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罪人


 そして私はつい先程まで泊まっていた集落に戻ってきた。男の子はずんずんと進んでいく。


 獣人って人の集落に慣れてるのね。


「ネル、適当に食料を調達してこい」

「あいあーい」


 男の子が……って名前なんだっけ?さっきネルって妖精が呼んでたはずだけど。


「ねえ僕、名前は?」

「だから我はそなたより年上……まあ良い。エドかエディと呼べ」


 エディ……。なんだか私の名前に似てる。


「エディね。私はティナ。そなたじゃなくてティナって呼んで」

「気が向いたらな」

「なにそれ、可愛くない」

「ふん」

「ネルはどこに行ったの?」

「食料調達に」

「あら、妖精ってお金使えるの?」

「盗むに決まってるだろ」

「えー駄目よ。盗みは犯罪なんだから」

「そうも言ってられんだろ」

「私の良心に反するから駄目。ルル、ネルを止めてきて」

「あーい」

「あ、おい。何を勝手に」

「私が買ってあげるから。これでもかなり貯金してたのよ。追放されても全然余裕」


 そう言いながら通りかかった果物屋さんでりんごを2つ買う。


 あ、そういえばラリア砂漠に行く前に買ってるんだった。まあ果物は買ってないから良いや。


「追放?そなた、犯罪者か」

「違うわよ」

「不敬罪に違いないな。そなたは無礼者だ」

「失礼ね、違うってば。ん?なんで追放されたんだっけ?あ、そうそう、妖精の乙女を偽り本来の妖精の乙女である異母妹を虐めた罪だった」

「ふむ。嘘つきでいじめっ子ということか」

「違うわよ。なんというか……そう、ルルのせいよ」

「ルルの?」

「そうよ、ルルのくしゃみのせいよ。せいというかきっかけ?」

「そうか、ではそなたの国が悪いな」

「え?なんで?」

「妖精は神が創りし存在。妖精がすることは受け止めねばならん」

「へーそういうものなんだ」


 ルルが悪いことしたんじゃないけど妖精ってそういうものなのね。


「まあ、下級妖精は幼くやんちゃが過ぎるため中級や上級に咎めさせることはあるが」

「ふーん」

「ん?そなた……」


 急に強い風が吹いたかと思ったらエディが私に近付いて匂いを嗅ぎだした。


「やはり……」

「な、なに?」

「そなたやはりただの人間ではないな」

「だから人間だってば!!」


 人間じゃなかったらなんなの私。


「ふむ……血を食わせてみろ」

「吸血鬼!?嫌ですけど!!なんなの!?」

「……まあ良いか」


 エディが前を向いて歩きだす。


「ちょっと、今のなに?」

「気にするな」

「気にするわよ」

「なんでもない」

「……もう」


 獣人って人の血を食べるのかしら。謎がいっぱいだわ。


「それにしても、妖精が見える人間は普通じゃないのね」

「ああ。我は知らん」

「ふーん。じゃあ私もお母様も初代妖精の乙女もなんだったのかしらね」

「妖精の乙女?先程もそう……ああ、ローナのことか」

「知ってるの?」

「600年程前我が国から追放した犯罪者だ」

「え、嘘でしょ?」

「本当だ」

「悪い人だったの?」

「いや、罪状はなんと言ったか……そうだ、せっかく異世界に転生したんだから冒険したいと思った罪、と言っていたな」

「はい?なにそれ」

「だからローナが我にそういうことにして追放してくれと言うから我から先代国王にそういうことにしろと言ったのだ」

「どういうこと……?」

「だから我も意味がわからんと言ったのだ。国から出ていくのも入るのも自由なんだから勝手に出ていけと言ったのだがそれはつまらんと言って聞かなかったのだ」

「へー……ってことはなに?初代妖精の乙女は獣人なの?あ、いや、人間も住んでるんだったわね」

「山猫の獣人だな」

「え、そうなんだ、そうだったんだ」


 そっか、妖精の乙女は人間じゃなかったのね。


「じゃあ私もお母様もなんなんだろう。獣人?なわけないわよね。尻尾も何も生えてないし」

「おい、こっちだ」


 気付いたらエディが随分先にいて慌てて駆け寄る。


「いたいたーティナー」

「ルル」


 そこにルルとネルも合流して木が生い茂ってる場所までついた。


「こっちだ」

「あいあーい」


 エディについて森の中を進んでいくと巨大な岩と祠があった。


