなパネルで竪穴式住居の基礎知識を復習してから、実際にここにある跡を見る。そうすると、確かに仕組みがわかりやすい。他にも、この遺跡の竪穴の特徴なども学べた。
十分見られたので、次の「7」の建物へ移動する。中へ入ると、先程の建物との大きな違いがすぐに分かった。「6」は一階建てだったが、「7」には、地下がある。地下はかなり深く、場所を取らないためなのか階段ではなく一人ずつしか乗れないエレベーターで降りる。
降りると、女も由梨も息を呑んだ。周囲一面、きれいに分かれた地層だったのだ。つまりここ、「7」は、この遺跡周辺の地層を学ぶところなのだ。
「7」は、「6」よりも多くのことを学べた。 地層の、時代が違う部分それぞれに説明があり、そこから検出された成分などもわかる。女はもともと地学に興味があったため、とても充実した時間を過ごしていた。
そんなときだった。突然大きな揺れが起こり、前後左右の地層が崩れ始めた。女は、すぐに事態が深刻なことに気がついた。なぜならここは地下で、もし地層が完全に崩れるようなことがあれば女と由梨は埋もれてしまうのだ。揺れはまだ収まらない。
「地震ね?かなり大きいみたい、ここ地下よね?大丈夫かしら。…………っひゃっっ!!」
突然、天井の一部が、大きな音を立てて由梨と女の間に落ちてきた。二人は顔を見合わせる。きっと考えていることは同じだろう。自分たちの体に当たらなくてよかった…。
まだ揺れは収まらない。それどころかより大きくなっているように感じる。もう立っていられなくなり、ふたりとも床にへたりと座り込んだ。由梨はもうパニックと揺れで吐きそうなっている。
ドォォン!!!!バチッッッ!!
今度は天井の大部分が女と由梨の上に降ってきて、二人は間一髪で下敷きにならずにすんだが女は足を怪我した。さらに、地震の衝撃で停電したようだ。
幸い、ここに降りてきた一人乗りのエレベーターは壊れていないようにみえる。
女はいろいろな論文や記事を見てきたおかげで、この小さなエレベーターが必要電力およそ5kwほどだろうと予想がついた。しかし、ここに装備されている非常用電源は性能が良くなく、小さなエレベーターを一度持ち上げるのがやっとだろう。
地震がやっと収まった。しかしいつ余震が来るかわからないため、今のうちに上にあがってしまうのが賢明だろう。
「……やっと止まったわね。この私としたことが、立ってらんなかったわ。じゃ、今のうちにあがりましょう?余震が来ても困るし。」
「……。このエレベーター、非常用電源の容量的に一度しか使えない。……ただでさえひびが入ってるのに、一人乗りのものを二人で乗ったら…………。」
「??どうしたのよ?ブツブツ言って?二人で乗るのは危ないかもしれないけど一か八かよ。さあ乗r…」
ドンッ!!
「ひゃっ!?」
女が由梨を突き飛ばし、由梨は床に頭を打ち付けてしばらく動けそうにない。
「ごめんね、あたしが一人で戻る。悪いとは思ってるけどしょうがないよね?だって、二人で乗ったらリスクが高いもん。それじゃ。」
「……!?信っじられない!!あ、あ、あなたサイコパスなんじゃないの!?」
「??? なんで?あなたのことはとても大事だけど、自分のほうがもっと大事。二人で乗って、もしふたりとも出られなくなったら馬鹿みたいじゃない。一人で乗ればほぼ100%安全よ?」
女はふっ、と笑い、呆然とする由梨を残してエレベーターで地上に上がった。
ありがとうございました。
まだ続くのでよろしければ次作もお読みください。