第六章(9) 少し、疲れてしまっただけです
私達は、あの後、お父様やお母様と少しお話をしました。
そして、別邸へ戻ってきました。
「おかえりなさいませ」
エントランスでは、ここで待っていたフェイや、サヤの姿がありました。
「ただいま」
私は、言葉を、発せませんでした。
発したら、泣いてしまいそうだったのです。
それを隠そうと、俯きました。
「・・・エルザ、今日は、ゆっくり休みなさい。」
お兄様は、私の頭を撫でながら、優しくそう言うと、お部屋へ戻られました。
「エルザ様、お部屋へ戻られないのですか?」
お兄様が部屋に戻ったのを見て、動き出そうとしたサヤが私を不思議そうに見ています。
「・・・戻ります」
泣きそうになるのをこらえて言いました。
そのことに気づいてほしくなくて、私は部屋へ足を進めます。
「柚紀」
後ろから声をかけられました。
「今日の夜、夕食が終わって少ししたら、ダイニングルームに来て。そこで、話、聞いてあげる。」
きっと、律は、心配してくれたのでしょう。
私が泣きそうなことに、気づいてくれたのです。
私のことは何でもお見通しの律です。
話していいことなのかはわからないけど、行ってみようと思った。
「はい。」
私は返事をして、部屋へ戻りました。
部屋に入ると、全身の力が抜ける感覚がしました。
「エルザ様、大丈夫ですか?」
私はサヤに身体を支えられていました。
「大丈夫です。少し、疲れてしまっただけです。」
「それならいいけど、疲れ過ぎは身体に悪いわ。」
「はい。」
「律がさっき言っていたこと、また今度にしてもらう?」
「え?」
「だって、この調子じゃあ・・・」
それは、今日は、この話をできないということだった。
いつまでに話のこたえを出さなければならないのか、私は知らない。だから、早いうちに律と話さなければならない。そのために・・・
「大丈夫です。今からゆっくり休みます。なので、律との約束はそのままでお願いします。」
そう言うと、サヤさんは少し考えてから、
「私も同席していいというのなら、いいですよ。」
と言った。
「律のお母さんに同席してもらうなんて恥ずかしいですけど、お願いできますか?」
「もちろん。」
こうして私は律との約束に行けることになり、安心して休むのだった。




