未来視
サヨちゃんは今にも眠りそう。寝言のようにぼんやり話し始めた。
「にゃんにゃん……サヨは見たのにゃん、にゃん……竜王様とティナ様と竜王様にそっくりの男の竜人の子供……」
「それって!!」
「我とティナの子供か!!」
エディとの子供。エディにそっくりの男の子。
「嬉しい……エディ」
「ああ」
「お世継ぎが無事に生まれるのですね。良かったです」
「にゃん……それから山猫の双子、男の子と女の子の赤ちゃんがいて」
「山猫!?エディ、山猫!!え、山猫って私から生まれるの?あ、私の子供じゃなくて?」
「うんにゃ、双子赤ちゃんはティナ様と竜王様の子供にゃん」
「え、でも、あれ?さっきの話じゃ」
「ティナは山猫一族の力を継いでいる。獣人の我の子種「こほん、竜人である主と結ばれたティナ様は獣人を身籠ることになります。山猫一族特有の力を引き継いだ獣人が生まれるということは考えられることです。生命のことですので想定してこなかったことも起きるでしょう。ティナ様やティナ様の母君のような存在がいたことも我々には初め想定していませんでしたし」……うむ」
ネイツさんがエディの言葉を遮って一気に解説してくれた。
「とにかくー可愛い子供が3人生まれるってことねー良かったわねーティナー」
「はい!!」
「ティナの赤ちゃんー?ティナみたいに面白いかなー」
「面白いかなー」
「私は普通だって。普通の成長だってば」
ルルには人間としての健やかな成長を面白がられてた。獣人の赤ちゃんがどうやって成長するのかはわからないけど多分普通だ。ルルたちは見慣れないから珍しがるだろうけど。
「サヨ、未来視は主とティナ様のお子様が生まれているということなんだね?」
「にゃー……双子がツルを大きく成長させてサヨをぐるぐる巻きにしてきゃっきゃっ笑うのにゃん……。困ってたらティナ様がほどいてくれたのにゃん。だけどほどいてる間に眠った双子が寝たままサヨの手を握って離さないのにゃ。それもティナ様がほどこうとしたら双子が泣きそうになって、仕方ないからサヨも双子のベッドで一緒に寝ることにしたのにゃん。それが未来視にゃん」
サヨちゃんが視た未来。聞いただけでも未来の自分が幸せを感じているのがわかる。
「未来視だって感じて、それだけじゃなくて不思議な心地いい感じがしたのにゃん。竜王様はいっつも乱暴にゃん。だからきっとティナ様がいるからこんな気持ちになるはずにゃんって思って、小鳥たちがこっちにティナ様がいるって噂してるのを聞いてここに来たのにゃん」
「サヨちゃん……きっと未来でサヨちゃんは私たちと仲良くしてくれてるのね。ありがとう」
山猫の血を引いたスナネコの獣人、お母様にそっくりな親戚のサヨちゃんに強い繋がりを感じる。
「にゃん。それからネイツおじさんに聞こうと思ったことがあるのにゃん」
「なんだい?」
「双子はどっちも可愛い赤ちゃんだったのにゃん。だけど男の子の方だけなんだが見てるとそわそわしてざわざわしておかしな気分になったにゃん。男の子は大丈夫かにゃん?何か良くないことが起きるのか起こすのか、何かあるような感じがしたのにゃん。サヨの前の未来視持ちはこんなことあったにゃん?」
「そんな!!危険な目に遭うの!?それともエディとロイドみたいに竜人の兄と争うことになったり!?」
「ティナ、大丈夫だ」
エディがそう言って私の肩を抱き寄せる。
「はい。ティナ様落ち着いてください。サヨ、それは未来視は関係ないよ」
「関係にゃいのにゃん?」
「そう。それは番だからだ」
「番にゃん?」
「番?」
「獣人には稀に番がいて出会った瞬間にわかる運命の相手なんだ。サヨは未来視で番に出会ったんだ」
「にゃん……」
前世で読んだことがある。運命の番との恋物語。
「そっか、サヨちゃんは息子のお嫁さんになってくれるのね」
