山猫の能力
セントス様によると、お父様たちを王宮に連れて行った後貴族たちは王宮で行われた夜会に集められた。
元々ナンシーに頼まれたマルクス様が主催した夜会で、ロイドはそこでサクティラの支配を宣言したそうだ。
反発した貴族や騎士たちを力で抑えて今も王宮で奴隷として働かせているらしい。
「それじゃあ王都はエディの義母兄さんに制圧されたってことですね。地方は普段通りに見えましたけど」
「はい、ロイドの目的はこのサクティラの豊かな土地なのです。ですがそれらが育つのは農民たちがいるからこそ。なのでそのまま働かせるつもりのようです」
「そうですか……」
「獣人は本来魔力の力を使って作物を育てます。というより獣人の生活には基本的に魔法を使います」
「今のランダには農作物とかーお花や植物を活性化させる力がある獣人や妖精がいないんだけどねー」
「え、なくて困らないんですか?」
「土地に魔法がかけられているのであと数年は問題ありませんが弱まっていますね。先ほど話していたローナに着いていった妖精が力を持っているので次期に目が覚めるでしょう」
ネイツさんが言うとセントスが困った顔で言う。
「マナはまだ起きないのですか?私と同時に眠りについたのに」
「マナはうっかりやさんだものねー」
「下級妖精はそういうものだ。仕方ない。ロイドがマナの目覚めを待っているとは思えない。ロイドは妖精を蔑ろにしているからな。目覚めたら力尽くで力を使わせるだろうが、あいつは自分が一番だと思ってるから誰かを使うことはしても頼ろうとはしない」
「じゃあランダだと作物が育たないからサクティラを侵略したってことですね」
「魔力がなくても育たないというわけではなく育ちにくくなるだけなので私たちはそれほど気にしてはいませんけど」
そんなことのために襲われるなんて酷い。
「……作物の育てるコツを教えてあげますよ、とかじゃ駄目なんですかね」
「ティナ」
「あ、ごめん……そんな平和的な人たち、じゃなくて獣人じゃないんだもんね」
「ロイドに理屈は通じない。気まぐれで誰かを殺すやつだ。土地が目的の1つなだけで奪えるものを奪うだけだろう」
「そっか……」
「セトス、ロイドがティナのことを引き留めなかったのは何故だ。ティナに山猫の能力があることはわかっていたのだろう」
あ、そっか、私がいるじゃない。私が植物を育てるからみんなに悪いことしないでっていうのは……そういうことじゃなさそうね。
「山猫一族の力は妖精の能力と似ていることもありますが異なるものもあります。大きなところでは未知の植物を生み出すことと植物を自在に操ることです。その力を警戒したのでしょう」
「なにそれ、私そんなことできませんけど……」
「ティナさんに使うことができるかはわかりませんが遠ざけるに越したことはなかったのだと思います」
操るって前世の漫画とかで見たような木とか蔦とかで攻撃したりするのかな。
それって結構強力なキャラクターよね。私ってもしかしてただの人間じゃなくて最強キャラクターとして転生したのかも?
「ね、ねえエディ、私戦ったらめっちゃ強いのかな」
「ティナは戦う必要などない」
「そ、そうだよね、いきなり戦えるわけないしね」
「ティナさんティナさん」
セントス様が私の手に1つの茶色の種を乗せてくれる。
「これは?」
「この種に魔力を込めてみてください」
「え?あ、はい」
いつもみたいに元気に育てー元気に育てー、と言ってみる。
いつもと違うのはさっきエディとキスした時に魔力らしきものを感じたように自分の中から魔力を感じる。
なんとなく両手に持つ種に向かって手から魔力が伝わるイメージをしてみると種から芽が出てきてあっという間に自分の顔より大きな花になった。
「わあ!!なにこれ!!」
「揺すってみてください」
「は、はい……はっくしゅん」
みんなもくしゃみをしだす。
「こ、これは……花粉?」
「そうです。ルルのくしゃみで国外追放になったティナさんにぴったりかと」
な、なるほど。これで敵にくしゃみをさせて足止めしろということかしら。
「わールルもくしゃみー」
「ネルもくしゃみー」
妖精2人は楽しそうだ。
「えっと、みんなごめんなさい、窓開けますね」
そう言って部屋の窓を開ける。
「セトス」
「なんでしょう陛下」
「ティナは我が守る」
「ふぎゃ」
私を抱きしめるエディに慌てる。
「自衛できるに越したことはないかと」
「あ、あの、エディ、私無茶なことはしないよ。ちょっと前世の漫画のキャラみたいでかっこいいかもって思ったけど」
「……ふむ。セトス」
「はい。ティナさん、これを」
セントス様が小さな麻袋を差し出してくれる。
私はエディの腕をほどいてその中身を見てみる。今のくしゃみ種以外にも違う色の種がいくつか入っている。
「赤い種は人食い花です」
「人食い!?」
「青い種は雨降らし花です」
「雨……」
「黄色い種は反転花です」
「反転……とりあえず赤い種は危ないのがわかりました」
「ルル、赤い種の花見てみたーい」
「駄目!!」
袋の中から赤い種を摘まむルルから奪い返して袋の紐を締める。
「ぶーぶー」
「危ないでしょ。ほら、ルル、仕舞わせてよ」
「あーい」
ルルの口に袋を仕舞う。
「セントス様、ありがとうございます。なんか危なそうなのもありますけど心強いです」
「それは良かったです。それらはローナが作ったものです。いつかご自分で開発してみても良いでしょう」
「はい、できるならやってみたいです」
「さて、それでは話を戻しましょうか」




