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山猫の獣人


 狐獣人が私を抱き上げると素早く移動しすぐに目的の小屋までやって来た。


「主、ネルはどこです?」

「ネルここー」

「ルルもー」


 ネルとルルがネイツさんの服の中から出てくる。


「あれ、ルルじゃないか」

「あら本当ー。帰ったのー?ルルちゃん」

「うんー。ルル、ティナが国を追い出されたから一緒にランダに行くところだったのー」

「ティナ様はルルのお知り合いでしたか。ルルを届けていただきありがとうございます」

「え?いえ!?」


 狼獣人に頭を下げられて動揺する。


「私はサイネスと言います。こいつはサリ」

「あ、よろしくお願いします」

「よろしくねー。ルルちゃん無事だったのねー。良かったわー」

「ルル元気だよー」

「ネル、包帯を」

「あいあーい」


 ネルの口から包帯を出すとサイネスさんはエディの治療を始めた。


「あの、エディ、助かりますか?」

「ええ。一応ですが大丈夫ですよ」

「私が癒してあげますってばー」


 サリさんはエディを抱き締めて顔にキスしようとする。


 なんか……カップルなのかしら。夫婦とか?


 ズキン──


 い、いや、そんなことより治療のことだ。


「馬鹿、まぬけ。お前はネイツを回復させろ」

「はぁい。主様ったら照れ屋さん」

「戻ったら頭から食いちぎってやる」

「やだー主様ったら。そんなことしたら誰が主様を癒すんですかー?」

「今も癒されてなどおらん。良いから早くネイツを回復させろ。ネイツにはまだ仕事が山ほどあるんだからな」

「もー主様ったら私の旦那様に意地悪しちゃ駄目ですー」


 ん?私の旦那様?


「サリ、ネイツの奥さんになったのー?」

「そうよルルちゃん。ほんの最近2人目の奥さんの座をもぎ取ったのー」

「そうなんだー。ネイツ、いっつも自分の娘よりサリの世話の方が苦労するって文句言ってたー」

「なによー文句のつけようのない奥さんになったんだからー」


 サリさんはネイツさんの奥さんなのか。良かった。


 ん?良かった?


 サリさんは横にさせているネイツさんの側に行くとネイツさんにキスをした。


「へ!?」


 なんでキス!?そしてなんでネイツさんが金色に光ってるの!?


