第六章(8) 僕、エルザ、それぞれについての提案 By ジーク
「エルザ、これからは、私達と過ごさない?」
その言葉を聞いて僕はエルザの方を見た。
エルザは、俯いていた。
こんなこと、急に言われても困るだろう。
始めはそんなふうに捉えていた。
エルザがいなくなっては困る。
それに、本邸へエルザが帰ったら、本邸にはエルザの婚約者となりたい沢山の人が来るだろう。エルザにはフェイがいるのだ。他の人と婚約だなんて、嫌に決まっている・・・あれ?
その時、急に怖くなったのだ。僕は、エルザを本邸から離すときにたまたま当主として別邸へ行った。つまり、エルザが本邸へ戻った場合、僕がどうなるのか、そこはお父様もお母様も何も言わなかった。
「・・・それはどういうことですか?」
僕はつい先日、身構える必要は無いと聞いていた。
つまり、当主を辞めさせられるかもしれない、などという話はしない。
そう信じていたのは、僕だけだったのだろうか。
「そのままの意味よ。エルザもこれからずっと別邸にいるわけにはいかないわ。だから、この機会にこっちへ戻ってきて、一緒に過ごさないか、と提案しているの。」
お母様の言っていることはわかる。
エルザがずっと別邸にいてはいけないこと。
そんなことは、わかっている。
でも、
「例の問題は、もういいのですか?」
心配だった。
「そのことなのだけど、エルザには今も沢山の人が婚約者にしたいとここへ訪れているの。それをエルザにも知ってほしいのよ。あなたはこんなに人気なのだと。そして、自覚しなければならないわ。貴族の娘だと。」
もう、なんの言葉も、出てこなかった。
この人たちは、忘れたのだろうか。
いや、違う。
今まで自分たちで決めていた婚約者を、自分で決めさせて、責任もエルザにあることにしたいのだ。
「・・・別邸は、どうなるのですか?」
「そうだな。別邸は別荘として使うだろう。そこの管理はジークに頼む。お前は当主の仕事もしっかりとこなしている。これでやっと婚約できるのではないか?」
婚約・・・
その言葉が、僕に向かった。
本当なら、この年で婚約すらしていない男はなかなかいないだろう。
だが、それにも理由が、あったはずだ。
それ以上に、婚約させたがっている。
こんな話、僕も、エルザも、すぐに結論なんて出ないだろう。
「この話については、しっかりと考えて上で回答させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ。しっかり考えて、こたえを教えてくれれば、それでいいの。待ってるわね。」
こんな話ならば、わざわざ来なければよかった。
僕は、お父様とお母様に少しだけ騙されたような気がした。




