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竜の背



 ラリア砂漠は火の海になっていた。ゴウゴウと燃える炎は宙に舞い上がり渦を巻くように大きな球体になっていく。


 ミゼルダさんの背でその光景を見る。灼熱であろう炎は恐ろしいはずなのにそれが誰のものなのか知っているためかその人の無事を証明している炎の球体に心が奪われる。


 そして炎が宙に浮かせている大きな存在が現れる。


「わぁ」


 私かスレイブ様かアリシア様か、いや、全員が圧倒された。


 大きな白銀に輝く角、漆黒の竜がそこにいた。燃える炎と同じ色の瞳が私に向けられるのがわかった。


 球体が小さくなっていき、そして消えたと同時に大きな竜もパッと消えた。と、思えばすぐ目の前に角と翼と尻尾の生えたエディがいた。


「ティナ」


 エディはミゼルダさんの上に乗る私の腰に手を回して抱き上げた。


「ちょっ、エディ!!危ないでしょ!!」

「煩い」

「はっ!?」


 煩いって何、と文句を言おうとした私の口が塞がれる。


「……勝ったんだね」

「当たり前だろ」

「ロイドはどうなったの?」

「ティナ、そなたは我のことだけ気にしろ」

「死んだの?」

「……生きてる。だが長くはないだろう」

「そっか」

「あと20年くらいだな」

「え?」

「あいつ、自分は獣人を殺す毒に勝つ最強の竜だって言ってあの毒を大量に摂取してた」

「な、そんな馬鹿な!?」

「体内ごと焼いたから結果的に今すぐ死ぬことはないが以て20年ってとこだな。ミゼルダ、あいつをランダの牢獄に」

「承知いたしました、陛下」


 あの毒を自ら飲むなんて信じられない。エディに助けられた形になったロイドはミゼルダさんたちによってランダに運ばれることになった。


 そしてエディは再び竜の姿になり私はその背に乗る。


「おお……」


 竜の背中に乗る人生が訪れるなんて。


「不本意だがそなたらも早く乗れ」

「うん、ほらアリシア」


 少し震えてるアリシア様の手をとるスレイブ様。


「大丈夫ですよ、アリシア様。エディは傲慢で粗暴ものですけど怖くないです」


 エディが何か言おうとしたけどエディの背に乗る決心がついたらしいアリシア様を支えて気にしなかった。


「アリシア、僕はサクティラの国王になるんだ。だからアリシアは王妃になってね」

「は、はい!?」

「良かった。安心して。僕たちはこの竜の王様と女王様みたいな妖精の言うことを聞いていれば良いんだから」

「いやスレイブ様、アリシア様同意してません」

「我はサクティラのことをどうにかする気はない。ティナの敵を殺るだけだ」

「いや、別に殺すまでしなくて良いんだけど!!」


 アリシア様は何がなんだかわからないって顔をして助けを求めてきたから簡単に説明してあげた。


「わ、私にそんな大役が務まるでしょうか」

「だから傀儡で良いんだって」

「ス、スレイブ様、傀儡でも王妃だなんて……私は」

「ティナ」

「え、なに?」


 アリシア様を落ち着かせようとしてるとエディが声をかけてきた。


「そやつはティナの敵か?」

「違うに決まってるでしょ!!アリシア様は友達!!」

「ふむ。ではそやつに会うためならサクティラに帰還することを許そう」

「え!?私里帰り許されなかったの!?」


 もちろん私はエディと結婚したし、結婚したからにはランダに住むしサクティラにはなかなか帰れないだろうと思ってたけど。


「竜の王様、束縛はほどほどにしないとティナに嫌われるよ」

「ふん、そんなわけないだろう」

「いや、度が過ぎるのはちょっと」

「な……」


 なんで絶句してるのよ。


「ふふ」

「アリシア様?」


 アリシア様が突然笑いだす。


「あ、ごめんなさい。そういえばティナ様が結婚したって仰っていたなって」


 アリシア様は洗脳にかかっていた間のことも覚えてるそうだ。


「この竜の王様という方がティナ様の旦那様なんですね」

「う、うん、そうね」


 だ、旦那様ってちょっと恥ずかしいわね。


「とても愛されているようで」

「そ、そうね」

「あ、そうです。ティナ様は竜の王様とご結婚されたので王妃様なんですね」

「……確かに!!」


 待って、そうだわ、私王妃!?


「何故驚くのだ」

「気付いてなかったの?馬鹿だねティナ」

「い、いや、そこまで頭回ってなかったっていうか。どうしよう、エディ、私王妃なんてできない!!」


 まともに貴族もやってこなかったのだ。王妃業なんてできない。


 ぺしぺしとエディの背中を叩くとエディはため息をつく。


「ランダに貴族なんていない。社交なんてものもない。王妃のやることなんてものもない」

「そ、そうなの?じゃあなにすれば良いの?」

「好きに過ごせば良い」

「そうなんだ。でも好きにって言われてもそれはそれで……」

「ルルと遊べばいいよー」

「ネルと遊べばいいよー」


 そばにいたルルとネルがくるくる回る。


「そ、それで良いの?」

「ああ、妖精と遊ぶことは最も推奨されることだな。なんせ妖精は我々の友だから」

「え、そうなんだ」


 やっぱり獣人と妖精の関係って不思議。


 私はなんとなくサリさんみたいな狐の獣人やネルダさんみたいなうさぎの獣人が妖精たちとおいかけっこしてる姿を想像する。


「なんか癒される……」

「私、ティナ様も王妃様なのでしたら頑張れそうな気がします。あ、悪い意味ではないです!!」

「わかってます。アリシア様なら素敵な王妃になれますよ」

「えっと、ありがとうございます」




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