魔法書
地道に探そうと意気込んで一冊ずつ本棚から出して開いて確認を繰り返していた私たち。
「……これいつ終わるんでしょうね」
「そうねぇー1ヶ月ー2ヶ月ー……半年かしらー」
「……もっとこう、魔法でパパっと探せたりできたりしないですよね」
「あら、ティナ。魔法は万能じゃないのよ」
「ですよね。ってルナシーさんも探してもらえませんか?」
ルナシーさんはいつの間にどこから用意したのかわからないけど優雅にお茶を飲んでいた。
「そうね、じゃあルル、ネル、働きなさい」
その辺りを飛んだり私とサリさんが開く本を覗いたりしていたルルとネルがルナシーさんの側に行く。
「ルルなにするのー?」
「ネルなにするのー?」
「2人で本棚から本を吸い込んで異空間に持っていくのよ。それを全部吐き出すの。で、ティナとサリが本を開いて確認して一冊ずつまた異空間に持っていって吐き出す。そうすると元の棚に戻るのよ。どう?魔法は万能じゃないけど立ったまま一冊ずつ取り出して確認して戻してって繰り返すよりは楽なはずよ」
「ルルわかったー」
「ネルもわかったー」
「異空間から出すと元の場所に戻るんですか?」
「そうよ。異空間が勝手に記憶するの」
「そうなんですね」
それなら確かに少しは楽になるし時間短縮にもなりそう。
「じゃあまずルルはこっちの棚から、ネルはこっちの棚から吸い込みなさい」
「あーい」
「あいあーい」
そうしてルルが吸い込んで出した書物を確認してまたルルに吸い込んでもらい、ネルの方はサリさんに見てもらいしばらく経つ。
「あ、これはどうでしょうか。何も書かれてない本ですけど」
「あらー本当ー」
「ルナシーさん、これだと思うんですけどどうしたら……えっ!?」
お茶菓子を食べていたルナシーさんに声をかけていたら急に本が光る。
「ネルの発光!?」
「ネル何もしてないよー」
「きゃっ!!」
動揺していると本に吸い込まれようとして慌ててサリさんに手を伸ばす。
「ティナ!!」
サリさんの手を取れた瞬間私は本に吸い込まれる。
「わぁーティナー」
「ティナー」
追いかけるようにルルとネルが飛んでくるところを見るのを最後に私の視界が真っ白になった。
そして視界が開けると薄暗い場所に私とサリさん、ルルとネルがいた。
「異空間……?」
「ティナー大丈夫ー?」
「大丈夫です。サリさん、巻き込んじゃったみたいですみません。大丈夫ですか?」
「私は大丈夫ー。ルルちゃんもネルちゃんも大丈夫ー?」
「ルル平気ー」
「ネルもー」
全員無事みたいでホッとする。
「ここはどこなんでしょう。ルルたちの異空間みたいに吸い込まれましたけど」
「ルルちゃんーネルちゃんーここは妖精の異空間なのかしらー?」
「ルルわかんなーい」
「ネルもわかんなーい」
「んー本に吸い込まれたので本の中、なんでしょうか?そんなファンタジーみたいなこと……あ、ここがファンタジーみたいなものか」
妖精や獣人がいる世界なんだから前世で聞いたことのあるような本の中に入るっていうことがあってもおかしくないのかも。
そう思っているとバンバンという音と共に辺りに明かりがついた。
そして目の前に懐かしい光景が広がっていた。
「コーヒーカップにメリーゴーランド……観覧車……ジェットコースター……」
それは前世の遊園地だった。
「ティナーなにー?」
「あ、えっと、遊園地です」
「ゆうえんちー?」
「はい、前世にあった、えっと……遊ぶところです」
「遊ぶのー?ティナ、これはー?」
「これこれー」
ルルとネルがコーヒーカップに向かって飛んでいく。
「それはコーヒーカップ。こう、コーヒーカップの中に座って真ん中のハンドルをくるくる回すのよ」
「ルルやるー」
「ネルもやるー」
「え、でも動くかな……」
ここが本の中だとして電気もないし動くはずがないと思ったけど私とサリさんがコーヒーカップの目の前までつくとコーヒーカップがゆっくり動き出した。
周りを見るとジェットコースターやメリーゴーランドも動き出していた。
「動くみたいー。さあ、ティナー」
「あ、はい」
どういう仕組みかわからないけど遊べるみたい。
私たちは1つのコーヒーカップに乗り込む。
「これをこうやって回すの」
私はハンドルを回してコーヒーカップを回す。
「わぁー!!ルルもー!!」
「ネルもー!!」
「「くるくるーくるくるー」」
「わっ!!」
ルルとネルが一気にハンドルを回すと思い切り回り出す。
懐かしい。前世でも友達がこうやって回して目を回すやら気持ち悪くなるやら大変だったっけ。
コーヒーカップが止まって降りる。
「あー面白かったー」
「面白かったー」
「ティナー次はー?」
「次次ー」
「次はそうね……ジェットコースターは?見た感じかなり速くてスリルがあ……もしかして」
遊園地ってマナが言ってた『刺激的でキラキラしてて面白くてぞくぞくわくわくする遊び』なのでは?
「ティナーどうかしたのー?」
「サリさん、本って、知りたいことを考えながら開くと己に必要な答えが示されるっていうのってこういうことだったんですね」
「んー?」
「遊園地です。マナがどんなものに刺激を感じるかわからないですけど遊園地にはスリル満点のジェットコースターとか、ほら、よく見るとあそこにお化け屋敷……私は苦手ですけど、それとかはぞくぞくすると思います」
「そっかーそれならぴったりねー。明かりがキラキラしてて綺麗だしーコーヒーカップは面白かったものねー」
「示すって文字が浮かんでくる魔法書なのかと思ってましたけどこういうことなんですね。でもどうやって帰れば良いのか……」
「ティナー早くー」
「早く早くー」
ジェットコースターに向かって飛んでいっていたルルとネルが引き返してきて催促してくる。
「ティナ、何とかなるわよー今は楽しみましょー」
「えっと、まあルナシーさんが向こうにいるんだし何とかしてくれるか」
「「ティナー早くー」」
「あ、今行く」
こうして私たちはジェットコースターに乗ってみた。
「あー面白かったわねー私これ好きだわー」
「ルルもー!!」
「ネルもー!!」
「ルル、マナは今の好きだと思うなー」
「ネルもそう思うー」
「それならサヨちゃんはさっきのコーヒーカップを回さなければ好きだと思うわー」
「サヨちゃんもですか?」
「そーサヨちゃんは煩いところは嫌ーっていうけどどこでも寝れちゃうしー赤ちゃんの時は揺りかごが好きだったからーゆっくり揺れる乗り物は気に入ると思うわー」
サヨちゃんの好みにも合うなら本当遊園地はぴったりだ。
「サリさんはサヨちゃんのことをよく知ってるんですね」
「そうよー。テレシア様がねー次の未来視持ちの子を気にかけてあげてねーって言ってたからー私ベビーシッターをしてたのよー。ずっと寝てるからやることなかったけどー」
「そ、そうだったんですね」
そう話しながら歩いているとお化け屋敷と日本語で書かれた場所の目の前にやって来た。
「ティナーこれはー?」
「これなにー?」
「これはお化け屋敷よ。でも私は苦手だから3人で入ってきて」
「良いから行きましょー」
「お化け屋敷ー」
「お化け屋敷ー」
「あっ……」
サリさんに背中を押された私はお化け屋敷、『恐怖の獣人ゾンビの館』に入ることになってしまった。