「何?りゅうじんさま……って書かれてるってことは竜神が祀られてるの?そういえばお祭りがあるって言ってたわね」

「こっちだ」

「え?……えっ!?」


 祠の裏に回ってエディが岩を動かすと地面に穴が開いていた。


「な、なんで動かせるのっていうか……なんなのこれ」

「地下に行く」

「ほー……」


 こういうの初めてだ。梯子があって降りていく。


「きゃっ」


 もちろん暗くて足を踏み外してしまう。


「気を付けろ」

「ご、ごめん」


 上から聞こえる声に反応するけど私だって肝は座ってる方だって思うけど普通の女の子だ。怖いと思っても良いだろう。


「……はあ。ネル」

「あいあーい」

「眩しっ」


 急にネルの体が光った。


「わあ明るーい。ティナ、ネルはピカピカ発光の力があるんだよー」

「そ、そう。夜道に活躍しそうだけどぱっとしない能力な気が……」

「ぱぁー」


 更に光が増した。


「ま、眩しい。ぱっとするぱっとする」

「ぱぁー」

「ネルの力は目眩ましに使える」

「な、なるほど」


 ネルは何が楽しいのかルルとくるくる回っている。


「ティナ面白ーい」

「でしょー。ティナは面白いんだよー」

「はいはい」


 何が面白いのやら。妖精ってみんなルルみたいな能天気なのかしら。


 中級妖精とか上級妖精は違うのよねきっと。


「というか明るくなってわかったけどだいぶ下まで遠いわね」

「ここは元々竜がいた場所だからな」

「へぇー竜ってそんなにでかいの?」

「ああ」

「エディは国王に会ったことあるの?」

「まあな」

「そうなんだ。竜の王様ってどんな人?あ、人じゃないんだった。優しい竜?」

「優しい?そんなもので王になれるものか」

「じゃあ怖いの?」

「そうだ。恐れられなければな。そして誰よりも強くなければならない」

「そうなんだ。日本とは全然違うもんね」

「日本?そなたも転生者なのか」

「え?あ、そっか、初代妖精の乙女が転生者だったんだものね」

「そうか。そなたがいた時代も戦がなかったのか?」

「うん、平和だったよ」

「ならランダに来るのはやめた方が良いだろう」

「んー獣人と妖精と人間が共存してるっていうから平和な楽しい国だと思ってたんだけどな」

「下級妖精は呑気だからな。妖精を傷つけようとする獣人はいないし人に妖精は見えぬから悪さをしようとしても妖精からしたら遊んでると思うだけだ」

「なるほどー。じゃあどこに行くかなー。自由になりたいって思ってたけどいざ自由になると行くとこないな」

「自由ではなかったのか」

「まあね」

「そうか」

「きゃっ」


 落ちるっ……。


 梯子に手をかけられず体が宙に浮く。


 地面に落ちると思って思わず目を瞑る。……が、何かに締め付けられる感覚がして恐る恐る目を開ける。


「へ?」

「そなたはどんくさいな……」

「え、え、浮かんで……?って、ぎゃっ、トカゲの尻尾!?」


 そう、トカゲの尻尾が胴に巻き付いていたのだ。


「助けてやったというのにぎゃあとはなんだ」

「ご、ごめんエディだったのね、そうよね」


 エディの尻尾で引き上げられて私はエディに片腕で抱き寄せられる。


「な、なに?」

「もう面倒だから自分で降りる」

「へ?な、ちょっと!?」

「舌噛みたくなければ口を閉じてろ」

「まさか……」


 ぎゃあー!!


 絶対ビル10階くらいの高さはあるっていうのにエディは梯子から手を離して私を抱えながら落ちていく。


 死ぬ死ぬ絶対死ぬ!!


──トン


「着いたな」


 その声で強く閉じていた目を開ける。


「初めからこうすべきだったな。なんだそなた、怖かったのか」


 そう言って意地の悪い顔をするエディ。


 ドキッ──。


 いや、待ってジェットコースター以上の衝撃に驚いただけよ。


「こ、怖くないわよ!!」

「そうか」

「痛っ!!ちょっと!?」


 急に手を離されて地面に尻餅をつく。


「ティナーあっという間だったねー」

「早ーい」

「「あははは」」

「笑い事じゃないんだけど!!」

「こっちだ」

「いやちょっとね!!人を落とすとか、この人でなし!!」

「我はただの人ではない」

「このトカゲでなし!!」




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