異母妹の怒り
「どうして戻ってきてしまったのお姉様?せっかく私が追い出してあげたのに」
「いろいろあったのよ。あんたには関係ないけど」
ナンシーは苦々しい顔をしたかと思うと笑いだした。
「あははは!!お姉様のそういうところ大嫌い」
「あら、そう」
「私と違って貴族の両親から生まれたくせに汚い屋根裏部屋に押し込まれて母親は死んで父親には愛されない。家族にも婚約者にも疎まれて綺麗なドレスも宝石も何も持ってない不幸なお姉様」
「哀れんでくれくれるの?」
「違うわ。そんなことしてあげない。だってお姉様ったらそんなに不幸で惨めなのに悲しまないんだもの。どんなに踏みつけても踏みつけても平然としてる。だからお姉様が絶望するまでお姉様から何もかも奪ったのよ。妖精の乙女もマルクス様も」
「……残念だけど嬉しかっただけで絶望なんてしなかったわ。なんなら感謝してる。妖精の乙女なんて肩書きもマルクスも別にいらないもの」
「なんなのよ、お姉様もアリシアもなんで不幸にならないのよ」
「アリシア様?」
「あら、お姉様知らなかった?アリシアも父親と継母と異母妹から疎まれてそこの王子もどきと婚約させられたっていうのに自分は幸せですって顔しちゃって馬鹿じゃないの」
「幸せなんだから良いじゃない。人の幸せは人それぞれなのよ」
どうやら異母妹は平民の母親から生まれた自分より私たちが不幸だと思いたいらしい。
なんて性格の悪い。いや、ひねくれた性格だっていうのは知ってたけど。
「なに言ってるのよ。幸せっていうのはね、最高の人に愛されて贅沢できることよ。私は今史上最高の人に愛されてるの」
「はいはい。ロイドでしょ。でも意外だったわ。ナンシーは愛する人のたった1人の愛する人になりたいと思ってたわ」
「は?ロイド様は私だけを愛してるわ」
「あらナンシー知らないの?ロイドには既に愛する妻がいるのよ」
愛してるのかは知らないけど。
「そんなわけないじゃない!!」
「知らなかったのね、可哀想に。奥さんはこの地下にいるそうよ」
「嘘よ!!」
「本当よ」
「ちなみにティナにはエディっていう旦那ができてティナだけを愛してるようだよ」
「なっ、スレイブ様!!」
何を言うのよ。た、確かに言われたけど!!
「お姉様が……結婚……?」
「うん、イケメンだよ。王様だからお金持ちだろうしね」
スレイブ様がペラペラ喋るからナンシーは震えるほど怒りだした。
「お姉様が幸せになるなんて許さない!!行くのよあんたたち!!お姉様をやっつけなさい!!」
ナンシーの言葉にアリシア様とマルクス様が私たちに向かってきた。
「願ったり叶ったりだわ!!サリさん、ライザさん、マルクスはどうでも良いけどアリシア様をこのまま連れて逃げましょう!!」
だって私たちの役割はアリシア様を救出するだけで後は獣人軍の獣人たちが何とかしてくれるもの。
ライザさんがマルクスを気絶させサリさんがアリシア様を捕まえて額に手を翳す。
「アリシア!!」
「……スレイブ様……」
サリさんが魔力を流してアリシア様が元に戻ったみたい。
洗脳を解いた影響かふらついたアリシア様の体をスレイブ様が支える。
「ごめんなさい、私……ティナ様……」
「謝られるようなことされてないから大丈夫。それより逃げるわよ。アリシア様、走れる?」
「は、はい」
「アリシア」
スレイブ様が差し出す手を取るアリシア様。
「ちょっと!!どういうこと!!あ、あんたたちもお姉様をやっつけなさい!!」
ナンシーの言葉で壁際にや立っていた鎧をつけた人たちが動き出す。
「あっ、この人たち神官だわ!!」
「そうよお姉様。お姉様を妖精の乙女だって祭り上げてた神官たちも私のものになったの。悔しいでしょ」
「別にどうでも良いわ。それより数が!!」
部屋の扉からも神官たちが洗脳されたマルクスと同じ表情で入ってきた。
ざっと20人もの神官に出口も塞がれた。
「サリさん……」
「大丈夫よー。突っ切っちゃいましょー」
「ルルとー」
「ネルがー」
「「これを掴んでー」」
「あ、ちょっと2人とも!!」
ルルとネルが麻袋から種を取り出そうとして人食い花だと思って焦ったけど違うようで止めようとした手を止める。
「「投げるー」」
ルルとネルが投げたのは花粉が出る普通の花だった。
その花が神官たちに向かって飛んで神官たちは一斉にくしゃみをしだす。
「それからこれもー」
ルルがそう言ってナンシーとマルクスに向かってある種を投げるとナンシーの頭の上からどしゃ降りの雨が降る。
「ぎゃー!!なにぶぎゃびぇぎ」
「うん、なに言ってるかわかんないけど頑張れ。ルル、ナイスよ」
そう言ってルルとハイタッチする。
その間にサリさんとライザさんがくしゃみをしてる神官たちを倒していく。
「さ、行きましょー」
「はい!!」
部屋から出ると獣人と人間が入り乱れていた。
獣人隊は黒いマントをつけてると聞いている。その獣人隊の獣人たちが戦っている。
戦ったことのない貴族たちが大半だけどやっぱり数が多い。押されてはいないけど拮抗してるみたい。
獣人隊の1人、ライオンの獣人が私たちに気付いた。
「サリ!!向こうから逃げろ!!」
「はーい隊長ー。行きましょー」
「はい!!」
前にサリさん、後ろにライザさんというさっきと同じ体制で私たちは出口に向かう。
だけど次々と獣人や貴族が襲いかかってくる。




