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1話



自分の姿形すら覚束ない真っ白な空間の中で、田島煌は不思議な感覚に包まれていた。

彼はまるで、空気中に浮遊しているような錯覚を覚えた。夢の中で自分が望む映像を具現化するための準備段階である。

彼は意識を集中させることで周囲の状況を変えることができた。

少し意識を加えると、彼が立っている真っ白な空間が一面の草原に変わった。

微風に揺れる草の音が聞こえ、青空には白い雲が浮かんでいる。

想像力が乏しくても意識することのできる異世界心情風景である。

彼はこの世界に居心地が良く、毎回ここで止まってしまう。

いわゆるファンタジーの世界を思い描こうとしても、彼の想像力はこの草原や森林、中世ヨーロッパ風の街並みを超えることができない。

彼はいつも、自分の脳がタスクに耐え切れなくなり、自然に寝入ってしまう。このような夢は、田島煌にとって寝る前の日課となっていた。



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(みたいな書き出しのVRゲームとかができれば社会人になった今でもハマるんだろうけどなあ。)


現実逃避として、田島煌は仮想のゲーム世界で自分自身を否定することがあった。

彼の日常の中での唯一のメンタルケアである。彼は29歳の社会人で、6年間も働いている。

学生時代は昼夜逆転の生活を楽しんでいたが、社会人になってからは毎日7時過ぎに家を出て、21時まで会社で働き、22時に帰宅する。

夕飯を食べ、風呂に入り、24時には寝る。そして、翌日6時には起きる。

田島煌は何のために働いているのかわからなくなっていた。

彼はただルーチンに沿って自堕落な生活を続けていた。


田島煌は漫画やアニメの登場人物ならば自分を非難するのだろうと思った。

しかし、そんなことを考えても何の得にもならないと思い直し、心を殺してタスクに取り組むことしかできなかった。

田島煌には休日が生きがいになるはずだったが、友人も会社の同期も皆結婚し、次のステージに進んでしまっていた。彼にとって、唯一の楽しみはおいしいものを食べることだった。


今日は田島煌の30歳の誕生日であった。

彼は弱っている胃袋を抑えて、ホールケーキを購入した。

誕生日を祝う気分はなかったが、ケーキは美味しかった。

彼は食べている最中は幸せだったが、食べ終わってからはむなしくなってしまった。

彼は風呂に入り、動画を見てから寝た。

人生で一度はやってみたかったホールケーキ1人食いもやったが、これから何を糧にして生きていくべきか迷っていた。


次の日も田島煌は仕事があった。彼は泥のように眠りについて、翌朝に備えた。

しかし、田島煌は自分自身を奮い立たせるために何かを変えなければならないと感じた。

彼は今後の人生を考えることにし、夜遅くまで起きてみた。しかし何も変わらず、気づけば意識を失った。


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「残念でした。あなたは童貞のまま30歳を迎えたので魔法使いとなります。」という声が、何処からともなく聞こえてきた。

彼は目を覚ましたが、そこには何もなかった。ただ、その声が頭に響いていた。彼は不思議に思いながら、再び目を閉じた。

すると、不思議な光が彼を包み込み、身体を襲った。彼は激しいめまいを感じながら、何かが自分の中で変わっていくのを感じた。

「あなたの夢の中ではありません。したがって念じても私の声は消せませんよ。」と、再びその声が聞こえてきた。彼は目を開けたが、周りは真っ暗だった。

「おかしい。何が起こっているんだ?」と、彼は呟いた。

「ふむ・・・理解を超える事象が発生するとフリーズして何も考えられなくなる。典型的な消極的童貞野郎の反応ですね。」突如、謎の声が嘲笑った。

彼は慌てて声の方向を見たが、何も見えなかった。彼は不安になっていたが、その時、何かが彼の体を包み込んだ。

それは、まるで暖かな空気のような感触だった。そして、彼は瞬時に違う場所に連れて行かれた。

彼が目を覚ました時、彼は全く違う世界にいた。その世界は、彼の目にはとても不思議に映った。

「童貞のまま30歳を迎えた成人男性は種の繁栄の観点からこの世界には適合しない存在です。

なので当該個体は劣等種に分類し、劣等種でも種の繁栄を期待することができる別世界へと移送します。

なお、この世界では貴方のコピーが今後生活することになります。

今までの人生でいろいろと影響を及ぼしている事象をなかったことにはできませんからね。」と、謎の声が聞こえた。


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彼は周りを見回し、その場の情景を感じ取ろうとした。太陽が高く輝き、周囲は茂みや木々に覆われていた。彼が目を凝らしていると、小さな生き物が彼の方へ近づいてきた。それは、黒い毛並みを持つ小さなウサギのようだった。彼はウサギを手に取り、毛並みを撫でていると、突然彼の頭に謎の情報が流れ込んできた。

「異世界転生モノみたいな話だな。それで魔法使いというのは?別世界では存在に要する魂の格の容量が少なくて、その際魂の格が余るので、その分を補填する形でスキルか特殊能力を付与されるということ?そしてその分が魔法使いになる、として昔から言い伝えで言われているということか」

彼は驚きと疑問を抱いた。しかし、彼はすぐにそれを理解した。

「概ねその通りです。理解が早くて助かります。残念ながらスキルはランダムですので、世界間移動した後のお楽しみですね。ではいってらっしゃい。外見は14歳にしておきますね。また童貞のまま30歳を迎えたら下位世界へ送りますからね。」

彼は不快感を覚えた。交渉の余地はなかったようだ。彼は、自分がどうやってこの世界で生きていくのかを考え始めたが、目の前が暗転した。


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