それは強い繋がりを感じるはずだ。遠い親戚だったサヨちゃんが家族になるんだ。
「にゃん……それって良いことにゃん?」
「番にはトラブルもつきものだけどライオン獣人の恋愛ほどアグレッシブじゃないよ」
「じゃあ良いにゃん。ライオンは未来視の常連客にゃん。猫騒がせにゃん」
獣人隊の隊長さんとかを未来視で見るのかな。
「番は出会うと離れ難くなります。主、いつになるかわかりませんが王宮にサヨの部屋を作ってはどうでしょう」
「そうだな。サヨは次にいつ起きるかわからん。未来視のこともあるし王宮に住まわせておいて良いだろう」
「え、サヨちゃん王宮に住むの?」
「ええ。元々サヨの面倒はサヨの兄と姉が見ているんですけど未来視があるサヨでなくても猫は基本寝てるので未来視を見たサヨに気付いて起きた状態で主のところまで連れてくるのに苦労してたんです。だから前々からサヨに王宮に住むことを提案してたのです」
「王宮で監視できれば楽だ」
「サヨは監視されたくないにゃ!!反対にゃ!!でも今までと違ってティナ様がいるにゃん……ティナ様のそばは落ち着くにゃん……どうしようかにゃ」
私をちらちら見ながら迷う素振りを見せるサヨちゃん。可愛い。
「サヨちゃんが王宮に住んでくれたら嬉しいな」
「にゃん……。じゃあ住むのにゃ。でも竜王様!!サヨに乱暴するのは駄目にゃんよ!!」
「ふん。忙しいのにそなたが寝るのが悪いのだ。未来視を見てから我に未来視を告げるのにほぼ毎回半年近くかかってるんだぞ。未来視が過去になってることが何度あったことか」
「ティナ様、できれば1日に1度起こして未来視を見たか確認してもらえると私たちの仕事が減って楽です」
「えっと、はい」
「ありがとうございます」
「私もーサヨちゃん探しの仕事が減って楽できるわー。ありがとーティナー」
感謝されることなんだ。またしても、うとうとしだしたサヨちゃんを見ながらちょっとサヨちゃんって問題児なのかもと思うのだった。
「ティナ様、サヨを抱っこして王宮まで連れていくのにゃ」
「あ、うん良いよ」
サヨちゃんが私に両手を伸ばすから抱き上げる。
「おいティナは我と」
「そうだ主様ー!!散歩はどうしちゃったんですかー?デート中だったのにー」
「ティナ様を放っておくというのはいくら主でも」
「う……今から再開を」
「ティナ様ーサヨは騒がしいところが嫌いなのにゃー。早く王宮に連れていくのにゃ」
「自分から来たくせになんて我が儘な猫なんだこいつは。ネイツ、お前がサヨを運んでいけ」
「嫌にゃー。ティナ様が良いのにゃー」
「無理だ。重くて運べん」
「にゃー!!サヨは重くないにゃ!!」
「えっと、重くないよ?」
「王宮まで持ってると疲れるだろ」
「んー大丈夫だと思うけど」
確かに羽のように軽いってわけじゃないけど。サヨちゃんは5才の子供だと思えば納得なくらい。
「にゃにゃ……これでどうにゃ!!」
何か感じ取ったのかサヨちゃんは獣化した。獣化して猫の姿になったサヨちゃんは不思議と軽くなった。
「獣化すると体重も変わるんだ」
「これで王宮まで運べるにゃ?」
「うん、ありがとねサヨちゃん。でもエディ、女の子に体重のこと言ったら駄目でしょ」
「こいつはティナより年上だぞ。女の子じゃない」
「長寿の獣人からすると若いですけどね」
「それにサヨちゃんは5才扱いですよー主様ー」
「ふん」
「静かにするのにゃー。サヨは寝るのにゃー」
サヨちゃんはそう言うとすぐに眠ってしまった。
「騒がしかろうがどこでも寝るくせに……」
「エディ……」
「ティナ、明日仕立屋のリスたちを呼ぶから一緒に」
「良いの?忙しいでしょ?」
「問題ない」
「ありがとう」
こうして私は息子のお嫁さんと出会った。その後私も息子たちもほとんどの時間を寝て過ごしているはずのサヨちゃんに振り回されることになるのは遠くない未来の話──。




