第五章(17) お母さん、ごめんなさい・・・・・・ By フェイ(律)
「少しでいいから、考えてみて。数字だから。」
そう言われて、僕は考えていた。
数字で思いつくのは日にちとかだよな。
誕生日か、記念日か・・・
誕生日は三通り。父、母、僕。
記念日は、僕がわかっているものだと、柚紀の結婚を発表した公表式くらいしかわからない。
そもそも、両親が記念日を決めていたようには思えない。
結婚した日とかだと話は別だと思うけど、僕はお祝いした覚えがない。
とすると、考えられるは誕生日か・・・
自分の誕生日がパスワードなら、柚紀もわざわざ僕に考えさせることはしないだろう。
・・・・・・お母さんが自分の誕生日を僕が忘れていると思っていたら、可能性は無きにしもあらずだけど。
「柚紀。このパスワード、誰かの誕生日?」
「うん。」
「二つの数字で悩んでる。」
「ヒント、欲しい?」
「うん。」
「愛している人だよ。」
母が、愛している人?
そんなの、わかったよ。
僕が・・・・・・一番嫌いな人だよ。
最後の最後まで、柚紀を殺そうとした人だよ。
「柚紀、わかった。パスワード、打っていいか?」
そう声をかけると、柚紀は少し悲しそうな顔をして、
「その前に、そのパスワード、教えて。」
と言ってきた。
僕は柚紀に僕がわかったパスワードを教えた。
「うん。思った通りだよ。私もほんとはヒントしかもらってなくて。」
そう言いだした。
「え?」
「だって、そうでも言わないと、律、考えないでしょ?」
考えない。
僕は早く謝らないといけないから。
「私がパスワード、打ってもいい?」
「うん。」
「律はドアの前にいなよ。ドアが開いたら、すぐ中に入れるようにさ。」
「うん。」
僕はドアの前に立って、パスワードを打つだろう機械に目を向けていた。
「打つよ。」
「うん。」
柚紀は機械に数字を打ちこんでいく。
・・・あれ。
「柚紀、パスワード、違う。それは・・・・」
「違わない」
そう言いかけたとき、僕は母に抱きしめられていた。
「え・・・でも、お母さんが愛している人って・・・・」
柚紀が打ちこんだ数字は、僕の誕生日だった。
つまり・・・
「何言ってるの?律と、柚紀ちゃんしかいないでしょう?」
「え・・・」
「私だって、愛されてなかったことも知ってるわ。それに、かわいい柚紀ちゃんを殺して、私のかわいい息子を苦しめて、苦しめて、追い詰めて、自殺させるような人を、まだ愛してるわけないでしょう?」
ああ、僕は、また・・・・・・
「お母さん、ごめんなさい・・・・・・」
僕は、お母さんのことを、父を愛していると、決めつけていました。




