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妖精のくしゃみが人生を変える  作者: 柏木紗月
ランダ新生活編
34/55

果樹園



 翌日私はベルーナについてきてもらって山猫一族が管理をしていた森にやってきていた。


 森というか、森の中に果樹園があった。そこには、リンゴやモモ、ブドウ、他にもたくさんの果物が実っていた。


 どうやら魔法の力が影響していつでも美味しい果物が育ち続けているらしい。


 山猫一族がいなくなってからは国預かりということになったからエディの部下が管理者になっていた。


「ルル、りんごが食べたいなー」

「ネル、モモが食べたいなー」

「どうぞどうぞ」

「「わーい」」

「え、良いんですか?」


 あ、ルルたち飛んでいっちゃった。


 管理者をしている羊獣人のハルクさんは見た目50才くらいで穏やかに笑う。


「良いんですよ。ここは誰でも自由に入って良い場所なんです。食べ放題です。といってもここの果物を国民に提供してるので基本市場で受け取るのですけど」


 ちなみにこのランダに通貨はないそうだ。所謂物々交換的なものになるみたい。でも生活に必須な最低限の衣食住は無償で提供するものなのだそう。


「それにしても食べ放題……」

「ティナ様もどうぞ。というよりこれからはティナ様がここを自由にされて良いのです。私はティナ様をサポートするように竜王様から仰せつかっていますから何でも仰ってくださいね」

「えっと、ありがとうございます」

「ティナーりんご美味しいよー」

「ティナーモモも美味しいよー」


 ルルとネルがそう言って私にりんごとモモを差し出してくれる。


「「ベルーナにもあげるー」」

「わあ!!ありがとうございます!!」


 ベルーナはなんの迷いもなく食べ始めた。


「本当に食べて良いんですね?」

「ええ、もちろんです」


 それなら遠慮なく。


「いただきます。……あ、え、美味しい!!」


 りんごを一口噛ると甘さが口いっぱいに広がる。


「それは腸内環境を良くする効果が他の品種より高いりんごです」

「へぇ、そうなんですか?」

「はい。ここの果物は品種改良されているんです。他にも毛並みが良くなる効果、薬草程ではありませんが傷の治りが早くなる効果、あとこれなんて凄いですよ。一時的に獣人の固有魔力が1.5倍になる効果」


 ……品種改良ってなんだっけ。


「ティナ様、食べると痩せる効果がある果物もあるんですよー」

「それは嬉しい」

「あと食べると女子力アップする効果なんてのも」

「な、なにその効果。私が知ってる品種改良と違うわ」

「品種改良は山猫一族のような特別な力がなくてもできるんです。だからわりと人気の職業で自分の魔力を使って新たな効果を付与して品種改良するんです」

「そういう職業があるのね」


 私はびっくり効果のある品種に気を付けながら果物食べ放題を楽しむことにした。


「ベルーナ、この国の人たちの暮らしについて聞きたいんだけど」

「はい!!」

「まず仕事についてなんだけど」


 ただ食べ放題をするより勉強しながらの方が良いと思ってベルーナに聞く。


「えっと、基本的に獣人は自分の力に適した仕事につきます。攻撃力のある獣人は獣人隊に入りますね。治癒力のある獣人も獣人隊の専門部隊に入ったり治療院で働いたりします」

「それって獣人隊か治療院に入らないといけない決まりがあるの?」

「まさか!!ティナ様、ランダは自由な国なんです。だから滅多なことじゃ強制されないんです。いい加減な仕事をしてたら怒られちゃいますけど」


 そう言うベルーナの両手にはモモとブドウが抱えられている。食べ放題を満喫しているようだ。


「それはそうよね。でも自由なのね」

「はい。でもだいたいみんな自分の力を生かせることがしたいんです。だからそういう職業に就く人が多いんですよ」

「そうなのね」

「あと獣人一族に特化した力もありますね。でも山猫一族のように全員が、というのは珍しくてほとんどが一族の中でその力を持ちやすいっていうものが多いんです。なのでそういう人は代々おうちでやってるお仕事をするっていう人もいますよ」

「例えばどういうのがあるの?」

「お針子はリス一族が多いです。ティナ様の衣装を仕立てるのは本家の獣人たちです。王族の衣装は彼女たちが担ってるんですよ」

「そうなの」


 私は可愛いリスたちが採寸したり衣装を当てたりしてくれる姿を想像してみた。


「可愛いわね」

「明日は私の友達もその1人として来ますよ。素敵な衣装を仕立てましょうね!!」

「ええ、楽しみにしてるわ」

「ベルーナ、大事なことを忘れていませんか?」

「え?あ、そうそう!!」


 ハルクさんの言葉にベルーナは思い出したと手を叩く。


「ランダには位の高い獣人一族がいるんです。そういう一族の獣人もその仕事に就いてますよ」

「あ、山猫一族は竜王様のお付きをしてたっていうのね」

「そうです。虎の一族は竜王様の側近を勤めたり要職に就いてますよ」


 虎ということはネイツさんね。


「今の虎の一族当主はネイツさんって女性に大人気のイケメンなんです。ってご存知ですよね」

「ネイツさんはご存知だけど女性に大人気なのは知らなかったわ。でもイケメンだもんね。優しいし」


 しかもネイツさん当主なんだ。


「そうなんです!!ランダの上司にしたい獣人ランキング1位を400年取り続けてるんです」

「400年……。上司にしたい獣人ランキング……」


 そういうのあるんだ。なんとなく思ってたけどランダの子たちって日本の女子っぽいわ。


「あと、えっと、忘れちゃいけないですね。ハルクさんの羊獣人も位が高いんです」

「そうだったんですね」


 ハルクさんは嬉しそうに頷く。


「はい。ライオン一族が武、羊一族が知を牽引しているんです。ライオン一族はもっぱら獣人隊ですけど羊一族はいろいろな役職に就いてます。私のようにこの森の管理者を代理で勤めていたり先程の品種改良をする研究所の責任者をしていたり」

「そうなんですね」


 あ、じゃあ私が管理者になるのは良い気がしないんじゃ。そう言うとハルクさんは何故か羊の姿に変身してしまう。


「そんなはずありませんよ!!山猫一族の力は素晴らしいものです。その力をお側で見れるなんてこんなに喜ばしいことはありません!!」


 ハルクさんは羊の姿でバタバタしながらそう叫ぶ。


「早くその力が見たくて仕方ないんですメー!!」

「メー……」

「でも竜王様が昨晩ティナ様は環境が変化したばかりだから働くのはまだ先だと仰って……!!ああ、私たちは山猫一族の子孫がこのランダに来られると聞いて一族総出で柵をぴょんぴょん飛びはねるほどだったのに!!」

「なに……?柵を?」


 あれか?羊は一匹羊は二匹……って、まさかね。


 私はぴょこんぴょこんとその場で飛びはねるハルクさんを見て想像を振り払うように首を振る。


「とにかく喜んでくれてるなら良いんですけど」

「もちろんです!!何でもお手伝いしますから仰ってくださいね」

「ありがとうございます」


 興奮が落ち着いたらしいハルクさんは獣人の姿になった。


「ティナ様、お仕事について他には何かお聞きになりたいことはありますか?」

「ううん、一旦大丈夫かも。ありがとう」

「いえ!!ティナ様にランダや獣人のことに興味をもってもらえて嬉しいです!!」


 ランダに来たばかりだけどみんな良い獣人たちばかりで良かったな。


 私はこのあともう少しだけ食べ放題を楽しんだ。





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