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混沌とした王宮


「ワオーン」

「な、なに!?っていうか何!?天井がない!?」


 王宮に近付いて聞こえた遠吠え。そしてさっきは気付かなかったけど王宮の一角の屋根が破壊されていた。


「ああ、さっき出てくる時壊したな」

「えー!!」

「そもそも王の間から外に出るのに屋根を破壊する以外方法はないだろ」

「た、確かに……」

「お前の王として初の仕事は王宮の修繕だな」


 可笑しそうに言うエディ。


「いや、壊した本人の言う台詞じゃないでしょ」

「っていうか直さないといけないのかな。王宮っている?僕は今まで住んでた家に住むから王宮なんてなくて良いんだけど」

「え、なくちゃダメなのでは……?ねえ、アリシア様」

「えっと、私もあのお家の方が落ち着いて過ごせますけど……なくちゃダメでしょうか」

「んー……でもとりあえずあのままっていうのは二次被害もありそうで危ないし直した方が良いのでは?」

「それなら獣人を派遣するとしよう。すぐに直せる」


 あれ?さっきは他人事みたいだった気がするんだけど協力してくれるんだ。


「ガオ!!おらおらおら!!さっさと全員連れてこいよ!!人間の王宮は狭いだ?そんなもん壁やらなんやらぶっ壊せば良いだろ!!」


 なんだろう。あのめちゃくちゃなことを言ってる頭が狼、体が人間の獣人の声がサイネスさんのものに似てる。


「いや、そんなわけないよね。サイネスさんは穏やかで気が小さい人だし。……でも一応、エディ、あの狼獣人って……」

「あれはサイネスだな」

「なっ……」

「サイネスの家は獣人隊の者が多い。サイネスも元々獣人隊にいて戦闘中は気性が荒いんだが平常時は気が小さい」

「へ、へぇ、そう」


 でもあの変わりようはちょっと……。


 私たちは王宮の真上にたどり着いた。


「早く連れてこいよ!!主が戻って来られるだろうが!!」

「壊して良いが後で自分たちで直すんだぞ」

「主!!ガウガウ!!」


 サイネスさんが嬉しそうにエディに駆け寄るのを見て何とも言えない気持ちになる。


「ティナさん、ご無事で何より。驚かれたでしょう」

「ネイツさん!!良かった、ネイツさんは普通ですね!!」

「ネイツだー」

「ネイツー」


 ルルとネルがこちらに向かってゆっくり歩いてくるネイツさんに向かって飛んでいく。


「ルル頑張ったー褒めてー」

「ネルも頑張ったー褒めてー」

「凄いな2人とも。中級妖精になるのも夢じゃないな」

「えーそれはいやー」

「勉強したくなーい」

「あの、ネイツさん、ライザさんとサリさんは」


 辺りを見渡しながらライザさんとサリさんの姿を探す。


 2人とも大丈夫だろうか。助けに向かった方が良いのでは。


「2人は色んなところで倒れてる獣人をここに連れてきてます。サイネスが騒いでるでしょう。主が反逆罪で一斉に裁けるように全員連れてこいって」

「ああ……え、2人とも勝ったんですか?苦戦しそうだったのに」


 そこで突風が吹いて獣人が飛んできてドサドサと積み重なる。


「おいサイネス、これで全員だぞ」

「あらーティナー良かったわーおかえりなさーい」

「サリさん!!」


 私はライザさんとサリさんに駆け寄る。


「大丈夫でしたか!?怪我してませんか!?」

「最後までお供できず申し訳ございません。ご心配には及びませんのでご安心を」

「らくしょーよらくしょー」

「そ、それは良かったですけど……でも厄介な相手だったんじゃ」

「私たちが負けるわけないじゃなーい。だって私たち主様に仕えてるんだものー」

「ロイドについていた者たちは我々の力には及ばないのです。だからこそロイドにつき卑怯な手を使っていた」

「初めにネイツが倒れちゃったからーティナは私たちが弱いと思ってたのかもーひどーい」

「い、いえ、弱いとは思ってないです!!」

「すみませんティナさん。確かにあの時は不甲斐ないところをお見せしてしまいました」

「そんなことないです!!」


 だってあの時のネイツさんは毒に苦しんでいたんだから。


「あの、ティナさん」

「あ、はい。あ、サイネスさん……」


 サイネスさんがもじもじしながら何か言いたげにしてる。さっきとは全く様子が違う。


「あの、すみません。王宮は私が責任を持って直します……」

「え、あ、はい。サイネスさんいつも通り……」

