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妖精のくしゃみが人生を変える  作者: 柏木紗月
ランダ新生活編
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特別な生地


「サヨちゃーん朝だよーおはよー」

「にゃにゃ……煩いのにゃ……」

「サヨちゃん起きてー未来視見たか教えてー」

「にゃんにゃん……」

「どっち……」

「サヨ起きないねー」

「起きないー」


 翌朝私はサヨちゃんが暮らすことになった部屋まで来て頼まれていた1日1回未来視を見たかの確認をしようとしてるんだけど……起きない。


 ルルとネルがサヨちゃんの頬をつついてみるけど全く起きる気配がない。


 ちなみに今のサヨちゃんは猫の姿。獣人は普段はほとんどみんな獣人の姿で寝るそうだけどサヨちゃんは猫の姿で寝るのだそう。


「おはようティナー」

「サリさん!!おはようございます」

「サヨちゃんは起きたかしらー」


 朝からサリさんが見に来てくれた。


「いいえ、全然起きてくれないです」

「ティナを気に入ったみたいだからすぐ起きるかと思ってたけどーそんなに上手くいかないわよねー」


 実は自分でもちょっと期待してた。昨日は甘えてくれたみたいで可愛かったから起きて遊ぼうと思ってくれたりするんじゃないかって。


「にゃん……にゃん……騒がしいのにゃ……」

「さっきからこんな調子で邪魔者扱いです……」

「仕方ないわよー。サヨちゃん我が儘大魔王だものー。声をかけて反応が返ってくるか確認するだけでもとってもありがたいわー」

「反応が?どういうことですか?」

「未来視を見てる時はねー外から何をしても起きないし寝言も言わないのよー」

「そうなんですか?じゃあ今は未来視を見てないんですね」

「そうよーだから無理やり起こしても平気なのー」

「いや、無理やりはちょっと。でもサヨちゃん食事とかはどうしてるんですか?」

「さすがに何も飲まず食わずじゃいられないからーサヨちゃんが起きたら勝手に食べれるように水とか果物とかを置いておけば良いのよー。ほら、そこにあるでしょー」


 確かにそばに置いてあるけどまさかこれがサヨちゃんの主食?50年こんな食生活なの?サリさんに聞いてみる。


「そうよー。食べるより寝るのが好きなのー」

「いや、それにしても限度が……」

「50年かけてここまで成長したんだから大丈夫ー。獣人は柔じゃないからー」

「うーん……」


 いくら獣人が人間の常識で測れないっていってもそれで良いのかな。


「そうだ。せめて果物だけじゃなくて別の食べ物を置いておきましょうよ。それに私が起こしにきた時に起きてくれたらもっとしっかり栄養のあるものが食べれるんじゃないですか?用意しておいて起きてくれなかったらルルとネルが食べれば良いし」

