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第六章(1) 電話でお話しします

プルルルル、プルルルル

私は自分が緊張していることを感じていた。

受話器を持つ右手が、汗で湿っていた。

そもそも、本邸に電話をかけること自体、始めてだった。

『もしもし』

受話器から聞こえたのは、お兄様の声だった。

「もしもし・・・お兄様」

『エルザ、大丈夫か?』

「はい。終わりました。」

『そっか。よかった。』

お兄様の声は、とても安心した。


『え、あ、ちょ・・・・』

安心したと思ったその時、受話器からお兄様の今までに聞いたことがない声が聞こえた。

お兄様、今、『ちょ・・・・』って言いました?

 

「あ、あの、お兄様?」

『エルザ、大丈夫?けがは?』

聞えた声は、お兄様ではなく、女の人の声だった。

もしかして・・・


「・・・・・・大丈夫です。お母様」

お父様もお母様も、私を心配している。

あれ・・・?

『それなら、良かったわ。とても心配していたのよ?』

「ごめんなさい。」

『何を謝っているの?謝る必要はないわ。』

「あの、お兄様に電話をかわって頂けないでしょうか?」

『わかったわ。』


お母様ともっとお話ししたかった。

だけど、その前に、確認しないといけないことがある。


『もしもし』

「お兄様、どこまで話したの?」

『エルザが狙われていることと、完璧な護衛を付けていることと、お友達が指示を出してくれていること』

「そうなんだ。まだ、それだけなら。」

『怪我人は、いるか?』

「いないよ。私もフェイも、怪我してない。」

『良かったな』

お兄様にそう言われると、本当に良かったな~って心から思えた。

『電話、かわっていい?』

「うん。」

お兄様、誰と電話かわるんだろう?

お母様かな? 

『元気にしてたか?』

その声は、お兄様とフェイよりも低い、男の人の声だった。

「お父様・・・」

『久しぶりだな』

「はい。元気に過ごしていました。」

『そうか。妻と話をしたんだがな』

「はい。」

『近いうちにジークと一緒に本邸に来ないか?』

「それは、どういう・・・」

お兄様が私のお願いを聞いて、勝手に本邸へ来たから、当主を辞めさせられてしまうのだろうか。

そんなことは、嫌!


『電話ではなく、お茶やお菓子を食べながらゆっくりお話をしたいと思ってるの。何も身構える必要は無いわ。』

お母様の声がした。

私の声をお父様の隣で聞いていたのかもしれない。

「わかりました。予定は特にございませんので、お父様、お母様、お兄様の都合の良い日で構いません。」

『そうか。それならこちらで話をしておこう。ありがとう

、エルザ。』

「いえ。」

『今日は、ゆっくり休むといい。』

「ありがとうございます。」

『ジークに明日伝えてもらう。』

「はい。」

『お疲れ様、エルザ』


ツーツーツーツー


電話は、お父様のその一言で終わった。

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