戴冠式
その後私はスレイブ様とアリシア様に会いに行きた。
「スレイブ様、おめでとうございます」
「うーん、別にありがたくはないんだけどね」
かっちりした衣装を身に纏うスレイブ様はげんなりした様子。
「でも妖精女王様の言うことに従ってれば良いだけだから楽なものだよ」
「本当に、妖精女王様はカリスマ性があるので私たちはお飾りなんです」
アリシア様までそんなことを言う。
「本人たちがお飾りとか言ってて大丈夫ですか?」
「良いんだよ」
「良いんですよ」
「……そうですか。ところでエディが何かするみたいなんですけど何をするんですか?」
「ああ、お仕置きね。脅すだけだから平和的だよ」
「ん?」
私が首をかしげるとルナシーさんが教えてくれる。
「いくら私が絶対的美女でも全員が心を入れ換えるわけじゃないのよ。痛い目をみせないとわからないお馬鹿さんがいるの」
「働きたくないけど生きていくために盗みを働いて怪我をさせた地方貴族の集団がいてね。強盗傷害罪で捕まえて生け贄にするつもりなんだ」
「エディは竜の姿で威嚇してくれるだけで罪人には幻惑を見せるわ。火炙りの刑よ」
「火炙り……」
「エディに丸呑みされて胃酸で溶けるとかでも良いわよ」
「我はそんな不味そうな人間は食わん」
ルナシーさんはほとんどの国民はルナシーさんのしもべになってるから必要以上に怖がらせる必要もないと言う。
悪いことをする人たちには痛い目を見て従順なしもべにするのだと。
「ルナシーさんが悪者みたいですね」
「あら、私の好きなようにしていいのよねスレイブ」
「どうぞどうぞ。全て妖精女王様の思いのままです」
なんだか際限なくルナシーさんの色に染まった国になりそう。
そう話しているうちに時間になって移動することになった。
サクティラの国民が様子を見れるように王都の大広場で行われ地方には射影魔法を使って映し出すのだそう。
スレイブ様は自分の戴冠式なんてちゃちゃっと終わらせようと言い、実際にほんの数分で終わってしまった。
「さあ皆、サクティラを守ってくれた竜王エドモンド王と妖精の乙女ティナ、そして我らが妖精女王ルナシーだ」
目立ちたくなかったけど私は竜の姿のエディに乗って広場に降り立つ。
「サクティラは未知の圧倒的な力を持つ生物に蹂躙された。そこで立ち上がったのが妖精の乙女ティナだ。ティナの求めに応じた竜王エドモンドが私と共に敵と敵に協力していた前国王を排除した。脅威は去り、サクティラは生まれ変わった。妖精の乙女ティナに乞われた妖精女王ルナシーがこの国を守護してくれる。皆、ルナシー様を全力で称え崇めるのだ」
「「「「おー!!!」」」」
「ルナシー様の言うことは絶対!!」
「「「「おー!!!」」」」
「ルナシー様に貢いで貢いで貢ぎまくるのだ!!」
「「「「おー!!!」」」」
「……ねぇエディ、これ良いのかな?」
「良いんだろう」
スレイブ様がイキイキとノリノリで演説してるけど内容はなんともこれで良いのかと疑問な内容だ。
ふと視線を向けたところにマリナさんとマリナさんの旦那さんと子供たちがいた。
目が合うとマリナさんが手を振ってくれる。
「民がこの状況を受け入れているのなら良いのではないか?」
「うん、そうだね……って、受け入れない人を今から火炙りにしようとしてるのに」
「受け入れさせるためだ」
そうエディと話しているとルナシーさんが前に出る。
「静まりなさい」
ルナシーさんの一言であんなに盛り上がっていたのに一瞬で静かになった。
「妾は妖精女王ルナシー。妖精の乙女ティナの願いを聞きこの国を守護する。善い行いを続ける限り妾はそなたらを守護するであろう。だが悪さをする者には相応の罰を与える」
そこに10人の縄で縛られた男の人たちが連れてこられた。
「あ……」
「ティナ、どうした」
「いや、知った顔だと思って。滅多に会うことのなかったお母様の従兄弟なのよ」
「殺すか?」
「いやいや!!ほんとに顔くらいしか知らないほど関わったことない人だよ。たまに会っても変わり者の子供も変わり者だって嘲笑われてただけ」
「……そうか」
「今日は妾の他に竜王エドモンドもいる。エドモンドも愛する妖精の乙女ティナのためにこの国の平穏を望む者。今日はエドモンドが罪人への罰を執行する。エドモンド」
「ふん」
「「ぎゃー!!」」
エディの力で10人の周りに火柱が立つ。
「エディ……?」
「あら、急に機嫌悪くなって子供みたいね。まあ良いけど」
ルナシーさんは気にせず予定通り幻惑をかけたようだ。
「エディ、どうしたの?」
「ろくでもないやつなんだろう?」
「んーまあお世辞にも良い話を聞かない人だったけど」
「脅しただけだ。大したことはない」
「ねぇねぇティナー」
「ティナー」
ルルとネルがくるくる私の周りを回りながら話しかけてくる。
「どうしたの?」
「ルナシーどうしていつもと違うのー?」
「ルナシー変なしゃべり方ー」
「ああ、それ私も思ってた」
「ルナシーは人間と話す時は大抵ああだ。あの方が尊ばれそうだからと言っていた」
「そうなんだ。確かにあの美貌も相まって神秘的で神々しい感じがするわ。これで後光とか差してたらもっと神秘的ね」
「ピカー」
ネルがルナシーさんを光らせると周りの人たちがざわついて拝み始めた。
そして幻惑が解かれた10人は怯えきった表情でルナシーさんに謝り始めた。
「今までの行いを悔い改めこれからは善人になるが良い」
「ははぁ……!!」
「妾を敬い崇め奉るのだ。さすればこの国は護られるだろう」
「ルルも透明にしちゃおー」
ネルに続いてルルもルナシーさんを透明化する。すると再び周りがざわつく。
「皆のもの、私たちが善良な行いを続ければ妖精女王ルナシー様が姿を現してくださる。すぐ妖精女王様への貢ぎ物を用意するのだ!!」
「「「おー!!」」」
こうして集まっていた人たちは一斉に帰っていった。
「ルナシーさんは妖精の姿に戻れば人間に見えなくなるのに」
「良いの良いのールル神秘的にできたー」
「ネルもー」
「まあ良い演出にはなったわね」
「……それなら良いんですけど」
その後スレイブ様とアリシア様と話してから私たちはランダに戻った。