「そうねぇ。じゃあサンドイッチを用意してもらうわー。置いておくのはそうねークッキーとかかしらー?」

「野菜クッキーとかどうですか?」

「あーちょうど健やかに育つにんじんが届いたらしいわよー」

「えっと、品種改良ですか?」

「そうそうー」


 でも眉唾物だった品種改良した食べ物は不思議と効果が確かみたいだったし良いかも。


「寝てばかりで少ない食事でも大きくなれるような品種改良された食べ物はないですかね」

「んー……。って、ティナが自分で作れば良いじゃないー」

「私が?」

「そうよー山猫一族の得意分野じゃない。今は羊獣人が代わってるけど元々は山猫一族の領分だったのよー」


 そういえば森の管理も羊獣人が代わってるってハルクさんが言ってたっけ。


「じゃあ私やってみます」

「それが良いわよー。あーそうそう、主様が午後時間が取れるからリス達も午後に呼んでるのー。それまで頑張ってサヨちゃん起こしててねー」

「えっと、うん、頑張ります」


 しばらくして用意できたサンドイッチをベルーナが運んできてくれて私はひたすらサヨちゃんに声をかけ続けた。


 起きてくれないことには食事を見直しても意味がない。どうにかすんなり起きてくれる方法があると良いんだけど。






「サヨは起きたか?」

「エディ」


 午後、昼ご飯を食べて自室に戻っていた私の元にエディがやって来た。


「全然起きないわ。擽ってみたり大きな声で喋ったりしたんだけど煩いにゃんって言うだけで起きなくて」

「そんな生易しいことで起きるわけないだろ。我が行ってくる」


 エディがそう言って部屋から出ていこうとする。


「ら、乱暴は駄目だからね」

「……ふむ」

「主様、サヨのことはティナ様にお任せしますよ」

「……わかった」


 ネイツさんに言われたエディはあっさり留まって私たちはお針子のリス獣人たちが待ってる部屋に向かった。


「この前は中断させてしまってすみませんでした」

「いえいえティナ様。獣人あるあるは気にしてませんから。それより竜王様の珍しい姿が見れて嬉しゅうございましたよ」

「ふん」

「本日はまずこちらを。みんな」

「」「「「はーい」」」」


 リリスさんの呼び掛けでリス獣人たちが真っ白の生地を持ち上げて目の前の机に置く。


「これは?」

「こちらは山猫一族が育てた花で染めた生地です」

「あ……」


 この前エディが言ってた──。


 ちらりと隣に座るエディに目を向けると視線が合う。


「これは特別な生地でな、山猫一族が着るとその人物に適した色に変わるんだ」

「適した色に変わる?」


 ただ真っ白に染められた生地じゃないんだ。手に取ってみる。


「詳しいことは山猫一族にしかわかりませんが適した色、単純にその人の好みだったり似合う色だったりとどんな色に変わるのかは生地が決めるのです」

「生地というか生地に染められた染料が山猫一族の魔力に反応する」

「そうなのよ。不思議でしょ」

「ルナシーさん」


 今日もサクティラで貢がれたのか高価そうなネックレスをつけたルナシーさんが部屋に入ってきた。


「ローナは好みじゃなくて若草色に染まってね、不満を言ってたわよ。地味だって。でも似合ってたわ。その生地を纏う山猫獣人の本質を見抜くらしいの。それが好みと合う人もいれば違うけどしっくりくる馴染む色に変わる場合もあるらしいわ」

「そうなんですか。不思議……」

「その色は一度纏った生地でなくて新たに仕立てようと纏っても同じ色に染まるの。だからその人の色と呼ばれたわ。ティナは何色に変わるのかしらね」

「ティナ、羽織ってみろ」

「うん」


 エディに促された私は立ち上がる。そしてサリさんが生地を広げて私の肩に羽織らせてくれる。


 すると真っ白だった生地がゆっくりと変化していく。


「黒……」


 変わっていく色は黒だった。私は首をかしげる。日本人だった私には馴染み深い色だけど今の私の容姿にはピンと来ない。


 エディにはぴったりだろうと黒髪のエディを見る。


「あら、黒だわ。これは好みかしら」


 ルナシーさんがエディと私を交互に見ながら言う。


「えっと」


 ルナシーさんが面白そうにニヤニヤしながら言うから言いたいことがわかってしまった。


「確かに黒と言えばエディですけど」

「旦那様の色に変わるなんてロマンチックですわね」


 リリスさんたちリス獣人たちが目を輝かせる。


「それにしても艶があって綺麗ねー。黒は黒でも漆黒だわー」

「本当ね。エディの黒とは違うかもしれないわ」

「なぜだ。我の色と同じだろ」


 エディがムッとした顔で自分の髪を指で摘まんで生地と見比べてる。


「(元日本人の)私にとって馴染みのある色ですし本当に綺麗な色ですね」

「こちらの生地にティナ様のお髪の色で刺繍をしましょうか?」

「あ、赤褐色の花とかって入れてもらえますか?」

「はい。このようなデザインでどうでしょうか」


 リリスさんがその場でデザインを描いてくれる。


「素敵ですね。エディ、どう?」


 まだ髪を気にしてる様子のエディにも見てもらう。


「うむ。良いんじゃないか?」

「はっ!!竜王様が関心を向けているうちに他の衣装のデザインも!!」


 リリスさんたちは事前に用意していたらしいデザイン画を机に乗せていって私とエディに意見を聞いていった。


「それでは仕上がり次第連絡します」

「ああ」

「よろしくお願いします」


 そして話が固まりリリスたちが帰りエディも仕事に戻るとルナシーさんが思い出したように言う。


「そういえば大変なのよ」

「何がですか?」

「大事件よ」

「ど、どうしたんですか」

「マナが三度寝から目を覚まさないのよ」

「マナさんが……でもそのうち起きるんじゃ」

「だと思ってたんだけど寝方が何十年も眠りにつく状態と同じなのよ」

「えっと、それって目覚めさせて良いんですか?」

「それは大丈夫。上級妖精が言うんだから問題ないわよ」


 こうして私たちはサヨちゃんとマナさんを起こす方法を考える会議を始めることになった。



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