「ええ、はい。戦闘が終わってしばらくすればこの通りなのです」

「ちなみにー勝負事でもああなるのよー。チェスとかー」

「ティナ様が引いておられるじゃないかサイネス」

「すみません」

「いえ、大丈夫です」

「獣人って変わってるねアリシア」

「ス、スレイブ様……」


 スレイブ様とアリシアが小声でやり取りしているのが聞こえたと思ったら部屋の端で喚いてる集団に気付いた。


「お前のせいだ!!お前の!!」

「煩いわね!!あんたなんか私の奴隷よ奴隷!!」

「け、獣があんなに……」

「あなた、獣が、獣が……」

「我は国王だぞ!!我の国を荒らしおって!!この獣めが!!」

「わ、私は関係なくてよ!!早くこんな獣臭い所から出してちょうだい!!」

「おほほほ、本当に人間というのは見ていて飽きないわ。ほら、最後まで自分の行いを省みないで醜く足掻きなさい。ほらほら!!」


 ……あっちにもサイネスさんみたいになってる人、いや、妖精がいる。


 国王の頭に片足を乗せて高笑いするルナシーさんが悪役に見えてならない。


「おや、こちらはこれからですかね」

「セントス様」


 セントス様が人間の姿で歩いてくる。


「あれ?セントスだ。行方不明だったはずなのに」


 そういえばスレイブ様にセントス様のことを話してなかったわ。


「これはこれは、スレイブ様、アリシア様、ごきげんよう」

「セントス様、ご無事だったのですね。でもなぜここに……?」

「自己紹介がまだでしたね。私、実はこういうものでして」


 セントス様はそう言うと妖精の姿になる。もちろんスレイブ様とアリシア様には消えたように見えるはずだ。


 そしてすぐにまた人間の姿をとるセントス様。


「実は私は妖精なのです。妖精の姿は人間には見えませんが人間の姿なら人間にも見えます」

「なんだ、セントスはこの国を探るために教会に潜入してた妖精なんだね。言ってくれれば僕も協力したのに」


 スレイブ様あっさり納得してる!!


「え、え?……え?」


 対してアリシア様は当然の反応。……かと思ったら目を輝かせて礼をする。


「妖精さん、いえ、妖精様を実際にこの目に映すことができるなんて!!妖精様と妖精の乙女様に感謝申し上げます。この国の人々が今も暮らしていけるのはかつてこの国に舞い降りてくださった妖精様と妖精の乙女様のおかげです」


 アリシア様はその生い立ちからか平民と同じように妖精の乙女と妖精を敬って私にも良くしてくれた。


 教会に来るたびスレイブ様と一緒にこうやって妖精の乙女と妖精に感謝を伝えたり、どうか見守ってくださいって祈っていた。


 ルルは姿も見えてないし声も聞こえてないけどスレイブ様とアリシア様を気に入っていて言葉に毎回返事をしていたのよね。


「いつもあなたのその言葉を聞いていましたよ」


 セントス様が言うとアリシア様は感動したようにスレイブ様の手を取って笑う。


「スレイブ様の言うように潜入してこの国を調査していました。私はこの国の王族と貴族が大嫌いですがそれでも潜入する中で知り得た情報で良いこともあります」


 セントス様は穏やかに笑う。


「王族と貴族の血を引くスレイブ様とアリシア様の存在です。妖精に感謝の気持ちを持ち、妖精の乙女であるティナ様を敬い良き友人として接するあなた方がこの国の王と王妃になることを私は嬉しく思います」


 ローナを捨てた当時の王子、妖精の乙女を蔑ろにした貴族を見てきたセントス様。


 ルナシーさんがローナが愛したこの国を終わらせたくないと思ったのと同じくセントス様もこの国を大切に思っているんだな。


「わ、私に王妃様が務まるかわかりませんけど傀儡になるだけって聞いてるので頑張ります!!」

「傀儡……ですか?」

「そうだアリシア。もう1人妖精に会ってるよ」

「本当ですか!?」

「うん、洗脳されてるときだけど。ナンシーに会いに来た偉そうな女がいたでしょ。ほら、あそこで国王に足乗せてる悪役みたいな」

「え!!あの人も妖精様なの!?」

「あれが僕たちが言うことを聞く女王みたいな妖精だよ」

「妖精様ってやっぱり美しいのね……あんな綺麗な妖精様の傀儡になれるなんて素敵です」


 本当に傀儡で良いんだろうか。っていうかさっきまでロイドに洗脳されてたのに今度は傀儡にされるって……心配だけどアリシア様が嬉しそうだから良いんだろうな。






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