「うっ……」

「ネイツさん!?」


 ネイツさんが起き上がった。


「良かった。でもなんで?」

「サリか……すまない。サイネスも、合流できたか」

「旦那様ー良かったー」

「遅くなって悪かったな」

「いや。サリ、苦しい」


 ネイツさんは首に抱きつくサリさんを遠ざけながらエディの方を見る。


「申し訳ございません主」

「いや。無理させたな。ティナ、怪我はないか?」

「わ、私なんかより2人の方が。毒ってなに?ネイツさんさっきまで気を失ってたのに……」

「この毒は即効で致死にいたるものではないようだ。そもそも我々獣人は魔力が毒の回りを遅らせる」

「じわじわ効いてる感じはしますけど終わったら医者をしている獣人に見せようかと」

「で、でも魔力がないんじゃ」

「ネイツは回復した」

「そうなの?」

「はい。サリのおかげで」

「サリさんの……?」

「そうよー。私はネイツの奥さんだからー」

「奥さんだから?」

「ええ」

「え?奥さんだからなんなんですか?」

「へー?だから私はようやくネイツの奥さんの座にー」

「サリ。こいつは獣人の自覚がない」

「ほえー?主様ーどういうこと?ルルちゃんが見えてるなら獣人なんじゃ」

「そこは私たちもよくわかっていないんだよ。ティナさん、獣人は夫婦であれば魔力の受け渡しが可能なのです。先ほどお話しした先代国王と姉のように」

「そ、そうなんですか。良かった……んですかね?そしたらエディも」

「いえ、主には伴侶はいません」

「へ?でも700才なんで……そっか、姿が子供だから」

「不要だったからだ」

「えっと、いろいろ問題がありまして」

「でもそれじゃ」


 エディは回復できないんだ。どうしよう。


「あ、そうだ、さっきみたいに薬草で魔力を回復……しまった。また育てるところからやらないと」

「解毒薬はあるわよ」


 そう言って小屋に入ってきたのはキラキラした白いドレスを身に纏った金髪の美女。


「ルナシー、どういうことだ」

「解毒薬を持ってるのよ。ね、ティナ」

「え、私?って、なんで名前」


 美女の言うことに首をかしげるとルルが美女に向かって行く。


「ルナシーだールナシー」

「ルル。あなた戻ったら30年前にサボった小テストをしますからね」

「えー嫌だよー」


 ルルが美女の周りをくるくる回る。


「ルル、この人もルルの知り合い?」

「ルルの先生だよー。中級の妖精ー」

「妖せ……え?人間じゃ」

「中級以上の妖精は人の姿になることができるのよ。というより人の姿になれたら中級になれるの」


 ポンっと煙がでてきたかと思えば美女は小さい妖精になった。


「妖精……」


 そしてすぐに美女の姿に戻った。


「私はルナシー。ルルの面倒を見てくれてありがとうティナ」

「い、いえ……」

「セトスから連絡がきたわ。ティナ、あなたはランダで現在絶滅している山猫の獣人、かつてエドモンド王の侍女をしていたローナの子孫よ」

「……え、は?」


 なんだかさっぱりわけがわからないことを言われた気がする。


「私が……山猫?」

「あなたはサクティラの貴族。そうね?」

「えっと、はい」

「あなたの母親の家、数代前に当主が出家した先代の兄の娘に婿入りした男性になったわね」

「あ、はい。何代か前に嫡男が市井の女性と恋して家を出て弟が継いでいたんですけど弟とその息子が事故に巻き込まれて亡くなってしまって。市井に一家を探しにいったら両親は死んでいたど娘は見つけて、サクティラは女性は当主になれない決まりがあったので婿を取ったんだそうです」

「その嫡男と恋をしたのがローナだったのよ」

「へ?で、でもそんな話聞いたこと……ローナは市民の生活を向上させてっていうのは聞いたけど」

「詳しくはわからないけれどその間にその嫡男と出会ったのでしょう」

「もしやと思ったがやはりローナのか」

「あの、でも私猫耳も尻尾もないんですけど」

「身体は人間だけどあなたは妖精が見えるし山猫特有の植物を成長させる力もある。一部の体質で獣人の力が強いのね。先祖返りは珍しくはないわ」

「うーん……そうなんですかね」

「それでこれが本題よ。あなたサクティラで発疹病にかかったわね」

「あ、はい。そうです。サクティラで何年か前流行ってみんなは薬草を飲めばすぐ治ったのに私だけ重症で寝たきりになってしまって」

「その効果を高めたものが今エドモンドたちに打たれた毒よ。サクティラの王族がその毒を作るために市民に実験していたの。人間にとっては発疹が出る程度で済むけど獣人にとっては命に関わる毒よ」

「お、王族が、実験!?」

「あなたには獣人の血が流れているから普通の人間より症状が重かったの。その時に飲んだ薬草があるはずよ。それが解毒に使えるわ」

「え!?そ、それなら!!」


 話が衝撃的だったけど解毒できる薬草を持ってるとわかって私はルルの口から2つの薬草を出す。


「こ、これが発疹病に効くって聞いた薬草で、それでも効かなかったからこの薬草を混ぜてみたら治ったんです」

「それを魔力で効果を高められる?」

「効果を高める?」

「ティナさん、さきほどのです」


 ネイツさんに言われてさっき何かしたっけと思う。


「あーそういえばおばば様がおまじないは成長と効果を高めるものだって言ってたー」

「そういえば家庭菜園の野菜はかなり美味しくできて……ってそういうこと!?」


 私は薬草に向かって言う。


「元気に育てー元気に育てー……って、本当にこんなんで良いの?」

「ええ、良いのよ。これで効果が高まったわ」

「じゃ、じゃあ」


 私は急いで2種類の薬草を合わせて煎じる。





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