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妖精のくしゃみが人生を変える  作者: 柏木紗月
ランダ新生活編
41/55

仲直り


 エディと話すのはエディの時間がとれた昼過ぎということになった。 


 昼食を食べて自室で休んでいるとエディが来たと知らせをもらう。


「ティナ」

「エディ、お疲れ様」


 部屋に入ってきたエディは疲れているみたいだし何だかいつもと違う。まるで怒られた子供みたい……私のせいだわ。


「えっと、エディ、この前はごめんなさい」

「いや」

「主様もうネイツを連れていって良いですかー?デートなんですー」


 サリさんがネイツさんの腕をがっちり掴みながら言う。


「ああ」

「ルルちゃんとーネルちゃんもおいでー」

「ルル、ネイツに乗ってお散歩ー」

「ネルもネイツに乗ってお散歩ー」


 昨日いつの間にかサリさんに誘われたらしいルルとネルはネイツさんの背中に乗って散歩に行くそうだ。


「では主、ちゃんと仲直りしてくださいね」

「……早く行ってこい」


 そうしてサリさんたちが出ていくと部屋には私とエディだけになった。


「……」

「……」

「行くか」

「え?」

「散歩だろ」

「あ、うん。行こ」


 散歩に誘ったら良いわよって言われてたけどサイネスさんを呼び戻したりネイツさんとサリさんが散歩デートに行ったり段取りをしていたんだから私と散歩に行くっていうのは既に決まっていたことなんだろう。


 エディについていくと王宮の屋上についた。


「さて、どこに行く?」

「うーん、どこでも良いよ」

「ふむ」


 エディは少し考えてから獣化した。


「ティナ、乗れ」

「うん」


 エディの大きな背中に乗る。こうして乗せてもらうのは3回目だ。


 ゆっくり羽ばたいてから空を飛ぶ。どこに向かっているというわけでもないみたい。


 地上でこちらに向かって手を振っている人たちに手を振り返す。


「ティナ」

「なに?」

「すまなかった」

「私こそ怒鳴ってごめん」

「我がローナを好いたことなど一度もない」

「……本当?」

「血の誓いをしている。血の誓いに背いたら我は死んでいる」

「血の誓い……?死……?」

「婚姻の誓いで血を交わしただろ」

「うん」

「あれも血の誓いだ。婚姻の誓いをすると別れることができない。だが我の母親とロイドの母親のことがあるように好いていなくとも血の誓いは可能だ。ある意味形だけのものだな。ただしどんなに相手を嫌っても婚姻を解消したいと望むと死ぬ」

「死ぬ……望んだだけで?」

「絶対に婚姻を解消してやる、と強く望むと婚姻の誓いの力が働いて死ぬ」


 あの婚姻の誓いにそんな力があるなんて。


「でも獣人は複数人と結婚できるのよね。そんなことしなくても結婚したまま別の人と結婚すれば」

「そうだ。だから滅多に婚姻の誓いの力が発動することはない。我が知っているのは親に決められた結婚相手に互いに好いて結婚した相手を殺された獣人が怒りに任せて離婚してやると叫んだ時だ。婚姻の誓いの力で血を吐いて死んだ」

「……病気だったとかじゃないんだ」

「ああ。風邪一つひかない屈強な大男……ライオン獣人で一代前の獣人隊の隊長だ。今の隊長の兄だな」


 例の獣人隊の隊長さんのお兄さん……。なんだろうか、最近よく聞く。


「ライオン獣人には恋愛絡みの問題が起きやすいがあれは珍しいことだった」

「そうなんだ」

「それで血の誓いだが、婚姻の誓いとは違って誓いの内容に決まりはないが破れば漏れなく死ぬ強力な誓いだ。罪人に使うことが多い」

「罪人に……。それをローナと?」

「ああ。昔のことだが我の結婚相手の候補にローナがいた。絶対にあり得ないが。絶対に」


 私が何か言う前に強く否定された。


「う、うん」

「竜人は竜人と結婚するのが常で母は特殊だった。他の竜人に嫌われていた我が竜人と結婚することはない。だから必然的に他の種族からということになった。それで身近な側付きだったローナが選ばれた。それだけだ。我もローナも大反対でローナの言う抗議デモをしたほどだ」

「抗議デモ?」

「うむ。ローナがこういう時はのぼり旗を作ってハチマキを巻いて抗議するんだと言って。地下に母上の父上が来る度抗議デモをしていたんだ。それでルナシーがいつか好きになるかもしれないじゃないかとかそんなに嫌なら結婚させられないように血の誓いでも立てたらどうだと言ってな。そこまでしなくてもと言う父上と母上の反対を押しきって絶対に互いに好きにならない、結婚しないと誓ったのだ」


 死んでしまう誓いまでしてお互い結婚したくなかったんだ。


「ローナを好いてなどいないと信じてくれるか?」

「うん、信じるよ」


 さすがに強力な誓いを掻い潜ってローナを好きになったとも思えないし。


「疑ってごめんね」

「我が勘違いさせるようなことを言ったのが悪い。すまない」

「ううん。勘違いした私が悪いんだよ。えっと、それじゃあお互い様ってことで良い?」

「うむ、そうだな。我が初めて好きになったのはティナだ」

「私も前世含めてエディが初めて好きになった人だよ」


 仲直りできた私とエディ。


「帰ろうか?」

「いや、せっかくだからもう少し」

「仕事は良いの?」

「サイネスがいるから問題ないだろう」

「そっか」


 信頼されてる証拠なんだろうけどやっぱりサイネスさんが不憫だ。


「そういえば今日のサイネスは何を言ってもへこたれなかったな。甥に会う約束をしているらしい」

「そうなんだ。あ、私会ったことあるよ甥っ子くん。可愛かった」

「ジャンが?」

「うん。え?なに?」


 何か引っ掛かるところがあったかな。


「いや、確かに可愛らしくもあるのか。サイネスと一緒に働きたいからと我に強いところを見せようと挑んでくるところが」

「え、そうなんだ」

「会うと大人になったら側近にしろとまとわりついてくるところも可愛らしいといえば可愛らしいか」

「ジャンくん……可愛い。そんなに憧れの叔父さんと一緒に働きたいんだ」

「ふむ」


 エディは何故か進む方向を変えた。


「どうしたの?」

「久しぶりにまとわりつかれに行こうかと思ったが良いか?」

「ジャンくんに会いに行くの?」

「うむ」


 そんなに気軽に会いに行くんだ。


「良いよ。どこにいるんだろうね」

「わからんがとりあえずジャンの家に向かう。いつもなら我が飛んでると向こうから駆けてくるから下を見ていよう」


 そう言うそばから小さな狼と小さな犬が走っているのを見つける。


「いたな。ジャンとディックだ」


 私にはあの狼と犬が昨日一緒に遊んだ子たちかわからなかったけどやっぱりそうなんだ。


 ディックくんは治療院で院長をしているお父さんに憧れてる犬獣人だ。


「ディックくんのことも知ってるの?」

「ああ。ディックの祖父が我の父親が生きていた時の獣人隊医療部隊の長で父が亡くなったあと暫く経ってランダに治療院を創って院長をしていたのだ」

「へえ、そうなんだ」

「ジャンは突っ走りがちで周りが見えないところがあるがディックは」

「竜王様ー!!」

「竜王様ー!!あ、ティナ様もいる!!ジャン、ティナ様も!!」

「竜王様!!俺を側近にしろー!!」


 ドォーン──


「きゃっ」

「わー!?」

「ひゃー」




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