デートスポット
なぜここだけこの世界っぽくなったんだ。なんで獣人のゾンビなんだ。
そうブツブツと呟きながら歩いていると──。
「ギャオー!!」
「ぎゃー!!」
ライオン獣人のゾンビが襲いかかってきた。
「なるほどーえいー」
サリさんが素早くライオン獣人ゾンビの背後に回って手刀で倒す。
「お化け屋敷ってー敵を倒していく遊びなのねー」
「違う違う!!違います!!」
流石サリさんだけどお化け屋敷はそういうものじゃない。
「ギャオー!!」
「あらーゾンビだから復活したわー。どうやって始末しようかしらー」
「だからそういうものじゃないんです。逃げるんです!!」
私はそう言ってサリさんの手を握って走る。
「わーティナ待ってー」
「待ってー」
後ろからルルとネルが追いかけてくる。
走ってる間に今度は横から猪獣人ゾンビが集団で襲ってきた。
「ぎゃー!!」
「ティナ、反撃しなくて良いのかしらー?主様が前にゾンビが現れた時の倒し方を教えてくれたことがあってねー」
「ゾンビいるんですか!?いやいや、お化け屋敷っていうのはですね、ああやって脅かしてくるお化けで恐怖体験をしてスリルを楽しむものです!!私はお化けとか苦手なので楽しめませんけどね!!」
「なるほどーそうなのねー」
「ルル脅かす方がやりたいなー」
「ネルもー」
「「ガオー」」
「ふふふールルちゃんとネルちゃん可愛いわー」
熊の獣人ゾンビに向かって脅かそうとするルルとネルを可愛いと言うサリさん。
私はそれどころじゃない。
「ティナ」
「ヒーッ!!ゾンビに名前呼ばれたー!!」
後ろから低い声で呼ばれた私は驚いて転びそうになる。
「おいティナ、大丈夫か」
「……あれ?エディ?」
転びそうになった私の腰を抱えたエディがいた。
「あらー旦那様までー」
「ネイツだー」
「ネイツー」
「迎えに来たよ」
「流石私の旦那様ー」
一瞬放心していた私は改めてエディを見る。
「獣人ゾンビじゃなかったー良かったー」
「ティナ、大丈夫か?ここは遊園地だろ」
「あれ?エディ遊園地知ってるの?」
「ああ。ローナから聞いていた特徴と一致するからな。それにこれはお化け屋敷というやつか?」
「そう、お化け屋敷よ。エディとネイツさんが迎えに来てくれたってことは帰り方がわかるっていうことよね?」
「ああ」
「ルナシーに聞きました。この本から出るには知りたいことが解決したと心の中で念じるのだそうです」
「解決したってですか?」
「マナの言う遊びは遊園地だということなんだろう?」
「うん、そうみたい」
「なら知りたいことは解決したと念じれば良い。それだけでここから出られる。」
「それだけ……良かった、簡単に出られそう。じゃあ今すぐにでも」
「いや待て。せっかくだ。遊園地をランダに作るなら実物を知らなくてはならない。しばらく視察をする」
「え……」
お化け屋敷から脱出するチャンスだと思ったのに。
その時コウモリ獣人ゾンビが飛んできた。
「あー主様旦那様ーお化け屋敷は敵襲を退けるんじゃなくてースリルを楽しむ場所らしいわー」
「そんなことローナから聞いてる」
「サリ、倒しちゃったんだね」
「そうなのーティナに怒られちゃったわー」
「お化け屋敷というのはこうして怖がるティナを宥めながら出口に向かうものだ」
そう言ってエディが私の肩を抱き寄せて進む。
「なんだーそうなんですねー。もーティナもそう言ってくれれば良かったのにー。お化け屋敷はデートスポットだってー」
違う。いや、違くないのか。もうなんでも良いから早くここから出たい。
「旦那様ー怖いわーぎゅー」
「ルルもネイツにくっつこー」
「ネルもネイツにくっつくー」
「ふふ。俺たちも行こうか」
サリさんたちがイチャイチャしてるけどそれどころじゃない。
いろんなところから獣人ゾンビが現れる度にエディにしがみついて私は遂にどうにかお化け屋敷から出ることができた。
「ふぅー……死ぬかと思った」
「我がついていて死ぬわけがないだろ」
「うんうん、そうだろうけどそういう問題じゃなくて……」
