親子の距離
我は700年以上生きる竜人だ。200年を地下で、500年を戦いの中で生きてきた。そんな我が初めて愛した女、ティナと結婚して息子が生まれた。
700年以上生きて今が一番幸せを感じている。それはそうだ。700年のほとんどを戦の中で生きていた我が今は愛する妻と息子と平和な日々を過ごしているのだから。
だがそんな我には悩みがある。息子に嫌われているかもしれないのだ。赤ん坊の頃は無邪気に抱っこをせがんでくるような甘えん坊だったがいつの頃からか避けられるようになった。
「……すごいわ!!さすが私とエディの子ね!!」
「ん?」
執務の合間の移動中、近くの中庭からティナの声が聞こえた。
「ああ、ティナ様とロイナルド様ですね」
側近のネイツが言う。中庭に向かう我にネイツが予定を遅らせてくると言って去る。
ネイツはよくできた側近だ。未だになぜ気の使えない女代表のようなサリを妻にしたのかわからん。
我が中庭に着くとティナが1人でいた。
「エディ、お疲れ様」
「ああ、ロイは?」
匂いは近くでするのだがやはり避けられているようだ。
ティナは困った顔をして後ろを見る。
「ロイ、お父さんよ」
なるほど、ティナの後ろに隠れていたようだ。
ロイはティナの後ろから顔だけ出した。
「お、お疲れ様です父さん……」
「うむ」
「「……」」
「ねえエディ!!ロイがすごいのよ。将棋を教えたらあっという間に私負けちゃったの」
「ティナは弱いからな」
「そ、そうだけど!!でもすごいのはすごいじゃない。ね、ロイ」
ティナの前世にあった将棋。我はローナから聞いていて知っていた。ある日ティナがこのランダの遊びは魔法が前提のものがほとんどで自分は手伝ってもらわないといけないから申し訳ないと言って日本の遊びをランダに広めて遊ぶようになったのだ。将棋はその中の1つ。
ティナに頭を撫でられ褒められるロイは恥ずかしそうにはにかむ。
「そうか。ロイはすごいな」
そう言って我もロイの頭を撫でる。
「ッ!?あ、ありがとうございます……」
「ふふふ。ねぇエディ、時間があるならお茶にしない?」
「そうだな」
我がそう言うと側にいた侍女たちがすぐに用意した茶を飲む。
「ロイは頭が良いわ。私に似たのね」
「だからティナは将棋が下手だろう」
「将棋じゃなくて!!勉強のこと」
「勉強得意だったのか?ルルとネルと一緒にテストした問題が不合格だったよな」
「む、昔の話でしょ!!面白いけど難しいのよ」
ランダで暮らしはじめてルナシーにランダや獣人、精霊について学んだティナ。
ルルとネルのお目付け役も兼ねていたが3人ともちんぷんかんぷんだと嘆いていたのは記憶に新しい。
「今は完璧よ。でもロイは1回で何でも覚えちゃうの。すごいわ」
「それは我に似たからだ。我は1度言われたことは忘れないからな。我はすごいのだ」
「ロイ、自信を持つのは良いことだけど偉そうな大人にならないようにね」
「偉いのだ竜王なのだから」
「ロイのお父さんは強いだけで慕われてるんじゃなくてランダの皆を大切にして守ってくれてるから皆に慕われる竜王なのよ。ロイもそんなお父さんみたいな大人になるのよ」
「うん、わかったよ母さん」
「う、うむ……ロイ、母さんは山猫一族の力が使えるから皆に慕われているのではなくランダの皆に明るく寄り添うところが好ましく慕われているのだ。ロイはそのような母さんのような大人になるのだぞ」
「は、はい、わかりました父さん」
目が合うティナが嬉しそうに笑う。我も今この時が幸せだと感じる。
「う……」
「ティナ!?」
「母さん!?」
突然ティナが苦しみだして慌てて駆け寄る。
「き、気持ち悪い……」
「気持ちが悪いのか!?すぐに見てもらうぞ!!」
「母さん大丈夫!?」
「大丈夫……予想はしてるから……」
「予想だと!?なんだそれは!?」
はっきりしたらねと言うティナを医者に見せる。
「どうだ!!どこが悪い!!」
「エディ、大丈夫だから落ち着いてって。先生、やっぱりそうよね」
医者に詰め寄る我をティナが制する。
「そうですね」
「なんなんだ!?」
「妊娠です竜王様」
「にん……はっ!?」
「だから妊娠よ。やっと双子に会えるのね。ロイも、お兄ちゃんになるわね」
我と一緒に動揺していたロイナルドと共に呆然とする。
「もう、本当に親子そっくりなんだから」
「ほ、本当に?」
「ええ、竜王様」
「ここに双子がいるのよ」
お腹をいとおしそうに撫でるティナ。
「そ、そうか……ありがとうティナ」
「ふふ、うん。楽しみね」
「うむ」
「ロイ、お腹触ってみる?」
「え、良いの?」
「良いのよ」
「ロイ、妊娠出産は大変なことなのだ。男は代わってやることができない。だができることはたくさんあるのだ。まずはこれだ」
我はロイに手本を見せるためティナの腹に手を乗せる。
「そなたたちの父だぞ。そなたたちの母さんは優しくて強い母だ。安心して母さんの中で大きくなりなさい」
「お兄ちゃんだよ。会えるのを楽しみにしてるね」
我を真似てティナの腹に声をかけるロイを見ているとティナに呼び掛けられる。
「さすが2回目だと落ち着いてるねエディ」
「ふん、まあな」
ロイの時は気が動転して自分でもよくわからない行動をしていた。そして呆れたルナシーに図書室に放り込まれ本を読んで勉強しろと言われたのだ。
世界のあらゆる国の書物が保管されている図書室のあらゆる妊娠期に関する書物を読んでティナのサポートをしたのだ。
「ロイに教えてあげてね」
「うむ。ロイ、任せておけ。我は一度知ったことは忘れない」
「さすがです、父さん。よろしくお願いします」
それがきっかけで同じ竜人として我を慕い我を避けていたロイとの距離が縮まり、そして双子が生まれたのだった。
一旦完結設定にしますがまた番外編を書いたら更新します。
そして「か弱王女と悪魔皇帝」という別連載を連載中です。そちらも是非よろしくお願いします。




