遊園地
「ティナ様、遅いのにゃ」
「サヨちゃん?」
果樹園での特訓を終えて王宮の部屋に入ると獣人姿のサヨちゃんが抱きついてきた。
「ティナ様お帰りなさい。サヨさんがティナ様のお部屋で待つとおっしゃるので一緒にいました」
留守を任せていたベルーナが言う。
「そうなのね。サヨちゃん、どうしたの?」
「未来視をしたにゃ。竜王様のところに連れていくのにゃん」
サヨちゃんは右手に持っていた野菜クッキーを食べてから猫の姿になってもう一度私に向かって手を伸ばす。
「未来視をしたのね。でも私を待たなくても」
「竜王様はすぐ怒るにゃ。ティナ様がいれば手を出してこないはずにゃ」
「ああ……そういうことね」
ということで私はエディの宥め役としてサヨちゃんをエディの元に連れていくことにした。
「ティナ?どうした?」
エディの執務室に行くとネイツさんとサイネスさんがいた。
「サヨちゃんが未来視をしたんだって」
「竜王様はティナ様がいると大人しくなるのにゃ。サヨは学んだのにゃん。ティナ様を盾にすれば竜王様はサヨに手出しできないにゃ」
「ふん、そんなこと関係ない」
エディがサヨちゃんの頭を鷲掴みしようとして慌ててサヨちゃんを抱いたまま体を背ける。
「エディ、乱暴は駄目よ」
「我はサヨが寝てばかりだから目を覚まさせようとしてるだけだ」
「サヨは起きてるにゃ!!」
「そうよ、今日のサヨちゃんは寝ぼけてな……寝ぼけてないね」
そういえばすぐ眠りにつきそうに寝ぼけてるサヨちゃんが今日はバッチリ起きてる。
「おかしなものでも拾い食いしたか」
「してないにゃ。そばにあったクッキーを食べただけにゃん」
「サリさん、あのクッキーに変なものなんて入れてないですよね?」
サヨちゃんはずっと寝っぱなしなわけではなく一瞬でも起きるらしかった。
品種改良した野菜で作ったクッキーや果物が減っているからその一瞬に食べているみたい。
「入ってないわよー健やかに育つだけー」
「にゃんにゃ、煩いのにゃ。未来視を伝えたらすぐ寝るにゃん。この前みたいになんだかいい気分になる未来視だったのにゃん。にゃん、早く聞くにゃん」
「サヨが役目に熱心になる時がくるなんて……」
「ネイツ、感極まりすぎだな」
「ふむ、わからんが寝ぼけないならそれで良い。聞こう」
サヨちゃんをエディの前に下ろすとサヨちゃんは獣人姿になって片膝をつく。
「スナネコ一族サヨ。この血に誓い未来視を偽りなく竜王様に伝えるのにゃん」
「うむ」
「サヨは見たのにゃん。くるくる回るコーヒーカップの中で眠るサヨ」
「それって遊園地?」
「ゆうえんち……わからないにゃん。でもゆっくり動いて気持ちよかったのにゃ。だけどまた双子が乗り込んできて思い切りコーヒーカップを回してきて大変な目にあったのにゃ」
「あら……双子って私とエディの」
どうやら私たちの子供はお転婆みたい。
「そこに双子の兄が飛んできて双子を止めてくれたにゃん。それから4人で王宮に戻ったのにゃ」
「……平和だな」
エディが目を細めて言う。
「うん、未来の私たちは幸せなんだろうね」
きっと竜獣人のお兄さんは弟妹思いの優しいお兄さんで双子はそんなお兄さんや私やエディを振り回してくれる可愛い子達なんだろう。
「ふふふーそれにサヨちゃんはやっぱり遊園地を気に入ったのねー」
「みたいですね。サヨちゃん、遊園地ができたら起きてくれる?」
「にゃにゃ、遊園地の行き帰りくらいは起きるにゃ。双子が邪魔しなければ居心地がよかったのにゃん」
「そっかそっか。良かった、サヨちゃんも気に入ってくれて」
やっぱり魔法書の言う通りマナとサヨちゃん2人ともが気に入る場所が遊園地だったんだ。
「それではますます早く遊園地を作るべきですね」
「ちょうどサクティラが落ち着いてきたので遊園地建設に人を回します」
「サイネスさん、もう落ち着いたんですか?」
「はい。あとはスレイブの戴冠式が終われば私たちは引き上げようと思います」
「スレイブ様の」
「はい。式には主も参加して睨みを利かせて来る予定です」
「え、睨み?なんで」
「ランダの属国にするのではありませんが悪さをすれば竜に食われてしまうと国民たちに認識させるためです。ちょっとした仕置きもする予定ですよ。ティナ様も同席されますか?」
「食われる……」
なんだろう。にこやかに言うネイツさんだけどやることは穏やかじゃなさそう。
「どうする?ティナはあの国にいい気はしないだろう」
「んーでも父親とかはいないしスレイブ様とアリシア様……それに他にも会いたい人がいるし行こうかな」
パン屋はどうなってるだろう。マリナさんたちは元気かな。
戴冠式は明後日の予定だそうで準備のあるエディたちの邪魔になったらいけないと思った私は、未来視を伝えた後すぐにまた眠ってしまったサヨちゃんを連れて部屋に戻った。