「ですが獣人にとってお化けの類いは恐怖対象にはなりませんね。何か代わりになるものを考えないと」
「獣人が恐れるものー何かしらねー」
サリさんたちは普通に協議してる。
「ティナー次はあれに乗るー」
「あれに乗るー」
ルルとネルが観覧車を指差す。
「休憩したらね」
「早く早くー」
「早く休憩してー」
まったく、元気な妖精だ。私は呼吸を整え観覧車に向かう。
私とエディ、サリさんとネイツさんとルルとネルがそれぞれの観覧車に乗る。
「わぁ……綺麗」
観覧車に乗ると外の景色が様変わりしていた。
暗い夜空に色とりどりの光る花が咲きほこっていた。
「光る花を作り出せということだな」
「今はないの?」
「ああ。遊園地を建てるのにもアトラクションを動かす方法を考えるのにも少し時間がかかるだろう。マナに遊園地の良さを伝えて光る花があれば尚良いと話し新たな植物を生み出す方法をマナから聞けば良い。サヨは遊園地ができれば勝手に起きて出歩くだろう」
「うん、マナもサヨちゃんも喜んでくれると良いな」
「本が遊園地にしろと言うのだから希望に添うということだろ」
「そうだろうけど」
前世みたいな綺麗なイルミネーションじゃなくてランダらしい素敵な景色が見られる遊園地。そんな遊園地がつくれると良い。
「それよりティナ」
「なに?」
眉間にシワを寄せるエディ。何か遊園地設立に問題点でもあるのかな。
「お化け屋敷には誰と行っていたんだ」
「え?誰とって友達とか」
「男か」
「女友達よ」
「……そうか」
エディが息を吐いて窓から外を見る。
「え、なに?女友達と行ってたけど」
「そうか」
「いや、そうかじゃなくて」
何のための質問だったんだ。答えてくれないエディの腕を揺する。
「ごほん……お化け屋敷で誰にそうやってくっついていたのかと思っただけだ」
「へ?」
誰とそうやってくっついていたかって──。
私はさっきまでエディにしがみついていたことを思い返してエディの思ってることを察する。
「彼氏じゃないよ。前世で彼氏いたことないもの。男友達もいたことないし」
「そうか」
「嫉妬した?」
「してない」
「嘘。したから聞いたんじゃない」
「してないって言ってるだろ」
「ふーん。今わかったわよ。ホッとしてたの」
「……」
「そういえば叫んでしがみついたら別のグループで来てた男の子だったことがあったような」
「燃やす」
「燃やしちゃ駄目。嘘だよ。やっぱり嫉妬してるじゃない」
「ふん」
私はふと前世で憧れていたことを思い出す。
「エディ、エディ」
「なんだ」
「遊園地はデートの定番でね、観覧車でキスをするの憧れてたんだ」
「観覧車で?なぜだ」
「ロマンチックじゃない?綺麗な夜景をバックに頂上でキス」
「そういうものなのか?」
「そうなの」
「そうか」
「うん」
その後会話はなくて頂上についたところで窓から外を見ていたエディが振り返ってキスをしてくれた。
「……これに憧れてたのか?」
「うん、嬉しい」
「そうか」
そしてもう一度キスをする。
観覧車から降りると後からサリさんたちも降りてくる。
「ティナー遊園地ってデートスポットなのねー。観覧車でキスー素敵ー」
「見られてたっ」
でも普通に考えてそれはそうだ。
「獣人の女性たちはそういうのがとっても好きよーねー旦那様ー」
「そうだね。戻ったらすぐ遊園地設立に向けて会議を開くことにします」
「そ、そうですか」
そして私たちは本の中から出て図書室に戻ってきた。
「あら、遅かったわね」
「ルナシーさん」
ルナシーさんは相変わらず優雅なティータイム中だった。
「あんなに慌てて本の中に飛び込んでいったからすぐ戻ってくるのかと思ったらしっかり楽しんできたのかしら」
「ルナシー、次からはこういうことは早く言え」
「別に危険なものじゃないんだからお茶が冷める前に飲みきってから呼びに行かせても問題なかったでしょうに」
どうやらルナシーさんはお茶をのんびり飲んでからメメさんにエディたちを呼びに行かせたらしい。
メメさんに無事に帰ってこれたことを報告し翌日にマナのところに行くことにした。




