第五章(18) 律が素直になり、私は赤くなる
「お母さん、ごめんなさい・・・・・・」
「何で謝ってるの。あなたは何も悪くないでしょう?」
「でも、さっき電話で、ひどいこと・・・・・」
「そのことね。別に気にしてないわよ。そもそも、ちゃんと言ってない私たちの方が悪いでしょう?逆にあなたの本心が聞けて、よかったくらいだわ。」
「・・・・・・」
「いつも、あんな感じでいいのよ?本当に、ため込みすぎよ。これからは、ちゃんと素直に感情を伝えること。」
「でも、僕は、次期国王で・・・」
「もう次期国王じゃないでしょう?もうそんなの、気にしないの。素直になりなさい。」
「・・・はい。」
よかった。
律には、もっと、もっと、素直になってほしかったから。
時々、律がいなくなるんじゃないか、壊れてしまうんじゃないか、なんて、怖くなっていたこともあったけど、もう大丈夫だろう。
「柚紀ちゃん、ありがとね。」
「いえ。想像どうりで、少し、悲しくなりましたけど。」
「ほんとに。」
「え?」
「だから、ヒントに『お母さんが愛している人』って言ったら、律はお父さんって言うだろうなって思ってたってこと。」
「え、でも、さっき、『思った通り』とか『ヒントしかもらってない』とか言ってたよな?」
「うん。『思った通り』は、そのまま、律がお父さんの誕生日をパスワードだと言ってきたことね。『ヒントしかもらってない』っていうのは嘘。私はパスワード知ってた。そのうえで、律に考えてほしくて。わかってほしくて。」
「何を?」
「『私は律を一番愛してる』ってこと。」
私からは言わない方がいいだろうと思った言葉を、律のお母さんは言った。
「・・・・・・なんでこんなことに柚紀も協力してるんだよ。」
「え?柚紀ちゃんは私に間違ってないと言ってくれたからよ。」
「は?」
「ち、ちょっと、その話は・・・・」
恥ずかしい。夢を見た時の悲しい感情と、律のお母さんの言葉がどうしても聞き捨てならなくて、つい言ってしまったことを思い出して、私は赤くなる。
「ふふ、そうだったわね。」
「柚紀、教えろ。」
「えっと・・・・」
「駄目よ、律。女の子に命令口調は。怖がるでしょう?」
「素直になっただけなんだけど?」
「でも、柚紀ちゃんがいないと生きていけない人が、柚紀ちゃんを怖がらせてどうするの。」
「・・・・・・」
「これは私たちの秘密なの。ね~」
「・・・・ね~」
律は不服そうな顔をしていた。
私たちは、その顔がかわいくて、ついつい笑ってしまった。




